こんにちは!ポルトガルで予約していた格安航空会社(LCC)のフライトキャンセルに遭ったのぶよです。
上の記事の中で少し書きましたが、EU圏内に発着する便が遅延、欠航となった場合には、乗客は航空会社からいくつかのサービスを受けられる権利が定められているのです。(EU261法といいます)
その中の一つには、航空会社から最大で€400の補償金が受け取れる場合があると定められていることはご存知でしょうか。
今回の記事では、ヨーロッパで飛行機が遅延・欠航となった際に乗客が受けられる権利について詳細に解説していきます。
ある程度の期間が過ぎていても対象となるので、知らないと確実に損しますよ!
今回の記事は、実際にのぶよが体験した飛行機の欠航を踏まえ、欠航時にRyanair側から受け取った書類およびEU261法に関して記載されているRyanAir社のページを基に作成されています。
法律の専門家ではないため、専門的ではない個人的な法律解釈や、翻訳プロセスにおける意味の取り違えなど見受けられましたらご指摘いただければ幸いです。
ヨーロッパで飛行機が遅延・欠航!補償金を受け取る権利がある人
はじめに、どんな人が最大400ユーロの補償金を受け取れるのか、いわばこの長~い記事のまとめをしておきます。
EU諸国が到着地となるフライトを予約、チェックイン手続きを済ませていたのに欠航となった人
もしくは、
EU諸国が到着地となるフライトを予約、チェックイン手続きを済ませていたのに、3時間以上の遅延に遭った人
+
上記の遅延もしくは欠航が、過去6年以内に起こったものであること
これだけ!
つまりヨーロッパで飛行機の3時間以上の遅延や欠航にあった人は、国籍にかかわず補償金を受け取ることができるんです。
詳細な条件や補償金受け取りの対象外となる場合については、ここから詳細に解説していきます。
のぶよのフライトキャンセル状況
まずは、前回の記事を見ていない方のために、実際にどのような状況で予約していたフライトがキャンセルになったのか再度説明しておきます。
ポルトガル本土から西へ1400km。
大西洋の真ん中に浮かぶアソーレス諸島のサン・ミゲル島から、首都リスボンへの帰りのフライトを予約していました。
航空会社は、ヨーロッパ各国に発達した航空網を持つ格安航空会社(LCC)のライアンエアー (Ryan Air)。
ヨーロッパ在住の方やヨーロッパ周遊旅行をしている方は、一度は利用したことがある航空会社なのではないでしょうか。
初めはただの遅延という知らせだけだったものが、2時間以上も搭乗ゲート内で待たされた挙句に欠航となったのです。
EU内で飛行機が遅延・欠航となった場合に乗客が持つ3つの権利
1. 欠航便の他便への振替or全額返金 (予約便が欠航となった場合のみ)
予約していた便の欠航が決定した場合は、航空会社側の対応は次の3つのパターンに分かれます。
同社/他社運航の同日の遅い時間の便への振替
同社/他社運航の別の日の便への振替
フライトのキャンセル及び航空券代金の全額返金
EU261法上では、乗客がこの三つの選択肢のうちの一つを選択する権利があると定められています。
しかし実際には、他社便への振替をしてくれる格安航空会社は少ないのが現状です。
大手航空会社に関しては、グループ内の別の航空会社の便への振替も期待できます。
また、欠航によってもうその路線を利用しない場合は、航空券代金の全額返金を求めることもできます。
2. 乗客に対するサービス (2時間以上の遅延もしくは欠航の場合)
大幅な遅延や欠航を引き起こした航空会社は、その便を利用するはずだった乗客に対して以下のサービスを無償で提供する義務が定められています。
待ち時間の長さに応じた食事と飲み物の提供 (または空港内で利用できる食事バウチャー券の提供)
最大2回までの無料の通話、eメール、FAXなどの連絡手段の提供
宿泊先ホテルの無償手配 (同日他便での振替出発が不可能な場合)
空港と宿泊先の間の交通機関の提供
のぶよの場合は、宿泊先とそこまでの交通手段に関しては問題なくサービスを受けることができました。
しかし、待ち時間に応じた食事や飲み物に関しては何の提供もなし。
空港内の飲食店はかなり割高なので、7時間もの間飲まず食わずで待たされることに。
ライアンエアーよ、これは明確なEU規定違反では?
3. €250〜€400の補償金の請求 (3時間以上の遅延、欠航の場合)
知らなければ確実に損をする乗客の権利がこちら。
EU加盟国発の便が3時間以上の遅延、または欠航となった場合に、その便に乗るはずだった乗客は250ユーロ~400ユーロの補償金を航空会社から受け取る権利があるのです。
これはEU圏内の国民だけではなく、その便に搭乗予定だった全ての人が平等に持つ権利。
つまり私たち日本人がヨーロッパ旅行中に飛行機の3時間以上の遅延、欠航に遭ってしまった場合も補償金を受け取る権利があるんです。
この保証金の額は、遅延・欠航となった便の運航距離によって変わります。
1500km以下のフライト:250ユーロの補償金
1500km以上のフライト:400ユーロの補償金
と、2段階に分かれています。
(一部600ユーロの補償金を受け取れる場合もありますが、ここでは割愛します)
のぶよの場合は、アソーレス諸島のポンタ・デルガダ空港からリスボン空港まで1429km。
あともうちょっと遠ければ400ユーロもらえたのに!(笑)
「遅延」「欠航」の定義とルールが適用される人
さて、これまで書いたことを手短にいうと、
EU加盟国到着のフライトで出発予定時刻より3時間以上の遅延に遭った人
EU加盟国到着のフライトの欠航に遭った人
は、国籍や到着地の国にかかわらず250ユーロ~400ユーロの補償金が航空会社から受け取れるんです!
まさに乗客のことを考えた神がかり的なEUのシステムなのですが、抜け穴はあります。
その抜け穴をうまく利用して、補償金の支払い額をできるだけ少なくしようとするのが格安航空会社(LCC)。
ライアンエアー、お前や。
ここから先はもう少し深くこのEU261法を考えていきます。
補償金を受け取れる権利がある人の詳細な条件
どんな状況や場合が、EU261法によって「大幅な遅延」「欠航」とみなされ、乗客が補償金を受け取る権利が生じるのか
この二点に関して主に説明します。
補償金を受け取る権利がある人の規定
EU261法によって定められた補償金を受け取る権利がある乗客は、次の条件を全て満たす必要があります。
確定した航空券の予約があること
チェックイン手続き終了時刻以前にチェックインを済ませてあること
EU内もしくはEU外の第三国の空港を出発し、EU圏内の空港に到着する便への搭乗者であること
航空会社の定める規定によって搭乗を拒否されていないこと
自分の意思に反して搭乗を拒否された、もしくはフライトが3時間以上遅延、または欠航したこと
ポイントは三つ目の条件。
「EU内もしくはEU外の第三国の空港を出発し、EU圏内の空港に到着する便への搭乗者であること」です。
つまり、
EU圏内からEU圏内のフライト(フランス→デンマーク等)
EU圏外からEU圏内へのフライト (トルコ→スペイン等)
は補償金を受け取る権利があり、
EU圏内からEU圏外へのフライト(フランス→日本等)
は補償金受け取りの対象外ということです。
つまり、EU圏内の国に到着する便に関しての3時間以上の遅延や欠航は、全ての乗客が補償金を受け取れる対象となるわけです。
(実はチェックインしていなかった、出国を拒否されたなどの状況は含まない)
航空会社によって異なる「遅延」「欠航」の定義
もう一つ確認しなければいけないのは、「航空会社がある航空便を遅延、欠航とみなす定義」について。
この定義には少しグレーゾーンが含まれていて、航空会社によってはそれを拡大解釈して補償金の支払いを渋ることもあり得るので、よく確認しておきましょう。
補償金受け取りの対象となる「遅延」の定義
ライアンエアーが定める、乗客が航空会社より補償を受けられる「遅延」の定義は以下の通りです。
1500km以内の運航距離であるフライトの出発予定時刻より2時間以上の遅延
1500km以上の運航距離であるフライトの出発予定時刻より3時間以上の遅延
ライアンエアーのEU261法に関するページを熟読したのですが、どうも矛盾があります。
1500km以内の運航距離の便の2時間以上の遅延に関しては、上記の乗客が持つ権利の対象であると明記されているにもかかわらず、補償金の欄には「3時間以上の遅延」の場合に補償金を請求できると明記されています。
のぶよ的には、たとえライアンエアーの1500km以内の運航距離の便で2時間以上の遅延に遭った人でも、補償金を受け取る権利があると思います。
なぜなら、ライアンエアーの規則よりも優位となるEU261法の規定に「2時間以上の遅延に遭った乗客は補償金の対象となる」と明記されているからです。
補償金受け取りの対象となる「欠航」の定義
基本的に、予約していたEU圏内が到着地の便が欠航となった場合には、全ての乗客が補償金受け取りの権利を有することとなります。
しかし、ライアンエアーの場合は、自社便が欠航した際でも、補償金支払いを拒否する場合について明記しています。
以下のような欠航の場合には、航空会社側から補償金の支払いを拒否されることが考えられます。
出発予定時刻からさかのぼって2週間前以前に、予約便の欠航を通知されていた場合
出発予定時刻から3週間前以前までに予約便の欠航が通知され、振替便によって出発予定時刻の2時間前までの間に出発でき、目的地に到着予定時刻の4時間後以内に到着できた場合
出発予定時刻の7日前までに予約便の欠航の通知があり、航空会社側が出発予定時刻の1時間前までに出発し到着予定時刻の2時間看護以内に到着する便への振り替えを提案できた場合
航空会社が、欠航の理由を、航空会社によるあらゆる対応策を講じても防げなかった「特別な事情」(政治的に不安定な状況、安全上の理由、天候不順、従業員によるストライキ、航空管制システムの不足や遅延などを含む) によるものだと証明できた場合
一つ目から三つ目までは、基本的に起こることはありません。
1週間前までに欠航が決定している場合ってどんな場合か教えてほしい。
問題は四つ目。「特別な事情 (extraordinary circumstances)」というなんとも曖昧な表現で逃げ道を作っている印象です。
天候不順やテロなどが理由の欠航ならばこちらも理解せざるを得ません。
ただ、どこからどこまでがこの「特別な状況」に当たるのかといった具体的な記載はありません。
機体トラブル等の欠航理由なら、この「特別な状況」にはまず当たりません。
完全に航空会社側の落ち度ですから。
天候不順や天変地異、暴動、テロなどによる空港閉鎖による飛行機の遅延や欠航に関しては、残念ながら補償金の受け取りの対象とはなりにくいのが現状です。
EU261法に則った、補償金クレーム時のポイント
遅延、欠航便の搭乗券は大切に保管する
後に補償金請求の手続きの際に、日付や便名などの情報が必要となりますし、自分がその便に搭乗するはずだったことの証明にもなります。
遅延、欠航の際の待ち時間の間に発生した出費のレシートを保管しておく
確実ではないものの、飛行機の遅延、欠航に伴って発生した出費として、空港での食費や日用品などの費用を航空会社側に負担させることができる場合も考えられます。
食事や飲み物代など細かなものでも、レシート(もしくはレシートの写真)をクレーム時に添付すれば返金される場合があることをお忘れなく。
「もう何年も前のことだから」とあきらめない
EU261法が過去何年前まで適用されるかは、クレームを提出する国(つまり利用した航空会社が属する国)によってまちまちです。
最も短いもので、ルーマニアの過去6ヶ月間、大多数の国では過去2~5年間で、中には最大で6年前まで遡って請求できる国も。
のぶよが利用したライアンエアーはアイルランドの航空会社なので、過去6年間の全ての遅延・欠航が対象となるのです。
格安航空会社だろうと大手航空会社だろうと関係なく、EU圏内が目的地となる航空便の遅延・欠航はすべてが補償金受け取りの対象となります。
もちろん格安航空会社の、RyanairやEasyjetだからといってなんの問題もありません。
おわりに
日本で暮らしていると、なかなか公式にクレームを申請および受理する文化がないもの。
クレームを受ける会社側、強いて言えばクレームを受ける側の人の裁量で対応が変わるため、とりあえず電話して強くクレーム言ったもん勝ちみたいな雰囲気がまだまだ根強く残っているのが現状です。
一方のEUでは顧客の権利が徹底されており、会社側に落ち度があって乗客が被害を被った際に、何を申請する権利があるのかというルールが詳細に決められています。
次回の記事では、実際に遅延・欠航を起こした航空会社に対して補償金を請求する手続きについて解説していきます。(執筆中)
「自分の場合は補償の対象になるの?」という疑問等ありましたら、遠慮なくコメントいただければ嬉しいです。
知っている範囲でお答えさせていただきます!
コメント
はじめまして、こんにちは!!!
まさに私も同じ状況になってしまいました…
EU261の請求フォームで、日本の口座を入れたらはじかれたのですが…
日本の口座じゃ請求出来ないんですかね??
はじめましてで図々しく質問してしまい、すみません…
こんにちは。コメントいただきありがとうございます!
航空会社やどの請求フォームを用いるかによって変わってくるので一概には言えませんが、システム上EU内の銀行口座に対応しているものがほとんどだと思います。日本の口座情報がはじかれてしまった一番の理由は、IBANという銀行の口座番号のようなものがそもそも存在しないためではないでしょうか。(EUの銀行口座ならまずIBANに対応しています。)
「日本の銀行口座にはそもそもIBANがない」という概念自体が相手側には無いため、個別にカスタマーサービスセンターなどに問い合わせをしなければならないのではないでしょうか。
しかしながら、日本の銀行口座であろうとなかろうと、航空会社に返金義務があるのは事実。ですから、一度ご利用なさった航空会社のカスタマーサービスにお問い合わせされることをおすすめします。
ミオ様、はじめまして。
自分も今回同じ状況になりまして、Ryan airにEU261を申請しようとしましたが、swiftコードは無効で銀行所在国は日本が選択肢に無く、行き詰まってます。
便乗で大変恐縮ですが、ミオ様は申請されましたでしょうか?
申請されましたら、その方法をご教授いただけましたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
こんにちは。
お食事バウチャーの件ですが、各自勝手に自腹で食事などした上で、後からオンライン上のフォームからレシートのコピーなどを提出して補償を請求、実費を精算という形で運用されることも多いようです。後から精算だと請求が通る保証もないので、航空会社に自主的にバウチャーを出してほしいところですが、上記のような方法もあると覚えておいて頂ければ。
ライアンエアの場合、Type of Claim:でEU261 Compensation and ExpensesかEU261 Expenses onlyを選択します。
はじめまして、ストライキでの欠航はこの場合適用されるのでしょうか?
こんにちは、コメントありがとうございます。
どういった状況での欠航だったのか(ストライキにより事前に欠航が決まっていたのか、当日空港で急に欠航となったのか、どの航空会社のどこ発どこ行きの便かetc)わからないので断言はできかねますが、おそらく適用されないのではないかと存じます。
記事内の「補償金受け取りの対象となる「欠航」の定義」の欄に記述しております。
>以下のような欠航の場合には、航空会社側から補償金の支払いを拒否されることが考えられます。
>出発予定時刻からさかのぼって2週間前以前に、予約便の欠航を通知されていた場合
>出発予定時刻から3週間前以前までに予約便の欠航が通知され、振替便によって出発予定時刻の2時間前までの間に出発でき、目的地に到着予定時刻の4時間後以内に到着できた場合
>出発予定時刻の7日前までに予約便の欠航の通知があり、航空会社側が出発予定時刻の1時間前までに出発し到着予定時刻の2時間看護以内に到着する便への振り替えを提案できた場合
>航空会社が、欠航の理由を、航空会社によるあらゆる対応策を講じても防げなかった「特別な事情」(政治的に不安定な状況、安全上の理由、天候不順、従業員によるストライキ、航空管制システムの不足や遅延などを含む) によるものだと証明できた場合
ストライキによる欠航は「特別な事情」に値するため、航空会社側に補償金支払いを拒否する権利があると考えられるためです。
しかしながら、これはあくまでもライアンエアー側の規定であり、利用予定だった航空会社によってはその限りではないかもしれません。(おそらく多くの会社がそのような文言で抜け道を作ってはいると思いますが)
また、補償金支払いを拒否する「権利がある」という表現なので、ストライキによる欠航の場合は問答無用で補償金の支払いを拒否されるというわけでもありません。
どういった経緯で欠航に至ったのか、その状況次第では、航空会社側が補償金を支払うケースもあると思います。
一度ご自身が利用予定だった航空会社の約款をご確認なさるか、カスタマーサービスにコンタクトをとられてはいかがでしょうか。
もしくは、ダメ元で申請してみるという手もあります。申請自体は無料ですし各航空会社HPから簡単に行うことができるはずです。
以上、ご参考になればと存じます。
丁寧に教えていただきありがとうございました!