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アルメニア南部の郷土料理&名物グルメ20選【シュニク地方/ヴァヨツ・ゾール地方】

こんにちは!アルメニア南部をのんびりと開拓中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)

アルメニアの中でもあまり旅行者が多くないエリアといえば、南部エリア
交通の便が絶望的に不便であることや、やや情勢が不安定な時期が目立つことから、短期のアルメニア旅行の日程に組み込むのがなかなか難しい点が、南部エリアがマイナーである最大の要因でしょう。

ヴァヨツ・ゾール地方とシュニク地方の二つの地域から構成されるアルメニア南部には、感動の風景や歴史が詰まった見どころがたくさんあります。
それだけではなく、アルメニア南部を旅する際はこの地域ならではの郷土料理や名物グルメの数々も旅行の醍醐味となります。

ゲストハウスでアルメニア地方部の伝統の味を楽しむ

一般的なアルメニア料理ですら日本ではほとんど知名度がないですし、そのうちさらに限られた南部エリアの食文化や名物料理となると、もはや未知の領域。
アルメニアの他の地域の料理と何がどう異なるのか、そもそも人々は何を食べているのか…まったく想像がつかないのではないかと思います。

しかし!アルメニア南部はグルメの都と言っても過言ではないほどに、豊かな食文化を有するエリア。
エレバンなどの大都市やアルメニア北部地域とは全く違う絶品料理の数々に、きっと驚かされるはずです。

南部では羊肉も多く食される
アルメニア南部名物・ジェンギャロフ・ハツを村スタイルで作る

というわけで今回の記事は、アルメニア南部エリアの名物料理を20品どどんと紹介するもの。
ヴァヨツ・ゾール地方とシュニク地方、それぞれのエリアで定番とされる品々や、のぶよ自身が出会ったご当地グルメ的なものまで…とにかくアルメニア南部の「美味しい!」をぎゅっと詰め込んでいます。

各料理が食べられるお店情報もできる限り掲載しているので、実際に現地を訪れる際にきっと役に立つはず。
アルメニアの奥深い食文化を感じてもらえたら嬉しいです!

アルメニアの食文化や定番料理100品を徹底解説しています!

アルメニア南部の食文化の特徴

アルメニア南部、ここです!

アルメニア南部エリアを構成する二つの地域は、北側のヴァヨツ・ゾール地方と南側のシュニク地方に大きく分けられます。

エレバンから見るといずれの地域も「遥か南にある不便なエリア」といった印象を持ちますが、「南部」とひとことで言っても、これら二地域は歴史的にも文化的にも大きな違いがあります。

その違いは、食文化にも健在。
ひとことで言うなら、

ヴァヨツ・ゾール地方:アルメニア料理の基本に忠実な、素材至上主義のハーブ文化
シュニク地方:隣国の食文化の影響を受けたエキゾチックな食文化

といったところでしょうか。

ヴァヨツ・ゾール地方の食文化

アルパ川に沿った渓谷に沿ってひらけた温暖な地域

アルメニア南部二地域のうち北側を占めるヴァヨツ・ゾール地方は、2000m~3000m級の山々に挟まれた渓谷沿いにひらけたエリア。
最大の町であるイェゲグナゾールを中心として、名水と温泉の町ジェルムックや、ワインで有名なアレニなどの有名な観光地が多く点在しています。

ヴァヨツ・ゾール地方の食文化を語る上で切っても切れないのが、独自のハーブ・山菜文化

良質な水が豊富でアルメニアの中では比較的温暖な気候であるこの地域では、質の良いハーブがそこら中に自生しており、アルメニア他地域ではまず聞いたこともないような野草を用いた料理が食されます。

高原で採れる春のハーブや山菜が美味しいエリア
ヴァヨツ・ゾールと言えば、アルメニア一番のワイン王国

また、温暖湿潤な気候と高すぎない標高はぶどうの栽培にも適しており、イェゲグナゾールやアレニなどではワインの生産も盛ん。
アルメニア屈指のワイン王国エリアとして知られており、ワインに合う料理も多く食されています。

シュニク地方の食文化

シュニクの深い山々を望むヴォロトゥナヴァンク修道院

アルメニア最南部に位置するシュニク地方は、中世にはシュニク王国として独立状態にあったエリア。
その独自の歴史や、他エリアとの地理的な隔絶は、独特の食文化という形で現在にまで残っています。

シュニク地方の食文化の特徴は、ペルシア料理やアゼルバイジャン料理のエッセンスが強く感じられる点。
シュニク地方のすぐ南にはイランとの国境が、すぐ東にはナゴルノ=カラバフが位置しているため、これらの地域の食文化が融合しているのが興味深いです。

ナゴルノ=カラバフ発祥のジェンギャロフ・ハツ作り
アルメニア最南部メグリ村産のザクロは、一種のブランドフルーツのような扱い

また、メグリ村をはじめとするシュニク地方最南部地域は、ざくろをはじめとするフルーツの名産地である点も見逃せません。
フルーツをメインの具材として用いる料理はもちろん、肉をマリネするための液にざくろ果汁を使用した料理なども多く見られ、このエリアの食文化を独特なものにしています。

シュニク地方では、たとえある程度の町であっても飲食店の数がとても限られているのが悩みどころ。
そもそもシュニク地方ではあまり「外食」という文化が発達しておらず、シュニクの伝統的な料理は各家庭で食される場合が多いため、旅行者が味わうにはややハードルが高いのが現状です。

それでも、探せばちゃんと伝統料理を食べられるお店に巡り合えるもの。
アルメニアの他地域とは異なる食文化や味付けに、南部ならではの独特な歴史や文化が感じられるはずです!

ヴァヨツ・ゾール地方の郷土料理・名物グルメ

アルメニア髄一のワイン王国(アレニ)

アルメニア南部二地域のうち北側一帯を占めるヴァヨツ・ゾール地方は、アルパ川が形成する谷間を中心にひらけた風光明媚なエリア。
谷間一帯の標高は1000m~1100mほどとアルメニア的にはかなり低い場所となっており、冬の寒さや降雪が厳しくないことで知られています。

比較的温暖な気候と、南北にそびえる山々からの良質な水、肥沃な土壌…と抜群のグルメ環境が整っているのがヴァヨツ・ゾールの魅力。
水質の良さと山菜やハーブ類の美味しさに定評があり、名物料理にも素材の良さを活かしたものが多く見られます。

①壺チーズ

量り売りでも購入可能

ヴァヨツ・ゾール地方の中心的な町であるイェゲグナゾールには、アルメニア全国に名を馳せる名物食材があります。

それがこちらの壺チーズ
素焼きの壺の中に山羊の乳と数種類のハーブを入れ、地中に埋めて3ヶ月~6か月かけて発酵させるという独特の作り方がされます。

手のひらサイズもある
家庭では壺チーズの壺を日常的に使用していたりする

ハーブを入れることで山羊ミルク独特の臭みは多少軽減されてはいるものの、壺チーズの風味はかなり独特でクセが強いもの。
好きな人は果てしなく好きでしょうし、苦手な人は匂いだけでも無理だと思います(のぶよは完全に無理派)。

イェゲグナゾール市内であればどこのスーパーでも売られており、中には量り売りまであるので、ちょっと試してみたい人にはおすすめ。
食べ終えた後のかわいらしい壺はお土産にもなるので一石二鳥です!

イェゲグナゾールの観光情報まとめはこちら!

②マンダック

見た目はたしかにセリっぽい

アルメニア広しと言えどもヴァヨツ・ゾール地方でのみ食される山菜が、マンダック(Mandak/Մանդակ)。

マンダックとはセリ科の植物のこと。
周辺の山々に自生しており、春になると多くの人が山でマンダック採りに夢中になるのがヴァヨツ・ゾール地方の風物詩となっています。

ヴァヨツ・ゾール地方で「マンダック」と言うと、この山菜そのものを指すのはもちろん、調理されたものをも指します。
マンダック=卵とじ一択」という暗黙のルールがあり、春の山菜の風味を最大限に活かすために味付けは塩だけで調理されます。

宿のおばちゃんが調理してくれたマンダックの卵とじ

マンダックの味わいは、日本のセリに少し似ており、芳醇で味わい深さが感じられるもの。
たしかに卵との相性は抜群でしたが、個人的にはバター醤油やポン酢も絶対合うんじゃないかと思います。

イェゲグナゾールの観光情報まとめはこちら!

③イェゲグナゾール風ストロガノフ

肉の食感も味付けも、とにかくパーフェクト

ロシア発祥のビーフストロガノフは、アルメニアでもかなりポピュラーな一品。
しかし、ヴァヨツ・ゾール地方のイェゲグナゾールには地元民ならみんな知っている「名物ビーフストロガノフ」が存在していることは、ほとんど知られていません。

町の中心部にあるレストランの看板メニューであるイェゲグナゾール風ストロガノフは、細切りにした牛肉をローストオニオンとともにサワークリームでさっと煮込んだもの。
ロシアのビーフストロガノフのようにマッシュルームが入ることはなく、汁気が少なめなのが最大の特徴です。

牛肉は臭みゼロで極限まで柔らか

このビーフストロガノフに使用されている牛肉がとにかく美味しいのです。

牛肉の臭みはいっさいなく、どうやって調理しているのか気になって仕方がないレベルでとろとろの柔らかな食感。
ローストオニオンの香ばしい甘味とサワークリームの芳醇で濃厚な口当たりも含め、これ以上ないほどに完璧な一品となっています。

イェゲグナゾールの人が「あそこのビーフストロガノフはもう食べたか?」とイチオシしてくるのも納得の、絶品ストロガノフ。
正直、ロシアで食べたビーフストロガノフの百倍は美味しかったので、滞在時にはぜひとも味わってみてほしいです!

イェゲグナゾールの観光情報まとめはこちら!

④イェゲグナゾール風ラフマジョ

見た目はごく一般的なラフマジョ

イェゲグナゾールの小さな食堂で偶然出会ったのが、アルメニア風ピザ「ラフマジョ」の進化系となる一品。
ラフマジョとは、薄くのばした小麦粉生地に挽き肉やハーブを塗りたくって、オーブンでサッと焼いたもので、アルメニア全国津々浦々、どこの町でも食されます。

勝手に「イェゲグナゾール風ラフマジョ」と命名したこちらのラフマジョが普通のラフマジョと大きく異なる点が、生地の独特な食感。
一般的なラフマジョは生地のパリパリ食感こそが命なのですが、イェゲグナゾール風はパリパリではなくもっちもちなのです。

もっちり生地も合う!

写真だと生地のもっちもち感が伝わりにくいのが残念ですが、例えるならのぶよのほっぺたくらいのもっちもちな水分量(知るか)。
特に分厚く成形されているわけでもなくしっかりと焼かれているのに、どうしてこんなにもっちもちの食感になるのかはミステリーです。

「ラフマジョ=パリパリ」という概念が大きく変わる、イェゲグナゾールのラフマジョ。
味も美味しいですし、未知なる食感にきっと驚くはずです!

イェゲグナゾールの観光情報まとめはこちら!

⑤アレニワイン

セミドライからセミスイートまで色々と揃う

多くのアルメニア人にとって、ヴァヨツ・ゾール地方の名産と言えばアレニワイン
その名の通り、ヴァヨツ・ゾール地方最西部に位置するアレニ村周辺で生産されたワインのことで、アルメニアを代表するワインとなっています。

アレニ・ワインに使用されるぶどうのメインは、同名のアレニという品種。
酸味が少なめで甘味が強いことが特徴で、一定の糖度以上のぶどうのみが使用されるというこだわりようです。

ワイナリー訪問で試飲も可能
マイナーながらもアレニ産の白ワインもある

アルメニアを代表するワインエリアの中心地であるアレニ村には、名産のワインを試飲できるワイナリーが点在しており、なんと試飲&見学がすべて無料という大盤振る舞い。
すっきりした舌触りと程良い甘味が特徴的なアレニワインは、ワインがあまり得意でない人でもするっと飲めてしまいます。

アレニの観光情報まとめはこちら!

⑥桃のワイン

びっくりするほどの桃感

超有名なアレニワインの影に隠れる形になってはいますが、実はアレニ村は桃の名産地としても有名。
比較的温暖な気候と日照時間の多さが美味しい桃の栽培に適しているそうです。

そんなアレニの隠れた名物が、アレニ産の桃が100%使用された桃のワイン
砂糖は一切不使用ながらも、舌にじんわりと染み込むような上品な甘味が特徴的で、果てしない桃の風味の強さにびっくりします。

のぶよ的には、名産のアレニワインよりもこちらの桃のワインの方がおすすめ。
アルメニアでは各種フルーツを用いたワインが全国で飲まれますが、桃のワインはあまり見る機会がないため、アレニを訪れた際はぜひ挑戦してみましょう。

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⑦うさぎ肉の白ワイン煮込み

柔らかくて淡白

アレニ村をはじめ、ヴァヨツ・ゾール地方の標高が低い地域ではウサギの肉を食べる習慣があるそう。
ウサギ肉の調理法はとてもシンプルで、骨付きのまま塩を少々ふって名産の白ワインをたっぷり注いだ鍋で茹でるだけです。

ウサギ肉はクセや臭みが少なく、鶏肉に似た淡白な味わいであるため、スパイスやニンニクなどを入れない方がより肉本来の風味を味わえるのだとか。

味つけは基本塩のみだそう

日本ではウサギ肉を食す習慣はあまりポピュラーでないため、抵抗がある人も少なくないはず。
しかし実際に食べてみると、素朴な味わいと柔らかな食感が意外といけます。

このエリア名産のワインのお供にもぴったりなウサギ肉の煮込み。
レストランで置いてあることは稀で、各家庭で調理される家庭料理といった性格の一品です。

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⑧ジェンギャロヴァプール

黒っぽいオイルが味の決め手

ヴァヨツ・ゾール地方のハーブ文化を象徴する一品が、ジェンギャロヴァプール(Jengyalov apur/Ժենգյալով ապուր)。
「ジェンギャロフ=ハーブ」「アプール=スープ」というわけで、「ハーブのスープ」といった意味です。

アルメニアでは全国的にフレッシュハーブを料理に多用しますが、基本は仕上げにたっぷりとのせたり添えたりするのが普通。
しかしこのジェンギャロヴァプールは、タイムやパクチーなど数種類のハーブを肉やじゃがいもとともに長時間煮込んで調理されるため、スープ自体にハーブの風味ががっつりと染み出しているのです。

焦がしハーブオイルの香ばしさが素晴らしい

さらに特徴的なのが、仕上げにハーブを油でじゃっと揚げた焦がしハーブオイルがたっぷりとかけられること。
このオイルがとにかく美味しく、旨味たっぷりのスープに香ばしさをプラスしてくれます。

店によってはジョージア料理の牛肉スープである「ハルチョー」としてメニューに載っている場合もありますが、ヴァヨツ・ゾール地方で言う「ハルチョー」はほとんどこのジェンギャロヴァプールのこと。
心からほっとする味わいなので、ぜひ一度は挑戦してみましょう。

⑨ジャンギャロフ・プラフ

付け合わせとして出てくるのが普通

ヴァヨツ・ゾール地方ならではのハーブの使い方が感じられる一品が、ジェンギャロフ・プラフ(Jengyalov plav/Ժենգյալով փլավ)。
ハーブの炊き込みご飯」といったところで、山で採れた山菜や各種ハーブをメインの具材に、ご飯とバターとともに炊き込んだものです。

各種山菜の美味しさとドライハーブの風味が絶妙に混じり合う

時期や家庭によってどの種類の山菜やハーブが入るかは大きく変わってきますが、味の決め手となるのが炊き込む際に投入されるドライハーブ。
特にドライタイムは必須だそうで、バターの風味と相まって芳醇で清涼感のある味わいを演出してくれます。

アレニの観光情報まとめはこちら!

⑩ジェルムック・ミネラルウォーター

アルメニアの国民的ブランド

国土の大半が険しい山々で構成されているアルメニアは、水が美味しいことで有名な国。
エレバンなど大都市でさえ、素人でも味の違いが分かるレベルで水が美味しいのです。

そんな名水大国アルメニアにおける、泣く子も黙るミネラルウォーターNo.1ブランドがジェルムック
ヴァヨツ・ゾール地方東部に位置する同名の町の名を冠する微炭酸の天然水は、胃腸の不調によく聞くとしてアルメニアはもちろん旧ソ連圏全域で愛されています。

ジェルムックには生の温泉水が汲み放題な場所も

そんな名水の町・ジェルムックには、一般的に販売されているミネラルウォーターとは別の温泉水が湧いていることでも有名。
町にはこの温泉水が24時間湧出している場所があり、いつでも好きなだけ「生ジェルムック温泉水」を飲みまくることができます。

この温泉水の健康効果はものすごいそうで、豊富なミネラルがあらゆる体の不調に効くのだとか。
こちらはミネラルウォーターとは異なり、商用販売されているものではないため、実際にジェルムックに行った人だけが口にすることができます。

シュニク地方の郷土料理・名物グルメ

この深い山々に抱かれた地域だからこそ発展した、独自の食文化(タテヴ修道院)

アルメニア最南部を占めるシュニク地方は、深い山々でアルメニアの他地域と隔てられたエリア。
中世にはシュニク王国として半独立状態にあったことや、イランとの地理的な近さなどの影響から、アルメニアの中でも独特の食文化が息づいています。

シュニクの料理は、地元で採れる山の幸をベースに、隣国の食文化のエッセンスが加わったもの。
全体的に塩気が薄めであっさりとした味つけが普通のアルメニアですが、シュニク地方ではやや味付けが濃いめでスパイスを使用する機会が比較的多い点も興味深いです。

①ジェンギャロフ・ハツ

本場の味は感動もの!

いまやアルメニアを代表する名物料理として名を馳せるようになったジェンギャロフ・ハツ(Jengyalov Hats/Ժանգյալով հաց)。
小麦粉生地を薄くのばしたものにサッとゆでた十数種類のハーブを入れて包み、少量の油を敷いた鉄板で焼き上げた料理です。

ジェンギャロフ・ハツの本場はアルメニア南部地域であるとされ、中でも「発祥の地」と言われるのがナゴルノ=カラバフ地域
数年前に発生した紛争によってアルメニアはナゴルノ=カラバフの統治権を完全に失ってしまいましたが、ゴリスなどアルメニア南部に逃れて来たカラバフの人たちによって、伝統の味は脈々と受け継がれています。

とにかくたっぷりのハーブを使う
焼きたてはもう最高のひとこと

本場のジェンギャロフ・ハツは、ハーブの風味も小麦粉の芳醇さも素晴らしい絶品。
エレバンで売られているものとはひと味もふた味も異なり、こればかりはアルメニア南部で食べた方が絶対に良いです。

アルメニア南部の小さな村では、自分たちで採ってきたハーブを使って自家製ジェンギャロフ・ハツを作るのも定番。
特に山のハーブが新芽をつける春~初夏にかけてのジェンギャロフ・ハツは、びっくりするほどの絶品です。

ゴリスの地元民支持No.1のジェンギャロフ・ハツの小屋はこちら!

②じゃがいものドルマ

じゃがいものドルマ

アルメニア広しと言えども、なぜかシュニク地方以外で見かけることがない料理がジャガイモのドルマ(Kartopiki dolma/Կարտոֆիլի դոլմա)。

「ドルマ(トルマとも)」とは、アルメニアの伝統料理とされる、ぶどうの葉に挽き肉や米を詰めて煮込んだもの。
一般的なぶどうの葉のドルマ以外にも、キャベツの葉で具を巻いたものやトマトやパプリカに具を詰めたものなど、様々なバリエーションがあります。

シュニク地方のじゃがいものドルマも、「野菜の中に挽き肉を詰めて煮る」という調理法は共通。
生のじゃがいもの中心をくり抜き、ハーブで味付けした牛挽き肉をたっぷりと詰めて、少量の水とともに蒸し焼きのようにして調理されます。

器も伝統的なデザインで可愛らしい
挽き肉の旨味が存分に引き出されている

ほっくほくのじゃがいもと、新鮮さが舌で感じられるジューシーな牛挽き肉のコンビネーションが、もはや優勝。
牛挽き肉の味付けにはミントが使用されており、独特の風味が食欲をそそります。

そして、器の底に溜まった肉汁や野菜の旨味が染み出したスープもまた絶品。
見た目にも可愛らしく、味も素晴らしいので、ぜひとも一度は挑戦を!

じゃがいものドルマならここ!タテヴ村の小さなレストラン情報はこちら。

③ピダ

アルメニア南部の名物「ピダ」

シュニク地方のレストランやファストフード店で多く見かける定番料理が、ピダ(Pida/Պիդա)。
細長いボート型の小麦粉生地の上に牛挽き肉や野菜、たっぷりのチーズをのせてオーブンで焼き上げたものです。

シュニク地方のピダの起源は、間違いなくお隣トルコの定番料理である「ピデ」でしょう。
「ドルコ風ピザ」とも表現されるトルコのピデは、基本的にボート型の薄い小麦粉生地の上に牛挽き肉や卵、チーズなどをのせて焼いたものです。

いっぽうのアルメニアのピダの生地は、トルコのピデに比べてかなり厚め
お隣ジョージアの名物料理であるハチャプリの生地に似た厚さ&もってりとした食感が特徴的です。

チーズがとにかく美味しい

また、トルコのピデは客が好みの具を選べるのが普通(挽き肉&卵や挽き肉のみetc…)ですが、シュニク地方のピダには選択肢はありません。
お店によって具は変わってくるものの、牛挽き肉+チーズ+トマトが鉄板で、そこにパプリカなどの野菜が乗る場合もある…といった感じで、デフォルトから全部のせなのです。

焼きたての香ばしさと言ったら…

ピダを美味しく食べるなら焼きたてが一番。
牛挽き肉のジューシーで旨味たっぷりの味わいや、濃厚ながらも重たくないチーズの芳醇さが、小麦の香ばしい風味と絶妙にマッチしています。

生地が厚めであることもあり、ピダ一つでかなりボリュームがあるので頼みすぎには要注意。
トルコやジョージアなど周辺国の味が見事に融合している点に、コーカサス地域の食文化の重厚さを感じる一品です。

ゴリスで美味しいピダを出すレストランはこちら!

④ゴリシ・ガレジュール

春夏限定のゴリスの地ビール「ゴリシ・ガレジュール」にもぜひ挑戦を!

シュニク地方二番目の人口を誇るゴリスでは、この町の中で季節限定でしか出回らない幻の地ビールが存在します。

その名も、ゴリシ・ガレジュール(Gorisi garejur/Գորիսի գարեջուր)。
「ゴリスのビール」という直球なネーミングで、缶や瓶で売られることはなく、生ビールのみでの販売となります。

ゴリシ・ガレジュールは4月頃にまとめて生産され、市内の飲食店に卸されるのみ。
毎年秋にはその年のストックがなくなってしまうそうで、4月末~10月頃にゴリスを訪れないと飲むことができません。

ゴリシ・ガレジュールの風味は良くも悪くも普通のラガーといった感じですが、スッキリした後味と飲みやすい風味で万人向け。
他エリアにはいっさい出回らないので、春から秋にゴリスを訪問する人はぜひ挑戦を!

ゴリシ・ガレジュールが飲める食堂はこちら!

⑤ゴリシ・マンティ

アジアの風を感じる一品

シュニク地方の一風変わった食文化を象徴している一品が、ゴリシ・マンティ(Gorisi manti/Գորիսի Մանթի)。
「ゴリスのマンティ」という意味で、マンティ=牛挽き肉を餃子で包んだものです。

アルメニアで一般的な「マンティ」と言えば、親指サイズの極小生地に牛挽き肉をちょこんと詰めてオーブンで焼いたものが主流です。▼

アルメニアで一般的な「マンティ」

ユーラシア大陸の多くの地域に存在する餃子系料理の中でも、アルメニアのように「オーブンでベイクする」という調理法はとても珍しいもの。
独特の香ばしさと牛肉のジューシーさがとても美味しく、この「普通のマンティ」もアルメニア旅行中の必食料理です。

しかし、ゴリスで食される「ゴリシ・マンティ」は、アルメニアで一般的なマンティとは別物。
まずサイズがかなり大きい点が特徴的ですし、オーブン調理ではなく蒸し焼きにして調理されるという点も独特です。

肉汁スープがじゅわあ
ゴリスのスーパーでは冷凍でも売られている

▲ゴリシ・マンティは、蒸し焼きにされることで旨味が閉じ込められた牛挽き肉と、肉汁が溢れ出たスープがたまらない一品。
味つけもかなり絶妙で、肉本来の旨味がしっかりと感じられます。

見た目も調理法も、中央アジア地域の羊肉の蒸し餃子「マンティ」に似ている点も興味深いもの。
どういう経緯でシュニク地方にこうしたマンティが入って来たのかは分かりませんが、中世以降のシュニク地方には中央アジア地域からの異民族王朝がたびたび襲来していたこととも、無関係ではないのかもしれません。

⑥豚肉のヒンカリ

見た目はよくある普通のヒンカリ

ゴリスに滞在していたのぶよが偶然出会い、果てしない感動に包まれたのが豚肉のヒンカリ

「ヒンカリ」とはご存じ、お隣ジョージア発祥の茹で小籠包のような料理。
アルメニアでもかなりポピュラーで、レストランや食堂のメニューにも定番として置かれています。

ジョージアのヒンカリでは基本的に牛豚合挽き肉が使用され、アルメニアのヒンカリでは牛挽き肉が使用されるのが一般的。
そう、基本的にヒンカリには牛肉の要素が必ず必要となるのです。

ジョージアのヒンカリの秘密あれこれを徹底解剖しています!

なので、ゴリスのレストランで豚肉のヒンカリに偶然出会ったときはびっくりしました。

中の挽き肉は100%豚肉で、生姜がガッツリと効いたアジアンなな味わいに満ち溢れた一品でしたから。

豚肉!肉汁!生姜!

「中の肉の種類の違いでここまで味が変わるのか…!」と感動するくらいに、豚肉ならではの芳醇な味わいにびっくり。
もはやヒンカリというよりも、台湾名物の小籠包をお湯で茹でたものと言った方が伝わりやすいかもしれません。

豚肉のヒンカリはご当地名物というよりも、あくまでもゴリスのレストランのオリジナルメニューだと思うのですが、他ではなかなか出会えないのは事実。
本当にびっくりするほどの旨味と豚の脂の美味しさが感じられるので、ぜひとも挑戦を!

ゴリスで豚肉のヒンカリを出すレストランはこちら!

⑦ホホップ

人生観が変わる美味しさ…!

さてさて…お待たせしました。数あるアルメニア南部地域の郷土料理の中でのぶよが最もおすすめする一品が、ホホップ(Khokhop/խոխոպ)です。

ホホップとは、鶏肉をざくろの果肉とともに煮込んだ「鶏のざくろ煮」。
日本人的には未知の組み合わせだと思いますが、鶏の香ばしい油や旨味がざくろの甘味や酸味と見事に融合し、人生観が変わるレベルの美味しさが味わえます。

これ考えたアルメニア人、まじで天才だと思う
ざくろを煮詰めたソースで和える「黒ホホップ」も存在する

ホホップはざくろの名産地であるアルメニア南部地域でよく食される料理で、特にざくろの一大産地であるメグリなど最南部エリアの名物。
南北に細長い地形のシュニク地方でも、北側のゴリスなどではまず見かけることはありません。

アルメニア南部の食文化の美しさがぎゅっと詰まったホホップは、旅行中にぜひ一度は食したい一品。
なかなかメグリまで足をのばすのも大変なので、エレバンのレストランで食べるのもアリだと思います。

アルメニア人直伝のホホップのレシピはこちら!

⑧クルクモフ・プラフ

主にサイドメニューとして食される

イランと地理的・文化的な距離が近いシュニク地方らしい料理が、クルクモフ・プラフ(Kikumov plav/ՔրքումովՓլավ)。

サフランとともに炊いたお米のことで、芳醇で香り高い風味が大変美味。
アルメニアではサフランを料理に使うことはあまりポピュラーではないのですが、お隣のサフラン大国・イランに近いシュニク地方ではメインの付け合わせの定番として愛されています。

サフランの風味が美味しい

味付けは塩とバターのみであっさりしているのですが、サフランの華やかで奥深い風味が良い感じに活かされています。

使用されるお米の種類も、アルメニアではあまり一般的ではないバスマティ米。
このあたりも、お隣イランの食文化の影響を感じさせます。

クルクモフ・プラフが食べられるゴリスのレストラン情報はこちら!

⑨チョロフ・プラフ

素朴な甘味が美味しい

フルーツの生産が盛んなシュニク地方では、各種フルーツを料理に使用することも珍しくありません。
こちらのチョロフ・プラフ(Chorov plav/Չորով փլավ)は、種を取り除いたぶどうの実をバターとともに炊き込んだもので「ぶどうの炊き込みご飯」といったところです。

日本人的には「え…」と思ってしまう組み合わせかもしれませんが、これが意外にも美味。
ぶどうのフレッシュな甘さがバターの濃厚な風味とともにお米を包み込み、温かな家庭的な味わいにほっとさせられます。

チョロフ・プラフはイースターのお祝い料理としても定番の一品。
レストランのメニューにはあまりない家庭料理ですが、ゲストハウス宿泊時の食事で食べる機会があるかもしれません。

⑩シシアン・レモネード

シシアン限定のシシアン・レモネードにはぜひ挑戦を!

シュニク地方第三の人口を誇るシシアンの名物ドリンクと言えば、シシアン・レモネード(Sisiani Limonad/Սիսիանի լիմոնադ)。

シシアン・レモネードとは、ここシシアンで生産されるソフトドリンク。
なんとシシアン以外にはほとんど出回らないという、幻のご当地ドリンクなのです。

アルメニアで一般的なレモネードは、人工のフレイバーで味付けがされた甘い炭酸飲料のこと。
いっぽうのシシアン・レモネードには炭酸は入っておらず、地元で採れる果汁をたっぷりと入れたコンポートのような飲料なのです。

ローズヒップ味もある
シシアン・レモネードのフレイバーは数種類

シシアン・レモネードは、とにかく果汁感が前面に出されたフレッシュでナチュラルな味わいが特徴的。
甘さもちょうど良く、果汁本来の酸味や甘味が存分に感じられてとれも美味しいです。

シシアン・レモネードは、シシアン市内のスーパーや商店ならどこにでも置いてあり、1本250AMD(=¥100)~と価格も安め。
のぶよ的にはチチュハン(サジー)のレモネードが最強だったので、ぜひとも挑戦してみてください!

シシアンの観光情報まとめはこちら!

おわりに

アルメニア南部のヴァヨツ・ゾール地方とシュニク地方の知られざる名物グルメを紹介してきました。
エレバンをはじめとするアルメニア北部エリアとは大きく異なる食文化が根付いており、小さな国の食の豊かさに驚くはずです。

アルメニアは、他にも地域ごとに異なる郷土料理が根付いている国。
旅行の際にはぜひともその土地の郷土料理を食して、昔から人々が守り抜いてきた伝統を舌で感じたいものです。

A31 地球の歩き方 ロシア ベラルーシ ウクライナ モルドヴァ コーカサスの国々 2020~2021
Lonely Planet Georgia, Armenia & Azerbaijan

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