【1ページ目:とりあえずトゥシェティ地方が気になる人向け情報】
・トゥシェティ地方の基本情報 (地理/信仰&言語/ライフスタイルetc)
→トゥシェティ地方の地理
→トゥシェティ地方の宗教観
→トゥシェティ地方の民族と言語
→トゥシェティ地方独自のライフスタイル
→トゥシェティ地方の歴史
・トゥシェティ地方の観光スポット13選
・トゥシェティ地方でしたい独自の文化体験9選
①コーカサスならではの乗馬体験
②ジョージアで一番の星空を観賞する
③幻の地ビール「アルディ」を飲む
④郷土料理&名物グルメを制覇する
⑤伝統工芸&伝統音楽の美しさに感動する
⑥独自の信仰を理解する
⑦伝統建築を観察する
⑧スプラに参加する
⑨ゲストハウスで極上の山時間を過ごす
【2ページ目:実際にトゥシェティ地方を旅する人向け情報】
・トゥシェティ地方観光のベストシーズン
・トゥシェティ地方のアクセス・エリア内の移動
・トゥシェティ地方旅行のプランニングのヒント(必要日数/まわり方/宿泊etc)
・トゥシェティ地方旅行時の注意点・アドバイス13箇条
トゥシェティ地方観光におすすめの季節

四方をコーカサスの山々に囲まれたトゥシェティ地方。
旅行を計画する際に最も大切&初めに考えるべきことは、「いつ旅行するか」という点です。
「トゥシェティ地方の人々独自のライフスタイル」の項ですでに触れましたが、人々は一年中この地域に住んでいるわけではありません。
冬には地域全体が雪に覆われ、下界とをつなぐ唯一の道路が寸断されて完全に陸の孤島となるトゥシェティ。
秋にはほぼ全ての村人が山を下り、麓の別宅で次の春までの数か月間を過ごすのです。

というわけで、トゥシェティ地方全体がほぼ無人となる冬季は、旅行どうこうの次元ではなく訪れること自体が不可能。
「いつからいつまで道路が通行可能か」という決められた日程は存在せず、ひとたび雪がどっさり降ると次の春まで通行不可能となります。
一般的に、トゥシェティ地方への唯一の道路が開通しているのは5月の最終週~10月の第一週と言われていますが、もちろんその年の気候によって多少前後することも。
あまりギリギリの時期に訪れても、「村人がまだ戻ってきていない / みんな山を下りた後だった」なんてことになりかねないので、確実にアクセス&旅行が可能なのは6月~9月の4ヶ月間のみと言えるでしょう。

それではこの4ヶ月間のうち、トゥシェティ地方旅行のベストシーズンはいつになるのでしょうか。
各月の気候や現地の様子をまとめました。(長くなるので折りたたんでいます)
6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
平均最高気温 (℃) | 27 | 31 | 31 | 26 |
平均最低気温 (℃) | 14 | 17 | 16 | 12 |
平均降水量 (mm) | 76 | 45 | 48 | 36 |
平均降雨日数 (日) | 11 | 10 | 8 | 9 |
一般的には初夏まっさかりで気温がグングン上がる6月ですが、この時期のトゥシェティ地方旅行はおすすめしません。
なぜなら、雨が降る確率がかなり高いため。
ジョージア山岳地域の6月~7月は雨季のような気候となり、雨の日も降水量もかなり多いのです。
平野部や、電力や交通手段などのインフラが整った山岳エリアであれば、雨でも観光はできるのですが、トゥシェティ地方においては雨は最大の敵。
・電力が全て太陽光発電→雨の日が続くと電気が使えない
・唯一の道が土砂崩れなどで危険度が上がる/通行不可能になる
・ハイキングがかなりハードモードになる
など、雨の中でトゥシェティ地方を旅行するメリットは皆無。
もう少しだけ待って、7月や8月を狙う方が良いと思います。
6月~7月上旬までの梅雨のような天気が嘘のように、晴れる日が続くのが7月中旬~8月下旬にかけて。
特に7月中旬~下旬のトゥシェティ地方は、観光のベストシーズンの一つです。
長く降り続いた雨によって一面が緑の絨毯で覆われる風景は、桃源郷さながら。
トレッキング、乗馬、名物ビール片手にのんびり…と、好みに合わせたアクティビティーも楽しめますし、名物の星空が見られる確率も高いでしょう。
また、先述の「幻の地ビール「アルディ」」の項で触れたアトゥニゲノバ(Atnigenoba)と呼ばれる祭りが各村で開催されるのもだいたい7月中旬頃。
(※ジョージア正教の復活祭の100日後にあたる日であるため、年によって日程は変わります)
歌や踊り、地ビール作りに豪華な料理など、トゥシェティ地方の伝統文化を最大限に感じたいなら、この時期がベストでしょう。
トビリシなど平野部は耐えきれないほどの灼熱に見舞われる8月ですが、標高が高いトゥシェティ地方では快適そのもの。
雨が降る確率も少なく、ハイキング目的の人にはおすすめの季節です。
しかしながら、8月上旬~中旬は欧米諸国のバケーションシーズンと重なるため、トレッキング目的の外国人観光客がかなり多く訪れます。
(特に「最後の秘境」とかのキャッチフレーズが大好きなドイツ人観光客)
こうした観光客向けにトビリシ発の現地ツアーも催行されるため、アクセスや現地での移動に困らないという点はメリットかもしれません。
しかしながら、トゥシェティ地方最大の魅力である、伝統的な山岳地帯の厳かな雰囲気を感じるには少々賑やかすぎるかも。
また、8月上旬~中旬の超ハイシーズンは、どこの宿も旅行者で満室となることが普通。
宿泊できなかった人たちがその辺の草むらで夜を明かす光景も見られるほどだそうで、正直ちょっと急がしすぎる雰囲気です。
8月も下旬に入ると夜の冷え込みがだんだんと激しくなり、トゥシェティ地方にも短い秋が訪れます。
8月中旬まで我が物顔で村を練り歩いていた外国人観光客は姿をひそめ、トゥシェティ地方に本来の素朴な雰囲気が戻ってきます。
人の数は少なくなったとはいえ、天気は相変わらずの安定さ。
日中の気温もかなり過ごしやすく、ハイキングなどをしていると汗ばむほどの陽気です。
このような気候が9月上旬まで続くので、のぶよ的には7月に負けないベストシーズンだと思います。
何を隠そう、のぶよ自身が2回のトゥシェティ地方旅のいずれでもこの時期に2週間ほど旅をしましたが、とにかく完璧でした。
14日間の滞在中、雨に降られたのはたったの2日間のみで、その他は素晴らしい晴天に恵まれました(トゥシェティ地方の各記事の写真を見れば、どこも晴れているのがおわかりいただけるはず。)。
また、9月上旬~中旬にかけては、トゥシェティ地方を取り囲む山々の紅葉が一気に進む時期でもあります。
到着した時は一面緑だった風景が、たったの1~2週間で黄色く変化しているわけで、自然の素晴らしさに感動すること間違いなし。
これも、この時期に旅行する人だけの特権と言えるでしょう。
例年であれば、9月のトゥシェティ地方ではまとまった雪が降ることは珍しく、少しくらいの雪なら道路もまだ通行可能なため、9月中旬~下旬であっても旅行することは可能です。
(「例年」の話であって、9月20日頃に雪で道路が寸断されたこともあるそう)
しかしながら、9月も半分を過ぎる頃になると、村人たちは一斉に山を下りる準備をし始めます。
ゲストハウスはどんどん閉まっていき、一日ごとに村から人が去って活気がなくなっていくのを肌で感じました。
のぶよの場合、トゥシェティ地方滞在の最終日が9月16日だったのですが、オマロ村で宿泊していたゲストハウスはちょうどこの日で閉まるということで、家族みんなで山を下りました。
(というわけで、帰りはふもとの村まで乗せてもらうことができたのです)
村にはまだもう一週間ほどは営業を続けるというゲストハウスも数軒ありましたが、9月も最終週に入る頃にはほぼ全ての施設が閉鎖されることとなるでしょう。
この地方最大の村であるオマロですらこんな状態なので、さらに奥地の小さな村では、宿泊先を探すのにかなり苦労すると思います。
陸の孤島に一人きりで取り残されるような事態にはならないでしょうが、9月中旬~後半のトゥシェティ地方旅行は、アクセス・宿泊などの面で難易度がかなり上がることを覚悟しておきましょう。
トゥシェティ地方へのアクセス情報:行き方 / 帰り方 / エリア内移動手段

すでに触れた通り、トゥシェティ地方へのアクセスはジョージアの中でもトップレベルの難易度。
公共交通機関は存在せず、下界との唯一の道は「世界一危険な道」と呼ばれる悪路ただひとつだけです。
下界~トゥシェティ地方間のアクセスでさえもトリッキーな部分が多いのですが、トゥシェティ地方にようやく到達した後も村から村への移動の不便さには悩まされるはず。
ここでは、トゥシェティ地方を個人で旅する人向けの交通に関する情報をざっくりとまとめました。
トゥシェティ地方へのアクセス:トビリシからの行き方

トゥシェティ地方へ通じる唯一の道路は、標高3000m近い地点に位置するアバノ峠を越える未舗装道路一本だけ。
そしてこの道路は、「世界一危険な道」と称されるほどにエクストリームなものです。
2022年に道の拡張工事が完了して以来、それ以前に比べて危険度はやや下がったものの、依然としてかなりの悪路&事故多発ルートなのが現状。
普通車でも頑張れば走れないこともないレベルですが、レンタカーなどは確実に傷だらけになりますし、安全のためにも自分で運転することはおすすめしません。

トビリシ~トゥシェティ地方間には公共の交通機関は存在せず、4WDのシェアライドを利用するのが旅行者の間で最もポピュラー。
しかしこの4WDシェアライドはトビリシ発着ではなく、クヴェモ・アルヴァニの発着となるため、
①トビリシからマルシュルートカ(乗り合いバス)やタクシーでクヴェモ・アルバニへ移動
②クヴェモ・アルヴァニからから4WDのシェアライドを利用
と、2ステップでの移動をしなければなりません。▼

クヴェモ・アルヴァニ村(Kvemo Alvani)は、トゥシェティの人々が冬を越すための別宅を構えて出来上がった村なので、この村のほぼ全員がトゥシェティ地方に関係がある人。
村人や物資を山へ運ぶための4WD車が日々発着しており、いわば「トゥシェティ地方と下界を結ぶターミナル」のような存在の場所です。
クヴェモ・アルヴァニ~オマロ間の4WDシェアライドの料金や所要時間は以下の通り。
・所要時間:3時間半〜4時間
・料金:一台貸し切り400GEL~500GEL(=¥20000~¥30000) / 一人当たり100GEL〜150GEL(=¥5000~¥7500)
所要時間に関しては、天候や道路状況によって大きく変わります。
中には「6時間以上かかってようやく到着した…」なんて旅行者もいるので、こればかりは運です。
また、シェアライドに使用される4WD車の定員は車種によって変わり、4人~7人。
以前は乗客の人数によって一人当たりの料金が大きく変わるシステムだったのですが、2025年現在は一人100GEL~150GELの固定価格帯が主流となっています。
そんな感じで、なかなかにトリッキーなトゥシェティ地方への移動。
トビリシからの2ステップでの移動方法や実際の移動レポートまでは別記事にまとめているので、そちらも参考にしてください。▼
このマルシュルートカ→4WDシェアライドの2ステップ個人移動以外にも、トゥシェティ地方へのアクセス方法は一応あります。
・トビリシから現地ツアーを利用する
・トビリシでタクシーをチャーターする
などなど。
乗り換えなどを考える必要がないため便利そうに見えますが、のぶよ的には絶対におすすめしません(特にトビリシから直でタクシーは絶対やめとけ)。
というのも、命の危険があるためです。


「世界一危険な道」の名は大袈裟でも何でもなく、実際に毎年死亡事故が起こっています。
事故の原因の99%は、飲酒運転かトゥシェティ地方出身者でないドライバーによるものだそう。
トゥシェティ地方の人々は、この道を運転する際に絶対にお酒は飲みませんし、どの場所が危険なのか経験で熟知しているもの。
夜間に土砂崩れや路肩の決壊等が起こった場合、その情報が翌朝には全ドライバーにまわっており、安全が確認されるまで誰も車を走らせようとはしないほどに、意識が徹底されているそうです。
トビリシから直接タクシーで向かうのが快適&便利なのは理解できますが、とにかく想像を絶する悪路なので、できるだけリスクを減らすに越したことはないでしょう。
トゥシェティ地方へのアクセス:トビリシへの帰り方

行きのアクセスにはかなり難ありなトゥシェティ地方ですが、一度到着してしまえば帰りは絶対にどうにかなります。
その理由が、トゥシェティ地方では全員が顔見知りで、「いつ、誰が、何時ごろに」4WDで山を下りるかの情報共有がなされているため。
これは、物資やガソリンなどを麓の町で買ってきてもらうためなのですが、旅行者でもこの村人ネットワークを利用させてもらうことができます。
宿泊先のゲストハウスの人に、「○○日に帰りたい」と事前に伝えておけば、その日山を下りる予定の4WDのドライバーに必ずつなげてくれるでしょう。
料金相場などは行きと同じですが、帰りの場合は人が4人以上集まらなくても一人分の料金(100GEL)だけで乗せてくれることが多いです(そもそもドライバー自身が用事があって麓へ行くわけなので)。
トゥシェティ地方から山を下りたら、行きと同様にクヴェモ・アルヴァニで降りてトビリシ行きのマルシュルートカに乗り換えるのが一般的ですが、さらに10km先のテラヴィ(Telavi)というこの地方最大の町まで乗せてくれる場合も。
テラヴィの方がクヴェモ・アルヴァニよりも見どころやインフラ、トビリシへのバス便などが充実しているので、ドライバーにテラヴィまで行ってくれるようお願いしてみるのも良いでしょう。
トゥシェティ地方内の移動手段

外からのアクセスだけでも一苦労なトゥシェティ地方ですが、それはエリア内の各村間の交通に関しても同じこと。
路線バスなどの類は全くないため、旅行者が村から村へ移動する手段は以下の3つのみとなります。
・徒歩&ヒッチハイク
・4WDチャーター
・馬をレンタル
徒歩とヒッチハイクに関しては、体力と運次第ですがもちろん無料です。
トゥシェティ地方全体において車が通行できる道はかなり限られているので、みんな目的地は一緒。
自分の行きたい方向へと走る車にサインを送れば乗せてくれることも珍しくありません。
(特に、地元の人でなく、ジョージア他地域/外国から来た観光客の車はかなりの確立で乗せてもらえると思います)
4WDチャーターと馬のレンタルに関してはだいたいの料金相場が存在するので、知っておけば料金交渉がしやすいと思います。
4WDチャーターの料金相場

トゥシェティ地方内の移動手段で最もポピュラーなのは4WDをチャーターすること。
オマロ基点の往復チャーターとなりますが、ダルトロやシェナコなど小さな村でも手配することは可能です(どこも基本的に4WD会社があるわけではなく、村人が自分の車を使ってお小遣い稼ぎしているだけなので)。
4WDチャーターの相場は行き先によってだいたい決まっており、以下の通りです。▼
・オマロ~シェナコ&ディクロ日帰り往復:1台200GEL(=¥10000)
・オマロ~ダルトロ日帰り往復:1台200GEL(=¥10000)
・オマロ~ゴメツァリ渓谷日帰り往復:1台300GEL(=¥15000)
片道だけ利用したい場合でも、基本的に往復分の料金となります(ドライバーはどのみち同じ道を戻らなければならないため)。
もしも二人以上で利用するなら、馬をレンタルするよりも安く済む場合がほとんどです。
4WDチャーターを専門に取り扱う会社などはなく、全て村の人がお小遣い稼ぎでやっているもの。
希望する場合は宿泊先のゲストハウスの人にドライバーを紹介してもらうのが一般的です。
馬レンタルの料金相場

もし乗馬経験がある場合は、各村で馬をレンタルするという手もあります。
各ゲストハウスでは馬の手配をお願いすることも可能で、こちらも料金相場はどこもほぼ固定。
1日1頭100GEL(=¥5000)+ガイドの給料150GEL(=¥7500)ほどです。
馬レンタルに関しても、乗馬体験を特別に扱う会社などはないため、各ゲストハウスの人に馬を所有する村人を紹介してもらうのが普通です。
トゥシェティ地方旅行のプランニングのポイント(必要日数/まわり方/宿泊)

ここまでトゥシェティ地方の観光情報を詳細に解説してきましたが、なかなかプランニングのイメージは掴みにくいもの。
そこまで広いエリアではないものの、交通がとにかく不便なため、各スポットをまわるには想像以上に時間がかかります。
他にも、宿泊先の選び方やインフラ面などトゥシェティ地方ならではの事情も考えないといけません。
ここでは、トゥシェティ地方の旅行をプランニングする際のポイントをシェアしていきます。
トゥシェティ地方観光に必要な日数

トゥシェティ地方の旅行を計画する際に、「何日間あれば十分なの?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
トビリシ発着の現地ツアーなどでは、2泊3日でオマロとダルトロをまわるものが定番ですが、正直3日間なんて全っっったく足りません。
というのも、トゥシェティ地方までの移動で丸一日(往復なので丸二日)とられることとなるため、現地滞在時間は実質たった1日のみとなってしまうためです。

今回の記事で紹介したトゥシェティ地方の観光スポットをある程度まわるためには、全て4WDチャーターで移動するとしても最低でも現地滞在4日間は必要。
ここに、トゥシェティ地方への往復の移動日2日間を足して、6日間がトゥシェティ地方旅行で絶対に必要な日数となります(むしろこれ以下の日程しか割けないなら来ない方が良い)。
さらに山奥の村へ足をのばしたり、4WDではなく自分で歩いて移動する場合は、現地滞在10日間あっても足りないほどです。
しかしながら、この最低必要日数6日間という日程は、正直かなりタイトでリスキー。
・現地での移動は全て4WD
・雨で観光できない日が一日もない
・行き/帰りともに、4WDのシェアライドがスムーズに見つかる
という、宝くじ的な確率(と予算)の上で成り立つ日程が、6日間です。
また、すでに紹介したトゥシェティ地方への唯一の道路である「世界一危険な道」は、大雨が降った翌日などは車の通行が不可能となることもしばしば。
場合によっては数日間の足止めをくらうことも十分に考えられます。

のぶよ的には、トゥシェティ地方の旅行は最低でも8日間、できれば10日間以上の余裕を持った日程でのプランニングを強くおすすめします。
それ以下の日程しか取れない場合は、いくつかの見どころをカットするか、トビリシ発着の現地ツアーを選ぶのが現実的だと思います。
オマロとダルトロ、2つの村を拠点にプランニングする

数々の小さな村が点在するトゥシェティ地方ですが、滞在拠点として便利なのはオマロとダルトロの二つの村。
これらの村はトゥシェティ地方で最も大きな村のTOP2で、ゲストハウスなどの設備がある程度充実しているのはもちろん、それぞれの周辺の見どころに日帰りで訪れることができるためです。
今回紹介している場所に限れば、
・オマロ拠点:シェナコ/ディクロ/ボチョルナ/ドチュ
・ダルトロ拠点:ダノ/クヴァヴロ/ピリキタ・ヴァレー
と分けることができ、どこも日帰りで足をのばすことが可能です。
トゥシェティ地方での宿泊先の選び方

観光地化による大規模開発の波がまだ訪れていないトゥシェティ地方。
2025年現在は大規模ホテル等は一切存在せず、一般の民家を観光客向けに改装したゲストハウスが宿泊先の基本となります。
ゲストハウスの価格や質はそれこそピンキリで、オプションで付けられる食事のクオリティーも宿によって大きく変わります。
また、電気やガスなどのインフラ面に関してはどこの宿もどっこいどっこいなので、「価格が高い=快適」というわけでもない点がトゥシェティ地方ならではです。
ここでは、トゥシェティ地方内で宿泊先を選ぶ際のポイントを、いくつかピックアップしてみました。
トゥシェティ地方の宿の選択肢は少ない
高級ホテルやホステルなどの宿タイプが存在しないトゥシェティ地方。
ゲストハウスの部屋タイプや設備は宿によってバラつきがあるものの、クオリティーはどこも変わりません。
部屋は個室でもシャワーやトイレは共同のところが多いですし、インターネットがある宿がほとんどです。
(後述しますが、どんなにお洒落に改装された宿でも、電気が止まったりお湯が出ないこともしばしばあります)
オマロ以外の村では、村のどこに泊まろうとも村中すべてが徒歩圏内。
宿の立地に関してもあまり考えすぎる必要はありません。
のぶよ的には、ゲストハウスの良し悪しはオーナー家族の人柄が全て。
最低限の設備と雰囲気だけ確認したあとは、あまり設備面に期待しすぎずに温かいおもてなしを期待しておく程度に留めておきましょう。
食事はゲストハウスで食べるのが基本

トゥシェティ地方全体に言えることなのですが、レストランの類はほぼないと考えておきましょう。
GoogleMapなどで「レストラン」等と表示されていても、それはただ食事を提供しているゲストハウスだった…なんてことはザラにあります。
トゥシェティ地方での食事面に関して旅行者ができることは、
・食材を全て持参(か現地の商店で購入)してキッチンを使わせてもらって自炊
・宿泊先のゲストハウスで朝食や夕食を提供してもらう
・宿泊先ではないゲストハウスに飛び込みで食事だけお願いする
のいずれか。
宿泊していないゲストハウスに飛び込みでランチやディナーだけお願いすることもできるのが嬉しいです。


どんな料理が出てくるかは、宿によって大きく変わってくるのがポイント。
物資が限られているにも関わらず、前菜からメインまで大量に提供しておもてなししてくれる宿もあれば、パンと芋とサラダだけなんて手抜きをする宿もあります。
宿によって多少変わってくるものの、食事オプションの価格の相場は以下の通り。
「この価格でこんなに色々美味しいものを出してくれるの?!」と驚くほどの量と質がウリの宿もあります。
・朝食:20GEL~25GEL(=¥1000~¥1250)
・昼食:25GEL~30GEL(=¥1250~¥1500)
・夕食:30GEL~40GEL(=¥1500~¥2000)
トゥシェティ地方独自の食文化を反映した絶品料理が味わえるのはもちろん、とにかく食べきれないほどの量を出してくれる場所が多いので、残った分は次の日の朝食や昼食のためにとっておくことも可能です。
(ジョージアでは普通のことなので、別に遠慮することもありません)
7月/8月は宿の事前予約が必須
インターネットがない村も多いトゥシェティ地方では、宿泊予約サイトに対応しているゲストハウスはまだまだ少数派。
現地に行けば、名前すらついていないようなゲストハウス(というか、民家)もたくさんあるので、宿泊先に困ることはなさそうに思えます。
しかしながら、ジョージア国内はもとより海外からの観光客が多く訪れる7月中旬~8月のハイシーズンには、どこの宿も満室となってしまうのが普通だそう。
予約なしでやって来てどこも一杯で、仕方なく草むらで寝る観光客も出てくるほどだそうです(笑)
というわけで、この観光ハイシーズンにトゥシェティ地方の旅を計画しているなら、早めに宿泊先を押さえておくに越したことはありません。
トゥシェティ地方観光の注意点・アドバイス13箇条

ここまで読めば、トゥシェティ地方旅行のプランニングは完璧なはず!
しかしながら、ジョージアの他地域とはかなり異なる文化を持つトゥシェティ地方では、独自の信仰やルールが現代でも根付いており、私たち他所から来た観光客でもそれを尊重する必要があります。
いろいろなルールがあるということは、それだけ伝統的な価値観が色濃く残っているということ。
いち観光客が伝統文化を壊してしまわないためにも、村の人々に快く受け入れてもらうためにも、注意しなければならないことは多くあります。
この項では、実際にトゥシェティ地方を訪れる前に知っておきたい注意点やアドバイス13箇条を解説していきます。
観光よりも何よりも、この項が一番大切と言っても過言ではないかもしれません。
①豚肉・豚皮製品の持ち込みは厳禁
第一にして最も大切なことが、トゥシェティ地方には豚肉や豚皮の製品などは絶対に持ち込んではいけません。
山を越えた北側にあるチェチェン共和国やイングーシ共和国などのイスラム圏と同様に、トゥシェティ地方においては豚は不浄の生物とされており、肉はもちろん、触ることすら忌まわしいとされています。
不思議なのが、トゥシェティの人々は冬に山を下りると普通に豚肉を食すという点。
山の麓のクヴェモ・アルヴァニ村(住民のほとんどがトゥシェティ出身者)の商店では普通に豚肉ソーセージなどが売られていますし、食堂では豚肉を使用した一般的なジョージア料理が提供されているのです。
宗教的なものというよりも、土地に関連した興味深い信仰の一つと言えるでしょう。
とにかく、人々に聖なる地と崇められるトゥシェティ地方内では、豚に関するあらゆるものは絶対にご法度。
肉だけでなく、かばんやアクセサリーなどに関しても豚皮はNGです。
よそ者とは言え「知らなかった…」で済む話ではないので(見つかると川に放り投げられるそう)、絶対に守るようにしましょう。
②トビリシからタクシーでのアクセスは絶対NG

「トゥシェティ地方へのアクセス」の項ですでに触れた通り、トゥシェティ地方へ続く唯一の道はかなりの危険を伴うもの。
レンタカーなんてもってのほかですし、トビリシからやってきた道に馴染みのないタクシードライバーや旅行者が起こす事故が頻発しています。
少しでもリスクを減らすためには、面倒ではあるものの、クヴェモ・アルヴァニ村からトゥシェティ出身者の運転する4WD車を利用するのが最も安全なオプションだと思います。
③電気・インターネットには期待しない

2025年現在でも、トゥシェティ地方には電気が通っていません。
元々は「ペチ」と呼ばれるストーブで薪を燃やして暖を取ったり調理したりお湯を沸かしたりしていたのですが、近年では太陽光発電が急速に普及。
オマロやダルトロなど比較的大きな村なら、各家庭に一台ソーラーパネルが設置されていることが多いです。
しかしご想像の通り、太陽光発電は自然に大きく左右されるもの。
曇りや雨の日が続いたり、多くの旅行者が一堂に会すると、あっという間に電力はゼロになってしまいます。
ゲストハウスの中には、カメラやPC、ドライヤーなど多くの電力が必要な機器の使用/充電が制限されている場所もあります。

また、コンセントはどの宿も基本的には各部屋にはなく、共用エリアなどで充電しなければならないのが普通。
その日の発電量によっては、夜9時以降は消灯となる宿も多いです。
各家庭にはラジエイターと呼ばれる、ガソリンを使って自家発電をする非常用電源が備わっていることが多いですが、そもそもトゥシェティ地方全体でガソリンスタンドは一軒もありません。
そのため、非常用発電のガソリンですら麓のクヴェモ・アルヴァニ村からのポリタンクでの輸送に頼っているため、量は限られているのが現状です。

かつてはインターネットが存在しなかったトゥシェティ地方ですが、近年になってオマロ村に大きなアンテナが設置されたことにより、Wi-Fiやスマホのデータ回線に接続できるようになりました。
しかしながら、インターネットを受信するルーターも電力に依存しているわけなので、ひとたび電力が不足すると立派なアンテナがあろうがなかろうが接続できなくなってしまいます。
また、晴れの日が続くような期間であっても、宿泊客の人数が多くなればなるほど電力の消費も増えるため、太陽光発電ではカバーしきれなくなることも…
電気が切れてしまうと、明かりはおろか、インターネットやお湯も使えなくなってしまいます。
こればかりは宿泊先のせいではなく、どんなにお洒落なゲストハウスに宿泊しようと条件は同じこと。
のぶよ的には、電力とインターネットに関してはそもそも期待しない方が良いと思います。
・予備のカメラバッテリーを持参する
・大容量のパワーバンクをフル充電で持っていく
・事前に宿泊先に電力の供給状態を確認しておく
・もはや電気なしの生活をデモンストレーションしておく(笑)
などの対策・心の準備をしておくに越したことはありません。
④シャワーは早い時間に、ガスの使用は極力少なめに

電力が不安定ということは、お湯の供給も不安定ということ。
トゥシェティ地方のほとんどの家庭では、太陽光発電によって生産された電気を利用して昼間にお湯を沸かしているのですが、お湯を貯めておくタンクはもともとの家族全員が使うのに十分な量くらいしか想定されていない場合が多いです。
夏場など多くの観光客が一斉に宿泊する時期は、夜になると十中八九お湯はなくなってしまうでしょう。
温かいシャワーがどうしても浴びたい人は、できるだけ早めに利用することをおすすめします。

電力と同じように、トゥシェティ地方ではガスも供給されていません。
各家庭では、クヴェモ・アルヴァニで購入した小容量のプロパンガスが使用されており(大容量のものは車に載らないため)、できるだけ最低限のガスの消費量で日々の食事の準備を済ませています(薪で火を起こして調理している家庭やゲストハウスもザラ)。
キッチンを使わせてもらうように頼めば快くOKしてくれる宿がほとんどですが、旅行者があまりに大量のガスを使いすぎてボンベが空になってしまったら、宿の人はいちいち山を下りて買いに行かなければならないわけです。
キッチン使用可能だからといって好き勝手に使うよりも、この場所で暮らす人のことを考えながら「使わせてもらう」のがスマートではないでしょうか。
⑤祠や教会は女人禁制の場合がほとんど

「トゥシェティ地方の独自の信仰を理解する」の項で触れましたが、21世紀とは思えないような掟が息づいているのがトゥシェティ地方。
各村にあるハティという祠や墓地、年長の男たちが村のあれこれを話し合う広場などは、ほとんどの場合女人禁制の地となっています。
女人禁制の理由は、女性の月経時の経血が穢れたものとみなされてきたためですが、たとえ年配の女性であっても、これらの場所には近づかない方が良いでしょう。
逆に、男性が立ち入れない場所は少ないのですが、各村の女性たちが月経の期間に「穢れを払う」場所とされる聖地に関しては立ち入りできません。
(そもそもこの聖地の場所は村人だけの秘密で、普通は行かないような場所にあるそうなので、間違って入ってしまうことはないでしょうが)
⑥英語・ロシア語はほぼ通じない
ジョージアという国自体が英語の通用度がかなり低い国ではある(特に地方部)のですが、トゥシェティ地方においても例外ではありません。
英語を話せる人を見つけるのはとても難しく、簡単な単語ですら理解してもらえない場合もあるほどです。
驚いたのが、ロシア語でさえ通じない場合もよくあったこと(特に女性)。
ジョージアでは40代以上の人ならまず間違いなくある程度のロシア語が話せるのですが、トゥシェティ地方では少し事情が異なるようです。
「トゥシェティ地方独自の言語」の項で触れた通り、二つの全く異なる言語が話されているこの地域。
公用語的な存在となるのはジョージア語なので、挨拶や数字、簡単な表現くらいは覚えておくと役に立つはずです。
⑦牧羊犬と野生動物に要注意

トゥシェティ地方でハイキングやトレッキングをしようと考えている人に声を大にして言いたいのが、「とにかく牧羊犬には注意して!」という点。
人の数よりも家畜の数が多いエリアなので、羊の群れを見かけて周りに羊飼いが居ない場合は、まず間違いなく牧羊犬がついています。
厄介なのが、この牧羊犬は旅行者であっても容赦なく吠えて威嚇してくるという点。
コーカサス地域原産のオオカミのような見た目の犬ばかりなので、とにかく怖いです。
こちらが何か攻撃をしたり敵意を見せない限りは、むやみに噛みつかないようにしつけられているはずですが、相手は動物。
100%大丈夫という保証はどこにもありません
・回り道できるようであればそちらを行く
・どうしても通る場合はできるだけ目を合わせずに通り過ぎる
などの対策しかできないのが現実です。
また、トゥシェティ地方を取り囲む山々は熊の生息地でもあります。
人が住む村に熊がやってくることはまずないそうですが、村と村をつなぐ山道などではたびたび目撃されるそう。
多くのハイキング客が訪れる7月や8月なら、熊に遭遇する危険はかなり低いでしょう。
向こうも人間が怖いので、あえて人に出会うような場所には姿を現さないのが普通です。
しかしながら、観光客の数がぐっと減る9月に入ると、冬眠の前に餌を探す熊がハイキングコースや道路に現れることもあります。
なんでこんなことを知っているかというと、実際にこの目で熊を目撃したからです。
オマロ~ダルトロ間の未舗装道路を車で移動している際に、湧き水でのどを潤している熊に遭遇しました。(たまたま車に乗せてもらっていて本当にラッキー)
復路はこの場所を徒歩で通ったのですが、どれだけビクビクしていたか想像してください(笑)
というわけで、9月にトゥシェティ地方の山道を歩く予定なら、気をつけるに越したことはありません。
そもそも熊は人間を恐れている生き物。
人間の存在を察知すると自分から逃げていく習性があるので、こちらの存在を分からせるのが大切です。
・歌いながら歩く
・手を叩きながら歩く
・爆音で音楽を流しながら歩く
・クマよけの鈴を持っていく
など、いくらでも対策は可能です。
⑧食材や日用品は全てアルバニで購入&持参する

トゥシェティ地方には、スーパーやコンビニは一つもありません。
唯一、商店(らしきもの)が2軒あるのはオマロ村だけ。
その他の村ではタバコひとつ気軽に購入できないほどで、とにかく不便です。
オマロ村の2つのエリアに1軒ずつある商店も、品ぞろえは本当に最低限。
何から何までが山価格なのは言うまでもありません(輸送の手間を考えれば納得ではありますが)。

というわけで、食料品や日用品、タバコ等の嗜好品など滞在中に必要なものはとにかく全て、4WDのシェアライドが発着するクヴェモ・アルヴァニ村の商店で購入しておきましょう。
クヴェモ・アルヴァニからの4WDライドは、オマロ村の各宿泊先まで乗せてくれるのが普通。
購入した物資も車に積み込めるので、荷物が増えることを気にする必要もありません。
⑨トゥシェティ地方では現金しか使えない&ATMはない
トゥシェティ地方では、宿もレストランも移動費も全てにおいて現金しか使えないのが基本。
最大の村であるオマロであってもそれは同様で、ATMも1台も存在しません。
つまりトゥシェティ地方では「現金が尽きる=詰み」ということ。
オマロへのアクセス拠点となるクヴェモ・アルバニ村には数台のATMがあるので、最悪でも移動する前までにできる限り多くの現金(1日100GEL~150GEL×滞在日数分)を用意しておきましょう。

もしどうしてもトゥシェティ地方旅行の途中で現金が足りなくなってしまった場合は、オマロで唯一(というかトゥシェティ地方全体で唯一)クレジットカード払いを受け付けているNadiani Hostelに行くのが◎
宿泊代や食事代などもカード払い可能ですし、キャッシュバック(カードでまとまったお金を払ってその場で現金をもらう)にも対応してくれます。
カード払いの手数料だけこちらもちとなりますが、支払金額合計に(たしか)0.2%上乗せされるだけという良心的さも◎
別料金等もぼったくりもないので、とにかく困ったときの駆け込み寺として、Nadiani Hostelの名前は覚えておいて損はないです!
⑩トゥシェティ地方の物価は高い

ありとあらゆる物資が下界から運ばれてくるトゥシェティ地方では、一般的なジョージア旅行よりもかなり出費がかさみます。
トゥシェティ地方の物価がどれほど高い化、実際にトビリシの平均価格と比較してみた表がこちら。▼
ビール1缶 | ワイン1本 | 煙草1箱 | ヒンカリ1個 | ハチャプリ | ホテトチップス1袋 | 板チョコレート | 宿の個室 (一人当たり) | 車移動10km | スイカ1個 | |
トビリシ | 3~4GEL (=¥150~¥200) | 8~10GEL (=¥400~¥500) | 6~8GEL (=¥300~¥400) | 1.8~2.0GEL (=¥90~¥100) | 4~8GEL (=¥200~¥400) | 3~5GEL (=¥150~¥250) | 3~5GEL (=¥150~¥250) | 50~100GEL (=¥2000~¥5000) | 10~20GEL (=¥500~¥1000) | 3~5GEL (=¥150~¥250) |
トゥシェティ地方 | 7~9GEL (=¥350~¥450) | 20GEL (=¥1000) | 8~15GEL (=¥400~¥750) | 3GEL (=¥150) | 10~12GEL (=¥500~¥600) | 10GEL (=¥500) | 7~10GEL (=¥350~¥500) | 40~80GEL (=¥2000~¥4000) | 100GEL (=¥5000)~ | 15~20GEL (=¥750~¥1000) |
…いやあ、自分でまとめてみてもなかなかに衝撃。
よくこの環境で数週間生きて来られたなあと、自分で自分を褒めてあげたくなります。
トゥシェティはだいたい全てのものがトビリシの二倍~三倍の価格なので、バックパッカー的な節約旅にはどうしても不向き。
ゲストハウスの宿泊代相場以外でトゥシェティの方が下界よりも割安なことはまずありえないので、とにかく必要なものはすべて持参しての訪問を強くおすすめします。
オマロには数軒の商店がありますが、どこも割高で品揃えにはかなり限りがあるのが現状。
しかし、オマロ以外のさらに小さな村にあるミニ商店ではさらに割高となるため、トゥシェティ地方内で何かが必要になった場合や食料を調達したい場合は、オマロの商店で購入するのが一番です。
オマロにいくつかある商店のうち、最もまともな価格なのがTisheというゲストハウス併設の店。
品揃えもおそらくオマロでは最も充実しており、インスタント麺からスナック菓子、煙草や自家製のパン類まで意外と色々手に入ります。
⑪独自のエコシステムに配慮する

自給自足が基本の陸の孤島・トゥシェティ地方では、私たち人間が日々当たり前に感じていることが当たり前でないことも多いです。
ゴミ処理場などは存在せず、電力にも限りがあるこの場所では、環境に配慮がなされた独自のエコに対する概念が根付いているもの。
私たち観光客が美しい自然を壊してしまわないよう、配慮するべき場面が多くあります。
ゴミはできるだけ持ち帰る
各村には共同のゴミ捨て場が最低一つは設置されており、各家庭のごみは全てそこに集まります。
週に1回ほど、トゥシェティ地方から麓へとゴミを運ぶための収集車がやってくるのですが、このゴミ収集車はトゥシェティ地方の人口に合わせた最低限の容量しかありません。
観光客の数が増える夏場に関してもこのシステムは同様であるため、どうしてもゴミ収集車1台では全てのゴミを集めることができない状況となることも。
積み込みきれなかったゴミは放置されるしかなく、自然環境への悪影響があるのはもちろん、家畜や野生動物が誤って食べてしまうこともあり得ます。
トゥシェティ地方を訪れたなら、土に還せる生ごみ以外は全て持ち帰るくらいの気持ちを持っておいても良いのではないでしょうか。
トイレットペーパーは絶対に流さない
トゥシェティ地方のゲストハウスのほとんどは水洗トイレが完備されています。
一方で、下水道は一切整備されていません。
汚物にどう対処しているのかというと、各家庭には大きなポリタンクがあり、トイレを流した後の汚物を貯めているのです。
溜まったものを定期的に自分の畑に放出して、肥料として再利用するのがトゥシェティ流。
なので、万が一使用済みのトイレットペーパー等をそのまま流してしまうと、それが畑に撒かれてしまい、取り除くのに大変な労力が必要となるわけです。
環境のためにも、紙類を取り除く人々の労力を軽減するためにも、トゥシェティ地方ではトイレに紙類を流すのはNG。
トイレ内に設置されたごみ箱に捨てるようにしましょう。
⑫寒さに備えた服装を

「トゥシェティ地方観光におすすめの季節」の項で解説しましたが、この地域の気候は日中と夜間の寒暖差が激しいという山岳部ならではのもの。
夏場の日中は25℃以上と暑くなる日でも、夜になると10℃以下まで下がることもあります。
トビリシなど平野部では朝から晩まで灼熱の日が続く7月や8月であろうとも、トゥシェティ地方の夜はかなり冷え込むことも。
現地で洋服などを追加で購入できる場所は皆無なので、たとえ真夏の旅であろうとも、寒さに対応できるジャケットや長ズボン、靴下などを準備して行くことをおすすめします。
⑬:日程に余裕を持ったプランニングを

「トゥシェティ地方観光に必要な日数」の項でも触れましたが、アクセス方法や天候などに関して不確定要素がかなりあるこの地域の旅では、キツキツの日程を組むのはNG。
雨が降って道路が寸断されてしまったり、下界とを結ぶ4WDの発着がなかったり…
さまざまな「そんなのアリ?」ということがあり得るので、「日本へ帰る飛行機の予約があるから絶対に2泊3日じゃないとダメ!」といったような綱渡りの日程での旅行は避けるべきです。
「1日や2日くらいなら足止めされてもOK!」くらいに、とにかく日程に余裕を持ったプランニングを強くおすすめします。
というか、わざわざ高いお金と長い移動時間(と、命)をかけてこんなコーカサスの最果ての地までやって来るわけなので、急ぎすぎずにゆっくりと滞在しなければもったいないと思います。
おわりに:トゥシェティ地方を旅した感想

というわけで、トゥシェティ地方の観光に必要な情報を全てまとめした。
情熱有り余った結果の大ボリューム記事(定期)。
書いていてかなり疲れたのですが、それはここまでお読みいただいた方も同じなのでは(笑)
トゥシェティ地方は、ジョージアの中でも最も旅するのにハードルが高い地域の一つ(というか難易度最高峰かも)。
「これはちょっと…さすがに個人で行くのは難しいなあ…」と思った方、その気持ちもよくわかります。
のぶよ自身も、「トゥシェティ地方、行ってみたい!」と思い立ち色々と情報収集をしている際に、アクセス面や宿泊面などがかなりハードルが高いように感じましたし、もはや諦めて別のエリアへ行こうかと思ったほどでした。
結局、無事トゥシェティ地方を2回&合計1ヶ月以上に渡って旅することができたのですが、これだけは言わせてください。
行けば絶対にどうにかなるし、行って本っっ当に良かったです。

圧倒的なコーカサスの大自然、伝統的な生活を営む人々、異世界感漂う石造りの村、誰もが気軽に訪問できるわけではないからこその秘境感…
世界半周に出発して7年目となり、色々な国の色々な場所を訪れましたが、トゥシェティ地方以上に心を動かされた場所は他にないかもしれません。
本当に、ジョージアという国が持つ魅力が凝縮されたような、特別な場所でした。
近年、観光ブームに乗るジョージアでは、古き良き伝統や文化が徐々に変化しつつあることを肌で感じることも多いのですが、トゥシェティ地方に関しては全てがピュアなまま。
数百年前からほとんど何も変わっていないであろう日常の風景が、自分の目の前に普通に広がっていることへの感動は、言葉では言い表せないものがありました。
というわけで、溢れんばかりの情熱をこれでもかと詰め込んで出来上がったのがこのトゥシェティ地方観光情報まとめ記事(そりゃあ4万5千字越えるってもんだ)。
日本から遠く離れた国の、さらに下界から遠く離れた場所にある「コーカサス最果ての、最後の秘境」。
この特別な場所を旅する感動をできるだけ多くの人と共有でき、興味を持ってもらえたならとても嬉しいです!
「この記事を読んでトゥシェティ地方へ行ったぜ!」という人がいれば、どうぞご連絡ください。感動を共有しましょう(笑)
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