こんにちは!ジョージアの最果てに位置するトゥシェティ地方を2週間旅した、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
この2週間で感じたトゥシェティ地方の魅力をひとことで表すなら、「死ぬまでに自分の目で見たい、ジョージアという国の原風景が残る”最後の秘境”」です。
「最後の秘境」だの「死ぬまでに見たい」だの使い古されたキラキラ表現を使いやがって…
とお思いの方、その気持ちはよく分かります。
ちょっと車に数時間乗って行ける山奥で、SNSに写真をアップできるくらいの場所が「秘境」だったら、そもそもこのジョージアという国の80%くらいは秘境ですからね(笑)
ご安心ください。
今回紹介するトゥシェティ地方は、2020年現在でも電気すら通っていない、文字通りの「秘境」です。
コーカサス山脈の深い山々で他の地域とは隔てられているため、独自の文化や建築様式、宗教観などが現在にまで息付いており、大自然の素晴らしさも民俗学的な面白さも同時に味わえる、ジョージア国内でも異色の地域なのです。
今回の記事は、そんなトゥシェティ地方の観光に必要な情報を全てまとめたもの。
こんなコーカサス山脈の奥地までわざわざやってくる旅行者は限られているので、(おそらく)日本で初めてだと思います。
【とりあえずトゥシェティ地方が気になる人向け】
・トゥシェティ地方の基本情報 (地理/信仰&言語/ライフスタイル)
・トゥシェティ地方の観光スポット7選
・トゥシェティ地方でしたい独自の文化体験
【実際にトゥシェティ地方旅行を計画している人向け】
・トゥシェティ地方観光のベストシーズン
・トゥシェティ地方のアクセス・エリア内の移動
・トゥシェティ地方旅行の計画のコツ(必要日数/まわり方/宿泊etc)
・トゥシェティ地方旅行時の注意点・アドバイス10箇条
前半は【ザックリとトゥシェティ地方を知りたい人向け】、後半は【ガチでトゥシェティ地方の旅を考えている人向け】とおおまかに分かれています。
観光スポットやアクセス方法はもちろん、旅行の季節や独自の文化に関しても解説しているので、きっとトゥシェティ地方の魅力をより深く味わう旅のお役に立てるはず。
日本語でも英語でも情報が少ないエリアですが、旅行に必要な情報は全て網羅しているつもりです。
コーカサスの大自然に育まれた伝統文化が現代に息づく「ジョージア最後の秘境」へ、いざ出発しましょう!
トゥシェティ地方とは?旅行の前に知っておきたい基本情報
トゥシェティ地方の地理
トゥシェティ地方があるのは、ジョージア北東部、コーカサス山脈の南麓にあたるエリア。
首都のトビリシからの距離は200kmほどと、地図上ではそこまでアクセスが不便なようには感じませんが、実際は車両通行可能な山道が1本通っているだけ。
(しかも、「世界で最も危険な道の一つ」と言われるほどの悪路です)
それ以外のアクセス方法は一つもありません。
周囲を高さ3000m~4000m級の山々に囲まれているため、ジョージア国内で最もアクセスが難しい地域の一つに数えられます。
ソ連時代にはこの地域に電力を引く計画があり、送電線が整備されていたのですが、ソ連崩壊とともに頓挫。
トゥシェティ地方へ続く道では、朽ち果てた送電線の残骸をいくつも目にすることができます。
トゥシェティ地方独自の宗教観・言語
トゥシェティ地方では、古くからアニミズム(精霊信仰)が盛んで、中世初期にジョージアでキリスト教が導入された後はそれらをミックスした独自の信仰が発展していきました。
そこに加わったのが、イスラム教のエッセンス。
トゥシェティ地方からコーカサスの山々を越えた北側には、現在ロシア領となっているダゲスタン共和国やチェチェン共和国などのイスラム圏があります。
トゥシェティの人々は中世以降、これらの異民族の侵攻に悩まされながらも文化的には大きな影響を受け、キリスト教が主であるジョージア他地域とは異なる独自の宗教観や文化が形成されました。
独自の宗教観の例として、トゥシェティ地方では豚肉や豚皮製品は絶対にご法度。
食べるのはもちろんのこと、持ち込むことすら許されていないのでご注意を。
(地元の人曰く、「もしよそ者が豚肉を持ち込んでいるのがバレたら、川に放り落とされる」とのことです)
また、古くからの他民族との交流・混血の結果、トゥシェティ地方では二つの異なる言語が現在でも話されています。
・チャグマ方言:ジョージア語の一方言
・バツビ語:ナフ語派(チェチェン/イングーシなど北コーカサス諸国の言語)の一方言
それぞれは全く言語グループが異なり、お互いに意思疎通は全く不可能なほどだそうです。
(おそらく、日本語とインドネシア語くらいには違うはず)
このように、コーカサスの山を越えてやってきた異民族の侵入と交流が長い間繰り返されてきて、独自の文化が形成されたトゥシェティ地方。
村を防衛するために各村に築かれた見張り塔は、現在ではトゥシェティ地方を象徴する景観となっています。
トゥシェティ地方の人々独自のライフスタイル
現在、トゥシェティ地方で人が住む村は50余りあるのですが、ほとんどの村人は一年中住んでいるわけではありません。
というのも、雪が降る10月~5月の間は下界とをつなぐ唯一の道路が通行不可能となってしまい、完全に孤立してしまうため。
住民のほとんどは、6月~9月の夏季のみ生まれ育った村に戻って生活し、それ以外の季節はふもとの町に構えた別宅で生活する、というスタイルを貫いています。
この独自のライフスタイルは、もともとトゥシェティ地方に根付いていた遊牧文化の影響と言われ、夏に羊や馬などの家畜を連れて高地に移動し、ひとたび雪が降ると温暖な地域で冬を越すというもの。
いわば、トゥシェティ地方の人々は、現在巷で流行っている「ノマド」の大先輩なわけで、2020年代に入ろうともその伝統的なライフスタイルは途絶えていません。
そのアクセスの不便さから、近年波に乗(りすぎてい)るジョージアの観光ブームの影響をほとんど受けていないトゥシェティ地方。
エリアのほとんどが自然公園として保護されているほどに美しい大自然と、山岳部独自の伝統文化が根強く息づく素朴な村々は、私たち旅行者を魅了してやみません。
トゥシェティ地方の観光スポット7選
歴史や文化面だけを見ても、ジョージアの他の地域とは一線を画しているトゥシェティ地方。
しかしながら、「単純に美しい風景が見たい!」という目的であっても、その期待に100%応えてくれます。
(文化面を知っておいた方が確実に充実した旅になりますが)
いくつかの村はUNESCOの世界遺産にも登録されており、その独自の伝統文化と景観が世界的に認められつつあるのもポイント。
ここでは、トゥシェティ地方で必ず訪れたい7つの観光スポットを紹介していきます。
オマロ
トゥシェティ地方に足を踏み入れた旅行者が最初に到着するのが、この地域最大の村であるオマロ(Omalo / ომალო)。
にょきにょきと生えたような見張り塔が形成するオマロ城塞に抱かれた素朴な村の風景は、トゥシェティ地方を代表するものです。
オマロの村は、高台に位置するアッパー・オマロと、その下のロウワー・オマロの二つの地区に分かれており、それぞれの地区で異なる風景が見られます。
絵に描いたようなジョージア山岳部らしい村の風景と、周囲を取り囲むコーカサスの山々を一望する絶景ポイントも数知れず。
トゥシェティ地方の旅の始まりにふさわしい場所と言えるでしょう。
オマロ自体もかなり魅力的な村ですが、周辺にはさらに小さな村が点在しており、さらなる「秘境感」を味わうことも可能。
ダルトロやピリキタ・ヴァレーなど、さらに山奥の村へ向かう中継地点としても便利な場所にあるので、トゥシェティ地方観光&滞在の拠点として考えるのが良いでしょう。
ダルトロ
オマロから未舗装道路を北へ10kmほど。
さらにもう一つ山を越えた先にあるダルトロ村(Dartlo / დართლო)は、全ての建物がこの地域でとれる黒ずんだ石を利用して築かれた、圧巻の景観を誇る村。
その現実離れした風景はもちろんユネスコの世界遺産に登録されており、文句なしの「トゥシェティ地方観光のハイライト」となる場所です。
村の周囲に広がるのは、コーカサスの大自然のみ。
オマロに比べるとかなり小さくまとまっているダルトロの風景は、「地上の楽園」という表現がしっくりくるほどに現実離れしています。
ダルトロ周辺には他にも見どころが点在しているのも嬉しい点。
日帰りハイキングはもちろん、馬に乗って観光することも可能です。
現実世界から切り離されて、コーカサスの最果てに息づく伝統を感じながらの滞在をしたいなら、ダルトロ以上の場所は他にないでしょう。
クヴァヴロ
ダルトロ村の北側にある丘の頂上に残る廃村が、クヴァヴロ(Kvavlo / ყვავლო)と呼ばれる場所。
ダルトロは、山を越えてやってくる異民族の侵攻にかねてから悩まされてきた地。
いざという時に、家族を連れて避難できる場所として築いた集落がクヴァヴロでした。
国境が引かれ、異民族の侵攻を恐れる必要がなくなった現代では、その立地の不便さが災いして村は放置されることとなりました。
かつて人々が生活をしていた石造りの民家や、谷間を一望できる立派な見張り塔だけが、当時のクヴァヴロの様子を現在に伝えます。
ダノ
クヴァヴロとセットで訪れたいのが、トゥシェティ地方の原風景が見られるダノ村(Dano / დანო)。
村の風景自体はダルトロのように総石造りなわけではありませんが、人々の生活感が漂う素朴な雰囲気が一番の魅力です。
ダノ村で絶対に見逃せないのが、ハティ(Khati)という祠。
山羊や牛の角が飾られた石造りの祠は、かねてから村人の信仰を一身に集めてきた場所です。
トゥシェティ地方独自の精霊信仰を象徴するハティはどこの村にも最低一つはあるのですが、ここダノ村のものが一番立派に感じました。
ピリキタ・ヴァレー
トゥシェティ地方の最奥部に位置するピリキタ・ヴァレー(Pirikita Gorge / პირიქითა)は、「これより先に人が住む村は存在しない」という、文字通りの「南コーカサスの最果て」たる場所。
ピリキタ・アラザニ川が形成する深い渓谷沿いには、時間の流れから取り残されたような村々がぽつんと点在するだけ。
雄大なコーカサスの大自然の景観はもちろんのこと、伝統的なライフスタイルを貫く人々の生活にお邪魔することができるのです。
ピリキタ・ヴァレーの村々の素晴らしさは、言葉で表現できるものでは到底ありません。
現代社会から完全に隔絶されたような場所で、伝統文化や人々の生活が現在でも残っているのですから。
日本人だけではなく、ここまでやってくる旅行者は本当に限られているのですが、だからこそ昔ながらの風景や文化が色濃く残されているのでしょう。
ダルトロ村から日帰りハイキングで訪れることも可能なピリキタ・ヴァレー。
深い山々と清流が織りなす絵葉書のような風景の中を、自分の足で一歩一歩、南コーカサス最果ての村へと歩いていくことの感動を噛みしめながらのハイキングは、きっと一生の思い出となるでしょう。
のぶよ的に、トゥシェティ地方観光で最もおすすめしたい見どころと言っても過言ではありません。
シェナコ
オマロを拠点に日帰りハイキングで訪れることができるシェナコ(Shenako / შენაქო)は、「トゥシェティ地方で最も伝統的な建築が残っている」と言われる小さな村。
その評判に偽りはなく、人口数十人の小さな村では、美しい装飾が施された木製のテラスを持つ石造りの家々が肩を寄せ合うようにたたずんでいます。
シェナコ村を見下ろす高台には、「見る角度によって色が変わる」と言われる不思議な教会があります。
伝統建築で埋め尽くされた村を見守るように建つ教会の風景を眺めていると、いち旅行者であろうともこの場所の神聖さを感じずにはいられません。
シェナコ村からさらに北東に4kmほど歩いたところにはディクロ(Diklo /დიკლო)という村があり、オマロを拠点にシェナコとディクロの二つの村をセットでまわるのが定番の日帰り観光ルートです。
ディクロには廃城塞があり、かつて北コーカサスからやってきたダゲスタン人が居住していた村の跡地が見渡せるそうなのですが、のぶよの場合は天候に恵まれなかったため、シェナコまでのハイキングで断念しました。
アバノ峠
トゥシェティ地方へアクセスする際に、誰もが通ることとなるのがアバノ峠(Abano Pass / აბანოს უღელტეხილი)。
山の稜線にへばりつくように敷かれた悪路を越えた先にある、コーカサス地域で車両通行可能な最も標高が高い地点(2826m)で、ここがトゥシェティ地方とカヘティ地方の境界線となります。
このアバノ峠を通る未舗装道路は、トゥシェティ地方へアクセスするための唯一の道。
その実態はかなりの悪路で、車一台がやっと通れるほどの道幅の狭さ。
「世界で最も危険な道の一つ」と称されるのにも納得です。
とはいえ、トゥシェティ地方を訪れるなら100%通らなければならないのがこの道。(しかも行きも帰りも)
行く前から恐怖で尻込みしていてもアレなので、「スリリングな観光体験の一つ」と割り切ってしまうのが良いかもしれません(笑)
観光だけじゃない!トゥシェティ地方で絶対したい5つの文化体験
観光スポットをサクッと見てまわるだけでも、大自然や村々が作り出す素晴らしい風景に魅了されること間違いなしのトゥシェティ地方。
しかしながらトゥシェティ地方は、「観光スポットを順番に周って、写真を撮って満足!」…というスタイルの旅で満喫できるようなエリアでは到底ありません。
というのも、この地域はジョージア国内で最も、山岳民族由来の伝統的な文化が残っている地域であるため。
ここでは、ジョージアの中でも異色の伝統が息づくトゥシェティ地方で、ぜひ挑戦したい文化体験を5つ紹介していきます。
騎馬民族の伝統!乗馬体験
どんなにテクノロジーが発展しようとも、どんなに大量輸送が可能となろうとも、トゥシェティ地方で最もポピュラーな移動・運輸手段は馬です。
中世から常にこの地域の人々の生活を支えてきた馬。
日常生活のみならず、異民族が侵攻してきた際の戦いの道具としても活躍してきました。
そんなトゥシェティ地方では、村人が飼う馬を借りて乗馬体験ができます。
それも牧場の柵の中をぐるりと一周するだけのような観光向けのショボいものではなく、他の村への移動手段も兼ねて馬を1日レンタルするというガチなもの。
各村間の交通はかなり不便なトゥシェティ地方。
馬を借りれば、伝統文化に触れながら交通の便が確保できて一石二鳥です。
ジョージアで(たぶん)最も美しい!星空観賞
標高が高く、空気が澄んでいるトゥシェティ地方は、満天の星空が見られることで知られています。
その美しさはとにかく半端なものではありません。
天気が安定した夏場~秋口の晴れた夜なら、毎日のように天の川が見られるほど。
トゥシェティ地方の中でも特に星空が美しいとされるのが、ダルトロ村やそのさらに奥に位置するピリキタ・ヴァレーの小さな村々。
3Dメガネをかけているかのごとく爛々と輝く無数の星には、人生観が変わるほどの感動を覚えるはずです。
ジョージア国内には星空の美しさをウリにする山岳リゾートが多々ありますが、どう頑張ってもトゥシェティ地方の星空が最高峰。
というのも、トゥシェティ地方には2020年現在でも電気が通っておらず、各家庭の電力は全て太陽光発電でまかなわれているため。
ダルトロやその奥の村では、節電のために夜9時以降は村の電気が一斉に消されることも多く、明かり一つない村からは零れんばかりの星空が見られるのです。
どこに行っても天気にだけは恵まれることが取り柄であるのぶよ。
毎晩のように燦々と煌めく星空を鑑賞することができ、その美しさはこれまで人生で見た星空の中でもトップを争うほどのものでした。
期間限定の伝統の味!幻の地ビール
のぶよがトゥシェティ地方を知ったきっかけは、「ここでしか作られない地ビールがある」という情報を得たことでした。
だてに毎日2.5ℓのペットボトルビールを消費して、ジョージア経済に貢献しているわけではありません(笑)
トゥシェティ地方を訪れたら、名産の地ビールを絶対に味わいたいと思っていました。
そのビールの名は「アルディ(Aludi / ალუდი)」。
ジョージアの中でもここトゥシェティ地方で、しかも限られた期間しか味わえない「幻のビール」です。
トゥシェティ地方では、ジョージア正教の復活祭(イースター)の日から数えて100日後に「アトゥニゲノバ(Atnigenoba / ათნიგენობა)」という祭りが開催され、騎馬レースや男女共同での歌や踊り、村人総出の食事など数多くの伝統的な催し物が行われます。
その祭りの際に、村人全員で協力して醸造するのがこのアルディ。
大きな樽で大量に作ったビールを祭りで飲んだ後、残った分が各家庭に分け与えられるのです。
どこの村も標高が高いために、普通のビールのような発酵過程にはならないアルディ。
その味わいはかなり独特なものでした。
砂糖を大量に混ぜるなど独自の工程で作られるため、かなり甘め&炭酸も薄めで、アルコール度数も2%ほどとかなり低いので、お酒が苦手な人でもジュース感覚で味わうことができると思います。
アルディは、7月のアトゥニゲノバ(お祭り)の後~8月にかけてしか味わうことができない「幻のビール」。
のぶよの場合は2020年のコロナウイルスの影響で観光客がゼロだったこともあってか、9月の上旬に「村全体でこれがラスト1本」というアルディを購入することができました。
(こういうところと天気だけは、昔から運があるタイプです)
山の恵みを舌で味わう!トゥシェティ地方の名物料理
トゥシェティ地方まではるばるやって来たなら、山岳地域独自の食文化を舌でも感じたいもの。
レストラン等がない地域であるため、基本的にゲストハウスで食事を提供してもらうことになるのですが、これがとにかく絶品なのです。
高級レストランのような気取った一皿こそありませんが、山の恵みをふんだんに使った自給自足が基本の素朴な料理でのおもてなしは、旅の思い出を彩るものとなるはず。
美味しいものは色々とありますが、中でもトゥシェティ地方以外では食べられない独自の料理を紹介します。
(絶対に食べたい場合は、ゲストハウスの人にお願いしてみましょう)
羊肉のヒンカリ
ジョージア料理を代表するメニューの一つであるヒンカリ。
モンゴル帝国支配時代に伝わったものとされる、「ジョージア風小籠包」といったところで、国全体で愛される国民食の一つです。
ヒンカリの中身は、牛と豚の合い挽き肉が一般的なのですが、トゥシェティ地方では豚肉はご法度。
そのため、羊肉を合い挽きにしたものを皮で包んだ「羊肉ヒンカリ」が食されているのです。
羊肉だからといってクセはなく、独特の匂いも強くはありませんが、やはり羊肉らしい独特の風味は健在です。
普通のヒンカリの具はスパイスを多く使って味付けがされるのですが、山岳部ではスパイスは貴重品。
最低限しか使用されないため、かなりあっさりした味わいが特徴的です。
トゥシェティ地方の各村には「ヒンカリ名人」とされる人が最低一人はおり、その人が大量に作ったヒンカリを村人全員に定期的に配るのが慣例だそう。
そのお返しに自分の得意料理を作って渡すという、物々交換さながらなシステムが現在でも息づいています。(もはや「何時代?」という感じですが)
ヤギ肉料理
ジョージア料理では豚肉を用いた料理が比較的多く見られますが、ここトゥシェティ地方ではその代わりに羊肉やヤギ肉を用いることが多いです。
ジョージア料理の定番であるハルチョー(牛肉or豚肉と野菜のスープ)も、トゥシェティ地方ではヤギ肉を使ったバージョンになります。
ヤギの肉というと、クセが強くて固いイメージがありますが、これがかなりの絶品。
5時間ほど煮込まれた肉はとても柔らかく、スープにも骨から出た旨味が染み出していて、ほっとする味わいでした。
様々な郷土料理があるジョージアですが、なかなかヤギ肉を使ったものを食べる機会は少ないもの。
トゥシェティ地方旅行の際にはぜひ挑戦してみたいものです。
トゥシェティ最大の魅力!独自の信仰を理解する
大自然の風景だけを考えるなら、ジョージアにはトゥシェティ地方よりもダイナミックな自然の景観が見られる場所も多くあります。
・ジョージア最高峰を有する山岳リゾート・カズベキ
・数々の氷河を間近に望むスヴァネティ地方
これらの名だたる山岳観光地に比べてもトゥシェティ地方が特別である理由の一つが、この地域だけに根付いた独自の宗教観・信仰に基づいた伝統文化でしょう。
「トゥシェティ地方独自の宗教観・言語」の項で少し触れましたが、この地域の人々の宗教観は、元々の精霊信仰にキリスト教やイスラム教などが混ざりあって独自に発展したもの。
その信仰の対象とされるのが「ハティ(Khati)」と呼ばれる石造りの祠です。
どこの村にも最低一つはあるハティには、村ごとに崇められる神の子供が祀られているとされ、女性が近づくことは一切許されていません。
また、トゥシェティ地方に住む閉経前の女性は、月経時に特別な聖地にお参りする必要があるそう。
この聖地には男性が立ち入ることは許されず、その場所も村人だけの秘密となっています。
のぶよがダルトロ村で宿泊したゲストハウスの娘(30代)が、「明日(その聖地に)行くんだ~」と、さも「ちょっと買い物に行くんだ~」くらいのノリで普通に話していて、若い世代においてもその伝統が至って普通のこととして根付いていることにとても驚きました。
私たち観光客にも無縁ではない、トゥシェティ地方独自の信仰や宗教観。
年に一回の祭りや地ビール醸造、豚を忌む習慣など、この地域の人々の生活の細部にまで影響を及ぼしているものなので、きちんと理解して尊重することが大切だと思います。
トゥシェティ地方に現在でも息づく信仰は、さまざまな宗教がミックスした独自のものとなっており、トゥシェティの人々のアイデンティティーを形成する要素の一つでもあります。
古代~中世以前のトゥシェティ地方では「イメルティ(Ymerti)」と呼ばれる自然を司る絶対神の子供たちが「チュヴティシュヴィリ(Chvtishvili)」とされ、大地と自然を治めるために人間と協力し、「デヴィ(Devi)」と呼ばれる悪魔と戦う存在とされてきました。
このチュヴティシュヴィリは一人ではなく何人もいるとされ、それらを祀ったのが、各村にあるハティ(祠)。
トゥシェティ地方全体で53ある村ごとに最低一つずつハティは存在し、どのチュヴティシュヴィリが祀られているかはそれぞれ異なるそうで、個体能力やデヴィ(悪魔)と戦う際の役割もそれぞれ異なるそう。
このアニミズム(自然・精霊信仰)的な宗教観は、もともとはトゥシェティ地方に古代から独自に伝わっていた神話に基づいたものでした。
しかし中世初期にキリスト教がもたらされると、イエス・キリストや聖母マリアに対する信仰に対しても拡大解釈されるようになっていったのです。
トゥシェティ地方に伝わる神話の核となり、独特であるのが、世界を形成する二つの相反する要素を分離して考え、そのバランスに重きを置く二面性。
この「相反する要素」は、男と女の二つの性に象徴されます。
・天国/理性/純潔さ/顕在意識:男性の象徴
・地獄/感情/不純/潜在意識:女性の象徴
これら二つの正反対の要素がむやみに混ざると「カオス」が訪れるとされました。
それを避けるために、トゥシェティ地方の社会では男性と女性は厳しく隔てられた生活が近世(ソビエト支配時代以降も)まで続いていました。
女性の月経時の経血は「最も不純なもの」とされたため、かねてから女性は神聖な場所であるハティ(祠)に近づくことが許されませんでした。
キリスト教の修道院や教会などの「聖なる場所」に対してもこの概念が拡大解釈されたことが、現代にもトゥシェティ地方に女人禁制の祠や修道院などが多く残る理由となっています。
また、各村周辺には女性の月経時期に「洗礼」を行うための場所が現在でも残っているそうなのですが、詳しい場所は各村人だけが知る秘密となっており、よそから来た観光客は立ち入ることができません。
このように、男女が完全に隔てられた社会生活が営まれてきたトゥシェティ地方ですが、唯一この相反する二つの要素が交差するのを許されたのが、アトゥニゲノバ(村の祭り)のとき。
現代の祭りでは、男女が競い合うゲームや女性も観覧可能な騎馬レースなどが開催されるのみですが、これはかつて「祭りの日が男女が唯一交流を持ち、子孫を残すための機会であった」ことを象徴しているのではないかと考えられているそうです。
現代に暮らす私たちからすると、「どんな男尊女卑?」と感じてしまいますが、
・複数のチュヴティシュヴィリ(神の子供たち)が存在する多神教
・女性の月経を「穢れ」とする
・男女が完全に隔てられた社会構成
など、中世以前の日本でも同じような信仰や風俗があったとされる点にはとても興味深いものがありますね。
トゥシェティ地方観光におすすめの季節
四方をコーカサスの山々に囲まれたトゥシェティ地方。
旅行を計画する際に最も大切&初めに考えるべきことは、「いつ旅行するか」という点です。
「トゥシェティ地方の人々独自のライフスタイル」の項ですでに触れましたが、人々は一年中この地域に住んでいるわけではありません。
冬には地域全体が雪に覆われ、下界とをつなぐ唯一の道路が寸断されて完全に陸の孤島となるトゥシェティ。
秋にはほぼ全ての村人が山を下り、麓の別宅で次の春までの数か月間を過ごすのです。
というわけで、トゥシェティ地方全体がほぼ無人となる冬季は、旅行どうこうの次元ではなく訪れること自体が不可能です。
「いつからいつまで道路が通行可能か」という決められた日程は存在せず、ひとたび雪がどっさり降ると次の春まで通行不可能となります。
一般的に、トゥシェティ地方への唯一の道路が開通しているのは5月の最終週~10月の第一週と言われていますが、もちろんその年の気候によって多少前後することも。
あまりギリギリの時期に訪れても、「村人がまだ戻ってきていない / みんな山を下りた後だった」なんてことになりかねないので、確実にアクセス&旅行が可能なのは6月~9月の4ヶ月間のみと言えるでしょう。
それではこの4ヶ月間のうち、トゥシェティ地方旅行のベストシーズンはいつになるのでしょうか。
各月の気候や現地の様子をまとめました。(長くなるので折りたたんでいます)
6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
平均最高気温 (℃) | 27 | 31 | 31 | 26 |
平均最低気温 (℃) | 14 | 17 | 16 | 12 |
平均降水量 (mm) | 76 | 45 | 48 | 36 |
平均降雨日数 (日) | 11 | 10 | 8 | 9 |
一般的には初夏まっさかりで気温がグングン上がる6月ですが、この時期のトゥシェティ地方旅行はおすすめしません。
なぜなら、雨が降る確率がかなり高いため。
ジョージア全体に言えることなのですが、6月~7月にかけては雨季のような気候となり、山岳部だけでなく平野部でも雨の日がかなり多いです。
平野部や電力や交通手段などのインフラが整った山岳エリアなら雨でも観光はできるのですが、トゥシェティ地方においては雨は最大の敵。
・電力が全て太陽光発電→雨の日が続くと電気が使えない
・唯一の道が土砂崩れなどで危険度が上がる/通行不可能になる
・ハイキングがかなりハードモードになる
など、雨の中でトゥシェティ地方を旅行するメリットは皆無です。
6月~7月上旬までの梅雨のような天気が嘘のように、晴れる日が続くのが7月中旬~8月下旬にかけて。
特に7月中旬~下旬のトゥシェティ地方は、観光のベストシーズンです。
長く降り続いた雨によって一面が緑の絨毯で覆われ、桃源郷さながらの風景が広がります。
トレッキング、乗馬、名物ビール片手にのんびり…
好みに合わせたアクティビティーも楽しめますし、名物の星空が見られる確率も高いでしょう。
また、先述の「幻の地ビール」の項で触れたアトゥニゲノバ(Atnigenoba)と呼ばれる祭りが各村で開催されるのもだいたい7月中旬頃。
(ジョージア正教の復活祭の100日後にあたる日であるため、年によって日程は変わります)
歌や踊り、地ビール作りに豪華な料理など、トゥシェティ地方の伝統文化を最大限に感じたいなら、この時期がベストでしょう。
トビリシなど平野部は耐えきれないほどの灼熱に見舞われる8月ですが、標高が高いトゥシェティ地方では快適そのもの。
雨が降る確率も少なく、ハイキング目的の人にはおすすめの季節です。
しかしながら、8月上旬~中旬は欧米諸国のバケーションシーズンと重なるため、トレッキング目的の外国人観光客がかなり多く訪れます。
(特に「最後の秘境」とかのキャッチフレーズが大好きなドイツ人観光客)
こうした観光客向けにトビリシ発の現地ツアーも催行されるため、アクセスや現地での移動に困らないという点はメリットかもしれません。
しかしながら、トゥシェティ地方最大の魅力である、伝統的な山岳地帯の厳かな雰囲気を感じるには少々賑やかすぎるかも。
また、8月上旬~中旬の超ハイシーズンは、どこの宿も旅行者で満室となることが普通。
宿泊できなかった人たちがその辺の草むらで夜を明かす光景も見られるほどだそうですよ。
8月も下旬に入ると夜の冷え込みがだんだんと激しくなり、トゥシェティ地方にも短い秋が訪れます。
8月中旬まで我が物顔で村を練り歩いていた外国人観光客は姿をひそめ、トゥシェティ地方に本来の素朴な雰囲気が戻ってきます。
人の数は少なくなったとはいえ、天気は相変わらずの安定さ。
日中の気温もかなり過ごしやすく、ハイキングなどをしていると汗ばむほどの陽気です。
このような気候が9月上旬まで続き、のぶよ的には7月に負けないベストシーズンだと思います。
何を隠そう、のぶよ自身がこの時期に2週間ほど旅をしましたが、とにかく完璧でした。
14日間の滞在中、雨に降られたのはたったの2日間のみで、その他は素晴らしい晴天に恵まれました。
(トゥシェティ地方の各記事の写真を見ていただければ、どこも晴れているのがおわかりいただけるはず。)
コロナウイルスの影響で観光客の姿はほとんどなありませんでしたが、宿の人曰く、「8月下旬から徐々に静かになって、9月に入るとかなりのんびりした雰囲気になる」とのこと。
また、9月上旬~中旬にかけては、トゥシェティ地方を取り囲む山々の紅葉が一気に進む時期でもあります。
到着した時は一面緑だった風景が、たったの1~2週間で黄色く変化しているわけで、自然の素晴らしさに感動すること間違いなし。
これも、この時期に旅行する人だけの特権と言えるでしょう。
例年であれば、9月のトゥシェティ地方ではまとまった雪が降ることは珍しく、少しくらいの雪なら道路もまだ通行可能なため、9月中旬~下旬であっても旅行することは可能です。
(「例年」の話であって、9月20日頃に雪で道路が寸断されたこともあるそう)
しかしながら、9月も半分を過ぎる頃になると、村人たちは一斉に山を下りる準備をし始めます。
ゲストハウスはどんどん閉まっていき、一日ごとに村から人が去って活気がなくなっていくのを肌で感じました。
のぶよの場合、トゥシェティ地方滞在の最終日が9月13日だったのですが、オマロ村で宿泊していたゲストハウスはちょうどこの日で閉まるということで、家族みんなで山を下りました。
(というわけで、帰りはふもとの村まで乗せてもらうことができたのです)
村にはまだもう一週間ほどは営業を続けるというゲストハウスも数軒ありましたが、9月も最終週に入る頃にはほぼ全ての施設が閉鎖されることとなるでしょう。
この地方最大の村であるオマロですらこんな状態なので、さらに奥地の小さな村では、宿泊先を探すのにかなり苦労すると思います。
陸の孤島に一人きりで取り残されるような事態にはならないでしょうが(笑)、9月中旬~後半のトゥシェティ地方旅行は、アクセス・宿泊などの面で難易度がかなり上がることを覚悟しておきましょう。
トゥシェティ地方へのアクセス:行き方 / 帰り方 / エリア内移動手段
トゥシェティ地方へのアクセス:トビリシからの行き方
トゥシェティ地方へ通じる唯一の道路は、標高3000m近い地点に位置するアバノ峠を越える未舗装道路一本だけで、しかも「世界一危険な道の一つ」と称されるほどにエクストリームなもの。
飛行機なんて飛んでいませんし、とんでもないほどの悪路なので普通車で走ることは不可能です。
トビリシ~トゥシェティ地方間で、最もポピュラーかつ安く済むアクセス方法が、
①トビリシからマルシュルートカ(乗り合いバス)でクヴェモ・アルバニへ移動
②クヴェモ・アルヴァニからから4WDのシェアライドを利用する
という2ステップでの移動です。
クヴェモ・アルヴァニ村(Kvemo Alvani)は、トゥシェティの人々が冬を越すための別宅を構えて出来上がった村なので、この村のほぼ全員がトゥシェティ地方に関係がある人。
村人や物資を山へ運ぶための4WD車が日々発着しており、いわば「トゥシェティ地方と下界を結ぶターミナル」のような存在です。
クヴェモ・アルヴァニ~オマロ間の4WD車の料金の相場は、
・車1台あたり:200GEL(=¥6450)
・乗客1人あたり:50GEL(=¥1613)
基本的にはこの4WDライドは乗り合いで、4人以上乗客が集まったらの出発となるため決まった時刻表などはありません。
(仮に4人以上集まったとしても、これ以上値段は下がらないことが普通)
このマルシュルートカ→4WDの2ステップでの個人移動以外にも、アクセス方法は一応あります。
・トビリシから現地ツアーを利用する
・トビリシでタクシーをチャーターする
便利そうに見えますが、のぶよ的にはおすすめしません。(特にタクシー)
というのも、命の危険があるため。
「世界一危険な道」の名は大袈裟でも何でもなく、実際に毎年死亡事故が起こっています。
事故の原因の99%は、飲酒運転かトゥシェティ地方出身者でないドライバーによるものだそう。
トゥシェティ地方の人々は、この道を運転する際に絶対にお酒は飲みませんし、どの場所が危険なのか経験で分かっています。
夜間に土砂崩れや路肩の決壊等が起こった場合、その情報が翌朝には全ドライバーにまわっており、安全が確認されるまで誰も車を走らせようとはしないほどに、安全への意識は徹底しているそう。
トビリシから直接タクシーで向かうのが快適&便利なのは理解できますが、とにかく想像を絶する悪路なので、できるだけリスクを減らすに越したことはないでしょう。
トゥシェティ地方へのアクセス:トビリシへの帰り方
アクセスにはかなり難ありなトゥシェティ地方ですが、一度到着してしまえば帰りは絶対にどうにかなります。
その理由が、トゥシェティ地方では全員が顔見知りで、「いつ、誰が、何時ごろに」4WDで山を下りるかの情報共有がなされているため。
これは、物資やガソリンなどをふもとの町で買ってきてもらうためなのですが、旅行者でもこの村人ネットワークを利用させてもらうことができます。
宿泊先のゲストハウスの人に、「○○日に帰りたい」と事前に伝えておけば、その日山を下りる予定の4WDのドライバーに必ずつなげてくれるでしょう。
料金相場などは行きと同じですが、帰りの場合は人が4人以上集まらなくても一人分の料金(50GEL)だけで乗せてくれることが多いです。
(そもそもドライバー自身が用事があって麓へ行くわけなので)
トゥシェティ地方から山を下りたら、行きと同様にクヴェモ・アルヴァニで降りてトビリシ行きのマルシュルートカに乗り換えるのが一般的ですが、さらに10km先のテラヴィ(Telavi)というこの地方最大の町まで乗せてくれる場合もあります。
テラヴィの方が見どころやインフラ、トビリシへのバス便などが充実しているので、ドライバーにお願いしてみるのも良いでしょう。
トゥシェティ地方内の移動手段
外からのアクセスだけでも一苦労なトゥシェティ地方ですが、それはエリア内の各村間の交通に関しても同じこと。
路線バスなどの類は全くないため、旅行者が村から村へ移動する手段は以下の3つのみとなります。
・徒歩&ヒッチハイク
・4WDチャーター
・馬をレンタル
徒歩とヒッチハイクに関しては、体力と運次第ですがもちろん無料です。
トゥシェティ地方全体において車が通行できる道はかなり限られているので、みんな目的地は一緒。
自分の行きたい方向へと走る車にサインを送れば乗せてくれることも珍しくありません。
(特に、地元の人でなく、ジョージア他地域/外国から来た観光客の車はかなりの確立で乗せてもらえると思います)
4WDチャーターと馬のレンタルに関してはだいたいの料金相場が存在するので、知っておけば料金交渉がしやすいと思います。
4WDチャーターの料金相場
トゥシェティ地方各村間で4WDをチャーター(運転手付き)して往復する場合の相場は以下の通りです。
・オマロ~ダルトロ:100GEL(=¥3231)
・オマロ~シェナコ~ディクロ:80GEL(=¥2584)
・ダルトロ~パルスマ:100GEL(=¥3231)
・オマロ~ダルトロ~パルスマ:200GEL(=¥6462)
※全て4WD車一台当たりの料金
もしも二人以上で利用するなら、馬をレンタルするよりも安く済む場合がほとんどです。
しかしながら、基本的に全て日帰りの往復での料金となるので、訪問先の村で宿泊したい場合(片道だけ利用)などはアレンジしにくいのがデメリット。
交渉次第ですが、片道だけの利用であっても、料金は往復と変わらない場合がほとんどです。
(結局ドライバーは同じ道を戻って自宅に帰るため)
4WDチャーターを専門に取り扱う会社などはなく、全て村の人がお小遣い稼ぎでやっているもの。
希望する場合は宿泊先のゲストハウスの人にドライバーを紹介してもらうのが一般的です。
馬レンタルの料金相場
一人旅の場合や、乗馬経験がある人におすすめなのが、各村で馬をレンタルすること。
料金の相場は、1頭1日50GEL(=¥1615)~とリーズナブル。
4WD車に比べると移動に時間はかかるものの、トゥシェティ地方伝統の乗馬体験をしながら移動できるのが最大の魅力です。
こちらに関しても、乗馬体験を特別に扱う会社などはないため、各ゲストハウスの人に馬を所有する村人を紹介してもらうのが普通です。
トゥシェティ地方旅行のプランニングのポイント(必要日数/まわり方/宿泊)
トゥシェティ地方の観光情報を詳細に解説してきましたが、なかなかプランニングのイメージは掴みにくいもの。
そこまで広いエリアではないものの、交通がとにかく不便なため、各スポットをまわるには想像以上に時間がかかります。
ここでは、トゥシェティ地方の旅行をプランニングする際のポイントをシェアしていきます。
トゥシェティ地方観光に必要な日数
トゥシェティ地方の旅行を計画する際に、「何日間あれば十分なの?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
トビリシ発着の現地ツアーでは、2泊3日でオマロとダルトロをまわるものが定番ですが、正直3日間なんて全然足りません。
というのも、トゥシェティ地方までの移動で丸一日(往復なので丸二日)とられることとなるため、現地滞在時間はたったの1日のみとなってしまうためです。
今回の記事で紹介したトゥシェティ地方の観光スポットを全てまわるためには、最低でも現地滞在丸四日間は必要となり、往復に丸二日かかることを考えると合計で6日間の日程がマストとなります。
しかしながら、この6日間という日程はかなりタイト。
・現地での移動は全て4WD
・雨で観光できない日が一日もない
・行き/帰りともに、4WDのシェアライドがスムーズに見つかる
という、宝くじ的な確率(と予算)の上で成り立つ日程が6日間です。
また、すでに紹介したトゥシェティ地方への唯一の道路である「世界一危険な道」は、大雨が降った翌日などは車の通行が不可能となることもしばしば。
場合によっては数日間の足止めをくらうことも十分に考えられます。
のぶよ的には、最低でも8日間、できれば10日間以上の余裕を持った日程でのプランニングを強くおすすめします。
それ以下の日程しか取れない場合は、いくつかの見どころをカットするか、トビリシ発着の現地ツアーを選ぶのが現実的だと思います。
オマロとダルトロ、2つの村を拠点に考える!
数々の小さな村が点在するトゥシェティ地方ですが、滞在拠点として便利なのはオマロとダルトロの二つの村。
これらの村はトゥシェティ地方で最も大きな村のTOP2で、ゲストハウスなどの設備がある程度充実しているのはもちろん、それぞれの周辺の見どころに日帰りで訪れることができるためです。
今回紹介している場所に限れば、
・オマロ拠点:シェナコ/ディクロ
・ダルトロ拠点:ダノ/クヴァヴロ/ピリキタ・ヴァレー
と分けることができ、どこも日帰りで足をのばすことが可能です。
トゥシェティ地方での宿泊先の選び方
観光地化の大規模開発の波がまだ訪れていないトゥシェティ地方。
2020年現在は大規模ホテル等は一切存在せず、一般の民家を観光客向けに改装したゲストハウスが宿泊先の基本となります。
宿の選択肢は少ない
高級ホテルやホステルなどの宿タイプが存在しないトゥシェティ地方。
ゲストハウスの部屋タイプや設備は宿によってバラつきがあるものの、クオリティーはどこも変わりません。
シャワーやトイレは共同のところが多いですし、インターネットがある宿がほとんどです。
(後述しますが、どんなにお洒落に改装された宿でも、電気が止まったりお湯が出ないこともしばしばあります)
オマロ以外の村では、村のどこに泊まろうともすべてが徒歩圏内なので、立地に関してもあまり考えすぎる必要はありません。
のぶよ的には、ゲストハウスの良し悪しはオーナー家族の人柄が全て。
最低限の設備だけ確認したあとは、温かいおもてなしを期待しておく程度に留めておきましょう。
食事はゲストハウスで食べるのが基本
自給自足が基本のトゥシェティ地方では、外食する文化などあるわけもなく、レストランなどもほとんどありません。
たまに、ゲストハウスの食堂を開放してレストラン風に営業しているような場所もありますが、基本的に食事は各ゲストハウスで提供してもらうこととなります。
どんな料理が出てくるかは、宿によって大きく変わってくるのがポイント。
物資が限られているにも関わらず、前菜からメインまで大量に提供しておもてなししてくれる宿もあれば、パンと芋とサラダだけなんて手抜きをする宿もあります。
ゲストハウスで食事をつける際の料金相場(一人当たり)は以下の通り。
・朝食:10GEL~15GEL(=¥323~¥484)
・昼食:15GEL(=¥484)
・夕食:15GEL~20GEL(=¥484~646)
食事の時間も、こちらの都合に合わせてくれることがほとんどなのでとても助かりますね。
余った食事は次の日にまわせば食費節約!
ジョージアではどこもそうなのですが、ゲストハウスの食事はありえないほど大量に出てきます。
これもおもてなし文化の一つなのですが、普通の人間には絶対に食べきれない量ですし、向こうもそれは織り込み済み。
余った夕食は次の日の朝食や昼食にまわすのもOKで、快く受け入れてくれる場合がほとんど。(もちろん無料で)
資本主義が心に染み付いた日本人的には、「それだとゲストハウス側が朝食代分損してしまうのでは?」と心配になりますが、彼らはそういう次元で生きている人々ではありません(笑)
食費の節約にも無駄をなくすことにもつながるので、遠慮せずにお願いしてみるのが良いでしょう。
7月/8月は宿の事前予約が必須
インターネットがない村も多いトゥシェティ地方では、宿泊予約サイトに対応しているゲストハウスはまだまだ少数派。
現地に行けば、名前すらついていないようなゲストハウス(というか、民家)もたくさんあるので、宿泊先に困ることはなさそうに思えます。
しかしながら、ジョージア国内はもとより海外からの観光客が多く訪れる7月中旬~8月のハイシーズンには、どこの宿も満室となってしまうのが普通だそう。
予約なしでやって来てどこも一杯で、仕方なく草むらで寝る観光客も出てくるほどだそうです(笑)
というわけで、この観光ハイシーズンにトゥシェティ地方の旅を計画しているなら、早めに宿泊先を押さえておくに越したことはありません。
トゥシェティ地方観光の注意点・アドバイス10箇条
ここまで読めば、トゥシェティ地方旅行のプランニングは完璧なはず!
しかしながら、ジョージアの他地域とはかなり異なる文化を持つトゥシェティ地方では、独自の信仰やルールが現代でも根付いており、私たちよそから来た観光客でもそれを尊重する必要があります。
いろいろなルールがあるということは、それだけ伝統的な価値観が色濃く残っているということ。
私たち、いち観光客が伝統を曲げてしまわないためにも、村の人々に快く受け入れてもらうためにも、注意しなければならないことは多くあります。
この項では、実際にトゥシェティ地方を訪れる前に知っておきたい注意点やアドバイス10箇条を解説していきます。
観光よりも何よりも、この項が一番大切と言っても過言ではないかもしれません。
1:豚肉・豚皮製品の持ち込みは厳禁
第一にして最も大切なことが、トゥシェティ地方には豚肉や豚皮の製品などは絶対に持ち込んではいけません。
山を越えた北側にあるチェチェン共和国やイングーシ共和国などのイスラム圏と同様に、トゥシェティ地方においては豚は不浄の生物とされており、肉はもちろん、触ることすら忌まわしいとされています。
不思議なのが、トゥシェティの人々は冬に山を下りると普通に豚肉を食すという点。
山のふもとのアルヴァニ村(住民のほとんどがトゥシェティ出身者)の商店では普通にソーセージなどが売られていますし、食堂では豚肉を使用した一般的なジョージア料理が提供されているのです。
宗教的なものというよりも、土地に関連した興味深い信仰の一つですね。
とにかく、人々に聖なる地と崇められるトゥシェティ地方内では、豚に関するあらゆるものは絶対にご法度。
肉だけでなく、かばんやアクセサリーなどに関しても豚皮はNGです。
よそ者とは言え「知らなかった…」で済む話ではないので(見つかると川に放り投げられるそうです)、絶対に守るようにしましょう。
2:トビリシからタクシーでのアクセスは絶対ダメ
「トゥシェティ地方へのアクセス」の項ですでに触れた通り、トゥシェティ地方へ続く唯一の道は、かなりの危険を伴うもの。
レンタカーなんてもってのほかですし、トビリシからやってきた道に馴染みのないタクシードライバーや旅行者が起こす事故が頻発しています。
少しでもリスクを減らすためには、面倒ではあるものの、クヴェモ・アルバニ村からトゥシェティ出身者の運転する4WD車を利用するのが最も安全なオプションだと思います。
3:電気・インターネットはないと思っておく
2020年現在でも、トゥシェティ地方には電気が通っていません。
近年では太陽光発電が広まってきており、オマロやダルトロなど比較的大きな村ならば各家庭に一台のソーラーパネルが設置されていることが多いです。
ご想像の通り、太陽光発電は自然に大きく左右されるもの。
曇りや雨の日が続いたり、多くの旅行者が一堂に会すると、あっという間に電力はゼロになってしまいます。
ゲストハウスの中には、カメラやPC、ドライヤーなど多くの電力が必要な機器の使用/充電が制限されている場所もあります。
また、その日の発電量によっては夜9時以降は消灯となる宿も多いです。
各家庭にはラジエイターと呼ばれる、ガソリンを使って自家発電をする非常用電源が備わっていることが多いですが、そもそもトゥシェティ地方全体でガソリンスタンドは一軒もありません。
そのため、非常用発電のガソリンですら麓のクヴェモ・アルヴァニ村からのポリタンクでの輸送に頼っているため、量は限られているのが現状です。
かつてはインターネットが存在しなかったトゥシェティ地方ですが、近年になってオマロ村に大きなアンテナが設置されたことにより接続できるようになりました。
しかしながら、インターネットを受信するルーターも電力に依存しているわけなので、ひとたび電力が不足すると立派なアンテナがあろうがなかろうが接続できなくなってしまいます。
のぶよ的には、電力とインターネットに関してはそもそも期待しない方が良いと思います。
・予備のカメラバッテリーを持参する
・大容量のパワーバンクをフル充電で持っていく
・事前に宿泊先に電力の供給状態を確認しておく
・もはや電気なしの生活をデモンストレーションしておく(笑)
などの対策・心の準備をしておくに越したことはありません。
4:祠や教会は女人禁制の場合がほとんど
「トゥシェティ地方の独自の信仰を理解する」の項で触れましたが、21世紀とは思えないような伝統が息づいているのがトゥシェティ地方。
各村にあるハティという祠や墓地、年長の男たちが村のあれこれを話し合う広場などは、ほとんどの場合女人禁制の地となっています。
女人禁制の理由は、女性の月経時の経血が穢れたものとみなされてきたためですが、たとえ年配の女性であっても、これらの場所には近づかない方が良いでしょう。
逆に、男性が立ち入れない場所は少ないのですが、各村の女性たちが月経の期間に「穢れを払う」場所とされる聖地に関しては立ち入りできません。
(そもそもこの聖地の場所は村人だけの秘密で、普通は行かないような場所にあるそうなので、間違って入ってしまうことはないでしょうが)
5:英語・ロシア語はほぼ通じない
ジョージアという国自体が英語の通用度がかなり低い国ではある(特に地方部)のですが、トゥシェティ地方においても例外ではありません。
英語を話せる人を見つけるのはとても難しく、簡単な単語ですら理解してもらえない場合もあるほどです。
驚いたのが、ロシア語でさえ通じない場合もよくあったこと。
ジョージアでは40代以上の人ならまず間違いなくある程度のロシア語が話せるのですが、トゥシェティ地方では事情が異なるようです。
「トゥシェティ地方独自の宗教観・言語」の項で触れた通り、二つの全く異なる言語が話されているこの地域。
公用語的な存在となるのはジョージア語なので、挨拶や数字、簡単な表現くらいは覚えておくと役に立つはずです。
6:牧羊犬と野生動物に要注意
トゥシェティ地方でハイキングやトレッキングをしようと考えている人に声を大にして言いたいのが、「とにかく牧羊犬には注意して!」という点。
人の数よりも家畜の数が多いエリアなので、羊の群れを見かけて周りに羊飼いが居ない場合は、まず間違いなく牧羊犬がついています。
厄介なのが、この牧羊犬は旅行者であっても容赦なく吠えて威嚇してくるという点。
コーカサス地域原産のオオカミのような見た目の犬ばかりなので、とにかく怖いです。
こちらが何か攻撃をしたり敵意を見せない限りは、むやみに噛みつかないようにしつけられているはずですが、相手は動物なので、100%大丈夫という補償はありません。
動物の群れを見かけたら、とりあえず要注意。
・回り道できるようであればそちらを行く
・どうしても通る場合はできるだけ目を合わせずに通り過ぎる
などの対策しかできないのが現実です。
また、トゥシェティ地方を取り囲む山々は熊の生息地でもあります。
人里に熊がやってくることはまずないそうですが、村と村をつなぐ山道などではたびたび目撃されるそう。
多くのハイキング客が訪れる7月や8月なら、熊に遭遇する危険はかなり低いでしょう。
向こうも人間が怖いので、あえて人に出会うような場所には姿を現さないのが普通です。
しかしながら、観光客の数がぐっと減る9月に入ると、冬眠の前に餌を探す熊がハイキングコースや道路に現れることもあります。
なんでこんなことを知っているかというと、実際にこの目で熊を目撃したからです。
オマロ~ダルトロ間の未舗装道路を車で移動している際に、湧き水でのどを潤している熊に遭遇しました。(たまたま車に乗せてもらっていて本当にラッキー)
復路はこの場所を徒歩で通ったのですが、どれだけビクビクしていたか想像してください(笑)
というわけで、9月にトゥシェティ地方の山道を歩く予定なら、気をつけるに越したことはありません。
そもそも熊は人間を恐れている生き物。
人間の存在を察知すると自分から逃げていく習性があるので、こちらの存在を分からせるのが大切です。
・歌いながら歩く
・手を叩きながら歩く
・爆音で音楽を流しながら歩く
・クマよけの鈴を持っていく
など、いくらでも対策は可能です。
7:食材や日用品は全てアルバニで購入&持参する
トゥシェティ地方には、スーパーや食料品店は一つもありません。
唯一、商店(らしきもの)が2軒あるのはオマロ村だけで、その他の村ではタバコひとつ気軽に購入できないのです。
オマロ村の2つのエリアに1軒ずつある商店も、品ぞろえは本当に最低限。
何から何までが山価格なのは言うまでもありません。(輸送の手間を考えれば納得ではありますが)
「商店」というよりも、「ちょっと多めに買い物しておいて、余りを自分の家で売っている」という感じなので、ここで何かが手に入るとは考えないほうが良いです。
というわけで、食料品や日用品、タバコ等の嗜好品など滞在中に必要なものはとにかく全て、4WDのシェアライドが発着するクヴェモ・アルヴァニ村の商店で購入しておきましょう。
クヴェモ・アルヴァニからの4WDライドは、オマロ村の各宿泊先まで乗せてくれるのが普通。
購入した物資も積み込めるので、荷物が増えることを気にする必要もありません。
8:独自のエコシステムに配慮する
自給自足が基本の陸の孤島・トゥシェティ地方では、私たち人間が日々当たり前に感じていることが当たり前でないことも多いです。
ゴミ処理場などは存在せず、電力にも限りがあるこの場所では、環境に配慮がなされた独自のエコに対する概念が根付いています。
私たち観光客が美しい自然を変えてしまわないように気をつけなければなりませんよね。
ゴミはできるだけ持ち帰る
各村には共同のゴミ捨て場が最低一つは設置されており、各家庭のごみは全てそこに集まります。
週に1回ほど、トゥシェティ地方からふもとへとゴミを運ぶための収集車がやってくるのですが、このゴミ収集車はトゥシェティ地方の人口に合わせた最低限の容量しかありません。
観光客の数が増える夏場に関してもこのシステムは同様であるため、どうしてもゴミ収集車1台では全てのゴミを集めることができなくなります。
積み込めなかったゴミは放置されるしかなく、自然環境への悪影響があるのはもちろん、家畜や野生動物が誤って食べてしまうこともあり得ます。
トゥシェティ地方を訪れたなら、土に還せる生ごみ以外は全て持ち帰るくらいの気持ちを持っておいても良いのではないでしょうか。
トイレットペーパーは絶対に流さない
トゥシェティ地方のゲストハウスのほとんどは水洗トイレが完備されています。
一方で、下水道は整備されていません。
汚物にどう対処しているのかというと、各家庭には大きなポリタンクがあり、トイレを流した後の汚物を貯めているのです。
溜まったものを定期的に自分の畑に放出して、肥料として再利用するのがトゥシェティ流。
なので、万が一使用済みのトイレットペーパー等をそのまま流してしまうと、それが畑に撒かれてしまい、取り除くのに大変な労力が必要となるわけです。
環境のためにも、紙類を取り除く人々の労力を軽減するためにも、トゥシェティ地方ではトイレに紙類を流すのは控え、設置されたごみ箱に捨てるようにしましょう。
シャワーは早めに、ガスの使用は極力少なめに
電力が不安定ということは、お湯の供給も不安定ということ。
トゥシェティ地方のほとんどの家庭では、太陽光発電によって生産された電気を利用して昼間にお湯を沸かしているのですが、お湯を貯めておくタンクはもともとの家族全員が使うのに十分な量くらいしか想定されていない場合が多いです。
夏場など多くの観光客が一斉に宿泊する時期は、夜になると十中八九お湯はなくなってしまうでしょう。
温かいシャワーがどうしても浴びたい人は、できるだけ早めに利用することをおすすめします。
電力と同じように、トゥシェティ地方ではガスも供給されていません。
各家庭では、ふもとで購入した小容量のプロパンガスが使用されており(大容量のものは車に載らないため)、できるだけ最低限のガスの消費量で日々の食事の準備を済ませています。
(薪で火を起こして調理している家庭やゲストハウスもザラにあります)
キッチンを使わせてもらうように頼めば快くOKしてくれる宿がほとんどですが、旅行者があまりに大量のガスを使いすぎてボンベが空になってしまったら、宿の人はいちいち山を下りて買いに行かなければならないわけです。
キッチン使用可能だからといって好き勝手に使うよりも、この場所で暮らす人のことを考えながら「使わせてもらう」のがスマートではないでしょうか。
9:寒さに備えた服装を
「トゥシェティ地方観光におすすめの季節」の項で解説しましたが、この地域の気候は日中と夜間の寒暖差が激しいという山岳部ならではのもの。
夏場の日中は30℃以上とかなり暑くなる日でも、夜になると10℃以下まで下がることもあります。
トビリシなど平野部では朝から晩まで灼熱の日が続く7月や8月であろうとも、トゥシェティ地方ではかなり冷え込むことも。
現地で洋服などを追加で購入できる場所は皆無なので、たとえ真夏であろうとも、寒さに対応できるジャケットや長ズボン、靴下などを準備して行くことをおすすめします。
10:日程には余裕を持ったプランニングを
「トゥシェティ地方観光に必要な日数」の項でも触れましたが、アクセス方法や天候などに関して不確定要素がかなりあるこの地域の旅では、キツキツの日程を組むのはNG。
雨が降って道路が寸断されてしまったり、下界とを結ぶ4WDの発着がなかったり…
さまざまな「そんなのアリ?」ということがあり得るので、「日本へ帰る飛行機の予約があるから絶対に2泊3日じゃないとダメ!」といったような綱渡りの計画は避けるべきです。
「1日や2日くらいなら足止めされてもOK」くらいに日程に余裕を持ったプランニングを強くおすすめします。
というか、わざわざ高いお金と長い移動時間(と、命)をかけてこんなコーカサスの最果ての地までやってくるわけなので、急ぎすぎずにゆっくりと滞在しなければもったいないと思います。
おわりに:トゥシェティ地方を2週間旅した感想
というわけで、トゥシェティ地方の観光に必要な情報を全てまとめした。
書いていてかなり疲れたのですが、それはここまでお読みいただいた方も同じなのでは(笑)
ジョージアの中でも最も旅するのにハードルが高い地域の一つ(というか最高峰)なので、「これはさすがに行くのは難しいなあ…」と思った方、その気持ちもよくわかります。
のぶよ自身も、「トゥシェティ地方、行きたい!」と思い立っていろいろと情報収集をしている際に、アクセス面や宿泊面などがかなりハードルが高いように感じましたし(特に、コロナ禍で観光客ゼロだったため、アルヴァニ~オマロ間の4WDのシェアライドがほぼ存在していなかった)、もはや諦めて別のところへ行こうかと思ったほどでした。
結局、無事トゥシェティ地方を2週間も旅することができたのですが、これだけは言わせてください。
行けば絶対にどうにかなるし、行って本っっっ当に良かったです。
圧倒的な大自然、伝統的な生活を営む人々、誰もが気軽に訪れられない秘境感…
世界半周に出発して2年目となり、色々な国の色々な場所を訪れましたが、トゥシェティ地方以上に心を動かされた場所は、他にないかもしれません。
本当に、ジョージアという国が持つ魅力が凝縮されたような特別な場所でした。
近年、観光ブームに乗るジョージアでは、古き良き伝統や文化が徐々に変化しつつあることを肌で感じることも多いのですが、ここに関しては全てがピュアなまま。
数百年前からほとんど何も変わっていないであろう日常の風景が、自分の目の前に広がっていることへの感動は、言葉では言い表せないものがありました。
というわけで、溢れんばかりの情熱をこれでもかと詰め込んで出来上がったのがこの記事。
(そりゃあ3万字越えるってもんだ)
日本から遠く離れた国の、さらに下界から遠く離れた場所にある「コーカサス最果ての、最後の秘境」。
この特別な場所を旅する感動を、できるだけ多くの人と共有できたなら嬉しいです。
「この記事を読んでトゥシェティ地方へ行ったぜ!」という人がいれば、どうぞご連絡ください。感動を共有しましょう(笑)
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