こんにちは!アルメニアに5ヶ月滞在した世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニア北部のシラク地方は、一面の荒野が広がる高原エリア。
千年前、中世アルメニア王国時代の首都であったアニ(Ani / 現在はトルコ領)から目と鼻の先という地理的条件もあり、当時の技術の結晶とも言える建築物が多く残ることでも知られています。
シラク地方の中でも、中世アルメニア王国の建築技術の素晴らしさが最も顕著にみられるものの一つが、今回紹介するマルマシェン修道院(Marmashen Monastery / Մարմաշենի վանք)。
シラク地方の中心都市であるギュムリ(Gyumri)からたった10kmほどしか離れていないにもかかわらず、マルマシェン修道院の周辺は一面の荒野。
見渡す限り、他の建造物はいっさいありません。
トルコとの国境まで5kmもないほどの場所で、千年前から凛とたたずむマルマシェン修道院。
その姿はどこまでも現実離れしており、異世界のような雰囲気はアルメニア髄一だと思います。
今回の記事は、マルマシェン修道院の観光情報を解説するもの。
アルメニアの古都・ギュムリから個人でも簡単にアクセス可能なので、滞在中には絶対に足をのばすべき!
シラク地方観光の真のハイライトとなる場所です。
マルマシェン修道院の見どころ
マルマシェン修道院の敷地内には、それぞれ完成時期が異なる5つの教会やチャペルが建ち並んでいます。
5つの教会すべてをゆっくりと見学しても1時間~1時間半ほどみておけば十分な規模。
後述するアマシア村とセットで訪れるのもおすすめです!
①聖ステパノス教会
マルマシェン修道院内で最大の建造物であり、最も完璧な状態で保存されているのが、聖ステパノス教会(Church of St. Stepanos)。
シラク地方で採れるトゥファ(tufa)というピンク色の石造りで統一された外観がとても印象的で、外壁やドーム天井に施された装飾の細かさが見る者を圧倒します。
聖ステパノス教会が完成した時期には「10世紀中には完成していた」「11世紀のはじめに完成した」など諸説あるようですが、教会の南側の外壁に刻まれた碑文によると1029年とされています ▼
当時は、10世紀に中世アルメニア王国の黄金期を担ったバグラトゥニ朝の栄光に翳りが見え始めた時期。
後継者争いによって、王国の広大な領土の各地で分裂が起きはじめていた頃です。
いっぽうで、ここマルマシェン修道院があるシラク地方は王国の首都・アニ(現トルコ領)から距離が近いこともあり、バグラトゥニ朝の権力が強く及んでいました。
世界遺産のアニ聖堂の建築様式と、マルマシェン修道院の聖ステパノス教会の建築様式がとても似ているのは、どちらも同じ王国の勢力範囲内でほぼ同時期に建てられたからなのでしょう。
「マルマシェン」の名前の由来は、アルメニア語で「大理石」を表す「マルマル(marmar / մարմար)」からきているそう。
その名の通り、聖ステパノス教会の内部は、小規模ながらも千年前の技術が詰め込まれた石造りの空間が広がっています。
淡いピンク色の外壁とは対照的に、内部は黒っぽい石で統一されたシックな雰囲気。
意外とこじんまりとした空間ですが、正面の祭壇付近には千年前の装飾がそのまま残っている箇所もあります ▼
また、祭壇の土台部分の装飾も千年前のオリジナル。
こちらはやや保存状態が悪いですが、美しい模様が刻まれていることが確認できます ▼
聖堂内にはあまり光が入って来ないように設計されているようで、とにかく薄暗いです。
千年前からずっとここにある石壁と装飾に囲まれていると、心が澄んでいくような気がしました。
②聖ペトロ礼拝堂
①聖ステパノス教会のすぐ南側に建つ小さな建造物が、聖ペトロ礼拝堂(St. Petros Chapel)。
正面部分を除いて外観の装飾はほとんどなくシンプルな印象を持ちますが、マルマシェン修道院内で最も古い建造物であるとも言われているそうです。
聖ペトロ礼拝堂の内部には、彫刻などはいっさいなし。
外壁と同じ色のピンクがかった石と黒っぽい石が組み合わされた内壁となっています。
③聖母教会跡
①聖ステパノス教会の北側にある建造物が、聖母教会の跡(St. Astvatsatsin Church)。
もともとは聖ステパノス教会と似た建築様式の少し小さめの教会だったそうで、19世紀(200年前)まではその姿を保っていたそう。
シラク地方で幾度となく発生した地震によって屋根は崩れ落ち、半壊したままの状態となっています。
かつての祭壇や、ドーム屋根を支えていたアーチの一部だけが残っており、なんとも寂しいたたずまい。
これはこれで、マルマシェン修道院の異世界感を演出しているような気がしました。
④ガヴィト跡&第四の教会の土台
①聖ステパノス教会の正面に残る円形の土台は、かつてこの場所に建設されていた四つ目の教会の跡。
こちらも地震で倒壊してしまったまま放置されており、円形の土台のせいか古代遺跡のようにも見えます。
四つ目の教会に関しては解明されていないことが多いのですが、地震で倒壊した後の残骸からは屋根部分の石が見つかっていないため、未完成の状態のときに地震が起こって倒壊したのではないかと考えられています。
四つ目の教会の土台と聖ステパノス教会入口の間には、かつてガヴィト(拝廊)が設置されていましたが、こちらも現在は残っていません。
かつてガヴィトがあった部分、聖ステパノス教会入口の左脇には、10世紀にマルマシェン修道院を建設したヴァフラム・パフラヴニ(Vahram Pahlavouni)が眠るとされる墓石があります。
千年前の中世アルメニア王国バグラトゥニ朝において軍事面を指揮する役職に就いた人物で、ビザンツ帝国の攻撃から首都のアニを守ったことで知られる人物です。
⑤第五の教会跡
マルマシェン修道院で最後の建造物となるのが、第五の教会の跡。
修道院の敷地から200mほど北の丘の上にぽつりと残っています。
この教会の周りは墓地として利用されていたそうで、現在でも数十基の墓石が点在しています。
中には千年近く前の墓石もあるそうで、一つ一つ異なった装飾が見られます。
また、第五の教会からはマルマシェン修道院の敷地全体を見渡すことができるのもポイント▲
見渡す限りの荒野の中央で凛とした存在感を放つ千年前の修道院。
まるで時空間が歪んでいるかのような現実離れした風景は、マルマシェン修道院観光の真のハイライトです!
マルマシェン修道院へのアクセス・行き方
黄色:ヴァフラマベルド(分岐点)バス停
マルマシェン修道院が位置するのは、シラク地方の中心都市・ギュムリから北西に10kmほどの場所。
アクセス拠点はギュムリ一択で、以下の2通りの方法があります。
マルマシェン修道院観光は、1時間ほどみておけば十分。
同じ方面にあるアマシア村とセットでまわるのがおすすめです!(個人でも余裕で2か所まわれるはず)
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、ギュムリでタクシーをチャーターしてしまうこと。
ギュムリ~マルマシェン間の単純往復 + 観光時の待機時間1時間ほどで、1台2500AMD~3000AMD(=¥592~¥711)ほどが料金相場です。
のぶよ的には、せっかくタクシーをチャーターするなら、マルマシェン修道院が位置するシラク地方北部の見どころもセットでまわるのが効率的だと思います。
(もちろん料金相場は上がってくるので、あとは交渉次第!)
・アマシア村(Amasia)
・トゥルチュカンの滝(Trchkan waterfall)
・アルピ湖国立公園(Arpi Lake)
とはいえ、いくらタクシーをチャーターしようと、上に挙げた見どころをすべて一日でまわるのはかなりハード。
シラク地方の道路状況はかなり悪く、上の見どころも距離的にはそれぞれ近いものの移動には想像以上に時間がかかるためです。
日帰りでまわるなら、アルピ湖 + アマシア + マルマシェン修道院 の3ヶ所で精一杯だと思います。
②マルシュルートカ
ギュムリから個人でマルマシェン修道院へアクセスする場合は、マルシュルートカを利用するのが便利。
ギュムリ中心街南端のバスステーションから以下のいずれかのバスに乗って、マルマシェン修道院入口の分岐点があるヴァフラマベルド(Vahramaberd / Վահրամաբերդ)という村で途中下車するだけです。
・アマシア行き(Amasia / Ամասիա):1日5~6本
・カプス行き(Kaps / Կապս):1時間に1本
ギュムリ→マルマシェン修道院入口(往路)
アマシア行き/カプス行きマルシュルートカが発着するのは、ギュムリ中心街最南端に位置するバスステーション ▼
バスステーションに到着したら、アマシア行きの57番か、カプス行きのマルシュルートカを探しましょう。(その辺の人にきけば教えてくれるはず)
マルマシェン修道院入口~マルマシェン修道院間徒歩ルート
マルシュルートカの運転手に「マルマシェン修道院へ行きたい!」と行っておけば、上の写真の分岐点付近のバス停で降ろしてくれるはず。(地図 黄色)
ここはヴァフラマベルドという集落で、マルマシェン修道院までは3kmほど歩く必要があります。
ヴァフラマベルド(分岐点)~マルマシェン修道院間の3kmほどの道は、車両通行可能な未舗装道路をずっと歩いて行くだけ。
一本道なので迷うことはありませんが、高低差が110mほどある点に注意。
・行き:下り坂(所要時間30分~40分)
・帰り:上り坂(所要時間45分~1時間)
となるので、プランニングの際にはここも考慮に入れましょう。
マルマシェン修道院入口→ギュムリ(復路)
マルマシェン修道院→ギュムリへ戻る際は、行きと同様にアマシア発57番かカプス発のマルシュルートカに途中乗車するだけ。
ヴァフラマベルド村の分岐点付近で待機していれば、30分~1時間に1本はいずれかのマルシュルートカが通過するので、手を挙げて合図をして途中乗車しましょう。
ギュムリでの到着地は、行きと同様に市内南部のバスステーション。
ギュムリ中心街などでの途中下車も可能です。
アマシア&マルマシェン修道院をセットで観光する場合
シラク地方観光の穴場である「アルメニアで最もカラフルな村」アマシア(Amasia)は、マルマシェン修道院がある幹線道路をさらに北へ20分ほどいった場所にあるので、セットでまわるのも◎
その場合は絶対に、アマシア→マルマシェン修道院の順番がおすすめです。
というのも、それぞれの写真撮影に最適な時間は、
・アマシア:午前~昼過ぎ
・マルマシェン修道院:午後
となるので、反対の順にまわると一日中ずっと逆光となってしまうためです。
アマシア観光を済ませたら、アマシア→ギュムリの57番マルシュルートカに乗って、マルマシェン修道院入口で途中下車すればOK。その場合の運賃は250AMD(=¥60)です。
運転手に「マルマシェン修道院に行きたい!」と言っておけば、先述のヴァフラマベルド村の分岐点付近で降ろしてくれるはず。
あとは同様に徒歩でマルマシェン修道院まで向かうだけです。
おわりに
ギュムリ滞在中のデイトリップ先としてもおすすめの、マルマシェン修道院の観光情報を解説しました。
修道院の建築自体も素晴らしいですが、周辺の現実離れした風景も見逃せません!
シラク地方の見どころに関する記事は他にもいくつか書いているので、ぜひプランニングの参考にしてください。
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