こんにちは!アルメニアに5ヶ月滞在した、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ)
「アルメニアで一番良かった場所は?」と尋ねられたら、迷いに迷ってこう言います。
「アルメニア北部のロリ地方(Lori / Լոռի)へは、とにかく全人類が行くべき!」と。
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アルメニアの中では比較的広い面積を誇るロリ地方は、マイルドな気候で知られるエリア。
大地を真っ二つに引き裂くように南北に連なるデベド渓谷を中心として、小規模の町や村が点在しています。
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そんなロリ地方は、アルメニアの中でも独自の歴史を持つ地域。
中世には独立国として存在していたほどで、当時の栄光の名残が現在でも感じられます。
また、すぐ北隣にはジョージアとの国境があり、およそ800年前にコーカサス一帯で絶大な力を誇ったジョージアの支配下にいち早く入ったのも、ロリ地方がユニークである理由。
アルメニア他地域とは少し異なる、ジョージア風のキリスト教文化や建築の影響が強く見られるのです。
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また、緑あふれる大自然の風景もロリ地方の魅力の一つ。
アクティブ派の旅行者は大満足の絶景トレッキング天国としての顔も持ち合わせています。
というわけで、今回の記事はのぶよが愛してやまないロリ地方の観光情報を総まとめしたもの。
【1ページ目:サクッと知りたい人向け情報】
・3つのキーワードで知るロリ地方の歴史
・3つのエリア別!ロリ地方の見どころ20選
①デベド渓谷エリア
②ステパナヴァン周辺エリア
③ヴァナゾル周辺エリア
・ロリ地方の名物グルメ
【2ページ目:実際に行く人向け情報】
・ロリ地方観光のプランニングのコツ
→観光に必要な日数
→観光のベストシーズン
→観光時の注意点
・ロリ地方内の近郊交通・他都市からのアクセス
→ロリ地方内の近郊交通
→アルメニア他エリアからのアクセス
独自の歴史や伝統文化も、圧巻の中世修道院の数々も、名物グルメも、大自然の絶景も…
アルメニア旅行の堂々たるハイライトとなるエリアなので、ぜひ多くの人に訪れてもらって感動してほしいです!
ロリ地方の歴史を知るための3つのキーワード
ロリ地方は、アルメニアの中でも独自の歴史や文化を持つエリア。
何も知らずに旅するよりも、あらかじめこのエリアについてザックリと知っておく方が、より充実した旅になるはずです。
ロリ地方の歴史や文化を理解するためには、3つのキーワードを最低でも覚えておきましょう。
- 979年~1118年中世アルメニア王国分裂→「タシル・ジョラゲット王国」時代
- 1184年~1240年「ザカリアン一族」の活躍で中世グルジア王国領に
- 20世紀後半セルゲイ・パラジャーノフ作品「ざくろの色」のロケ地に
ロリ地方を知るためのキーワード①「タシル=ジョラゲット王国」
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今から1000年以上前の10世紀に黄金時代を迎えた中世アルメニア王国でしたが、領土が広がると統治が難しくなるのは世の常。
広大な領地は次第にいくつかの小王国に分裂しはじめ、群雄割拠の時代が始まっていきます。
979年にここロリ地方は、キューリケ1世(KyurikeⅠ)の下でそれまでの中世アルメニア王国と決別。
「タシル=ジョラゲット王国」(Kingdom of Tashir-Dzoraget)として、晴れて独立国となります。
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1025年にはロリ(Lori)と名付けられた要塞都市が完成し、その後1065年にはタシル・ジョラゲット王国の首都として定められました。
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ロリ要塞を中心に発展を続けていたタシル=ジョラゲット王国でしたが、中央アジアからやってきたイスラム王朝・セルジューク朝の侵攻をたびたび受けるようになり、国力はみるみる衰退していきます。
独立から200年余りが経過した1118年には、完全にセルジューク朝の支配下に入ることとなり、ロリ地方のキリスト教文化はいったん幕を閉じることとなりました。
ロリ地方を知るためのキーワード②「ザカリアン一族」
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ロリ地方を支配下においたセルジューク朝を撃退したのが、すぐ北隣の中世グルジア王国(現在のジョージア)で活躍していたアルメニア系の一族・ザカリアン一族(the Zakarians)でした。
ザカリアン一族の活躍はすさまじく、12世紀半ば~後半にかけてロリ地方などアルメニア北部からセルジューク朝を撃退。
ザカリアン一族によってイスラム勢力から解放された領土は中世グルジア王国に併合される形となり、キリスト教文化が再びもたらされます。
1184年には、中世グルジア王国の最盛期を築いたタマル女王が国王となり、ロリ地方のキリスト教文化にも再び黄金時代がやってきました。
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(ソース:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Georgian_empire_with_tributaries.png )
ザカリアン一族の中でも目覚ましい活躍をしたのがイヴァネ・ザカリアン(Ivane Zakarian)という人物。
セルジューク朝支配時代に荒廃した、ロリ地方の修道院の再建・補修を行いました。
イヴァネ・ザカリアンはアルメニア系でありながらもジョージア正教会で洗礼を受けた人物で、その信仰はカルケドン派(ビザンツ帝国で主流だったキリスト教の一派)の影響も受けていたと言います。
そのため、当時イヴァネが建設・再建を指示したロリ地方の修道院は、伝統的なアルメニア教会の建築・装飾とは異なるジョージア風/ビザンツ帝国風の内装・外観のものが多いのです。
その最大の特徴が、色とりどりのフレスコ画で聖堂内部を覆ったこと ▼
アルメニアの一般的な修道院では、聖堂の内壁は石を削っただけのむき出しの状態であるのが普通。
いっぽうで、アフタラ修道院やコバイル修道院、ハフパット修道院など、イヴァネが再建に関与したロリ地方の宗教建造物には当時のフレスコ画が残るものが多いのです。
ロリ地方を知るためのキーワード③「ざくろの色」
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中世ジョージアと中世アルメニアのキリスト教文化が見事に融合したロリ地方でしたが、近代に入るとその複雑な歴史は両国の領土問題に発展します。
1918年には両国間の戦争に発展し(グルジア・アルメニア戦争)、その結果アルメニア領となったロリ地方。
この複雑な歴史を持つ地をメインの舞台として撮影されたのが、ソ連時代の映画「ざくろの色」です。
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監督のセルゲイ・パラジャーノフは、アルメニア人でありながらジョージア生まれという複雑なバックグラウンドを持つ人物。
アルメニアに位置していながらもジョージアの文化も入り混じるロリ地方に、何か特別なものを感じたのかもしれません。
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世界的にも成功を収め、パラジャーノフの名を世に知らしめた「ざくろの色」。
ロリ地方に点在する5つの修道院がロケ地となって作品内の各シーンに登場し、パラジャーノフ作品のファンには必見です。
ロリ地方のエリア別観光スポット20選
ロリ地方の3つの観光エリア
アルメニア北部の広大なエリアを占めるロリ地方。
当記事ではロリ地方を3つのエリアに分けて、観光スポットを紹介していきます ▼
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デベド渓谷エリア
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ロリ地方の中でも観光のハイライトとなる見どころがギュッと詰まっているのが、北部のデベド渓谷エリア。
大地が割けたような深い谷間を縫うように、中世の修道院が点在しています。
ハイキングコースも数多く、アクティブ派の旅行者にもおすすめ。
アルメニア全体を見ても、最もポテンシャルの高い観光エリアだと思います。
①アラヴェルディ
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デベド渓谷エリア観光&滞在の中心となるのが、アラヴェルディ(Alaverdi / Ալավերդի)の町。
古くはエレバンとトビリシを結ぶ交易路の中継地点として、近代では銅鉱山があることで栄えに栄えた町でしたが、数年前の銅山の閉山とともに人口が一気に減少し、経済は急速に衰退。
そこはかとない退廃的な雰囲気が町全体に漂っていますが、それがむしろノスタルジックで不思議な魅力を放ちます。
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町自体には観光スポットは限られてはいるものの、この時が止まったような独特の雰囲気こそがアラヴェルディの最大の魅力。
町はずれには800年前建造のサナヒン橋が現存しており、世界遺産に指定されていることでも有名。
この場所の歴史を物言わずに伝える存在です。
②サナヒン修道院 世界遺産
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谷底に位置するアラヴェルディの町から、南側にそびえる断崖絶壁を登った先にあるのが、サナヒン修道院(Sanahin / Սանահին)です。
UNESCOの世界遺産に登録されている場所の一つで、10世紀~12世紀(1000年前~800年前)にかけて建設されもの。
その外観の圧倒的なたたずまいも内部の精巧な装飾も、中世アルメニアの建築の良いところをすべて詰め込んだ傑作だと言えます。
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黄金時代には、学問の中心として多くの人々が集まったサナヒン修道院でしたが、中世後期には異民族の侵入にともなって徐々に衰退していきます。
それでも聖地としての機能を失うことはなく、現在に至るまで人々の信仰を一身に受ける存在。
宗教の違いに関係なく、敷地に一歩立ち入るだけで神々しさを肌で感じられるはずです。
③サナヒン村
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「サナヒン修道院のお膝元」のような小さな集落が、修道院と同名のサナヒン(Sanahin / Սանահին)という村。
デベド渓谷周辺地域で最も早い時期に集落が形成された場所で、千年前にサナヒン修道院が完成したことをきっかけとして、多くの人が集まってきたのだそうです。
どこまでも素朴な村の風景はもちろん、見どころがいくつか点在している点も見逃せません。
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特に、サナヒン村が生んだ超有名人「ミコヤン兄弟」の功績を讃える小さなミュージアムはサナヒン村の定番スポット。
アルメニア人旅行者をはじめ、旧ソ連諸国からの旅行者にも人気となっています。
④ハフパット修道院 世界遺産
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サナヒン修道院とともに世界遺産に登録されているハフパット修道院(Haghpat Monastery / Հաղպատավանք)は、サナヒン村を遠くに望む高台に建つ中世の建造物。
建設当初からサナヒン修道院とはライバル関係にあったハフパット修道院には、まるで「呪われた聖地」であるかのような伝説がいくつも根付いています。
ハフパット修道院の建築様式はとにかく素晴らしく、世界遺産となっているのも納得。
アルメニア全体を見ても指折りの傑作だと思います。
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ハフパット修道院の敷地内で最も古い建造物である聖ヌシャン教会の内部は、900年前からそのままのフレスコ画が圧巻。
デベド渓谷の深い谷間を一望する絶好のロケーションも含めて、じっくりとその魅力を堪能したい極上の聖地です。
⑤世界遺産トレイル
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世界遺産に指定されているサナヒン&ハフパットの二つの修道院の間には「UNESCO世界遺産トレイル」と呼ばれるトレッキングコースが新しく整備されました。
総距離8.5km / 所要時間4時間ほどの道のりで、初心者~中級者レベル。
世界遺産の二つの修道院を一日でまわれるのはもちろん、デベド渓谷の絶景を眺めながら歩けるのも魅力的なトレッキングコースです。
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まだオープンしたばかりのトレイルということで知名度はほとんどありませんが、今後注目されること間違いなし。
コース上には二つの修道院以外にもいくつかの見どころが点在しており、アクティブ派の旅行者なら絶対に楽しめるはず。とにかくおすすめです!
⑥アフタラ修道院
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サナヒン修道院、ハフパット修道院と並んで「デベド渓谷三大修道院」を構成するのがアフタラ修道院(Akhtala Monastery / Ախթալայի վանք)。
三つの修道院の中では最も個人でのアクセスがしにくい場所にありますが、わざわざ足をのばす価値はあります。
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アフタラ修道院を特別なものにしているのが、聖堂内部をびっしりと覆いつくす色とりどりのフレスコ画。
ロリ地方の修道院には、お隣ジョージアの影響を受けてフレスコ画が描かれたものが目立ちますが、アフタラ修道院のフレスコ画以上に美しくて規模が大きなものはありません。
さまざまな伝説も息づく聖地は、断崖絶壁に建つロケーションも圧巻のひとこと。
デベド渓谷エリアで絶対にはずせないスポットです。
⑦アルドヴィ村
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一見すると「よくあるアルメニア地方部の寒村」といった雰囲気のアルドヴィ(Ardvi / Արդվի)は、1300年前の聖人にまつわる伝説が色濃く残る地。
村はずれに建つ修道院は、セルゲイ・パラジャーノフ監督の「ざくろの色」のロケ地になったことでも有名です。
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修道院以外にも、この地に伝わる聖人伝説の舞台の一つである大岩「オジ・ポルト」も必見。
地元では「絶対に腐らない」と言われる魔法の水が湧く場所で、科学的にも金や銀など貴重なミネラルが含まれていることが証明されているのだそうです。
⑧ホロマイリ修道院(上院)
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デベド渓谷の深い谷間ギリギリの場所に建つホロマイリ修道院(Horomayri Monastery / Հոռոմայր)の上院は、黒と黄色の二色の外壁が独特の小さな聖地。
まるで映画のワンシーンになりそうな絵になるたたずまいが素敵で、内部の造りも他では見られないものとなっています。
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ホロマイリ修道院は、崖の上に建つこちらの上院と、崖の遥か下にへばりつくように建つ下院の二つのパートから構成されています。
上院と下院は断崖絶壁に隔てられ、お互いに行き来不可能というのも不思議。
アルメニア広しと言えども、このような構造の修道院は他にないと思います。
⑨オズン教会
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デベド渓谷エリアで最古の宗教建造物が、ピンク色の外壁が美しいオズン教会(Odzun church / Օձունի տաճար)。
5世紀~6世紀頃(1600年前~1500年前)にはこの場所に教会が建設されていたと言われています。
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完璧な左右対称の造りや内部の構造などを含めて、オズン教会はアルメニアの教会建築というよりもお隣ジョージアの教会建築が多く取り入れられたもの。
周辺の山々の風景も含め、まるでRPGの世界から飛び出してきたかのような印象を与えます。
⑩聖なる谷トレイル
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アルドヴィ~ホロマイリ修道院(上院)~オズン教会を結ぶのが、聖なる谷トレイル。
コース上にはこの地域の聖人の伝説が息づくスポットが目白押し。
デベド渓谷の断崖絶壁の上側を歩くコースで、開放感あふれる風景がずっと続きます。
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聖なる谷トレイルで歩くエリアには、古くから伝わる習慣や伝統が色濃く残っているのも特徴的。
都市部ではもう見られなくなった、教会の前で動物を屠殺する「マタグ」という儀式が現在でも行われており、実際に目撃したときはとにかくびっくりしました。
⑪コバイル修道院
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数々の見ごたえ抜群な見どころが点在するデベド渓谷エリアですが、地元の人が口をそろえて「あそこは絶対にいけ!」とすすめてくる場所があります。
それが現在は廃墟となっているコバイル修道院(Kobayr Monastery / Քոբայրի վանք)。
山の中腹に位置する修道院から眺める、デベド渓谷のパノラマには感動すること必至。
それ以上にこの場所を特別なものとしているのが、半壊した聖堂内に描かれたフレスコ画です。
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アルメニアの真髄は、こうした半壊した修道院が醸し出す美しさにこそあるというもの。
コバイル修道院が建つ崖は崩落のリスクが高まっているそうで、もしかすると近い将来には見られなくなってしまうかも。
栄枯盛衰の理を体現しているかのような聖地の姿を、ぜひ今のうちに目に焼き付けておきましょう。
⑫ホロマイリ修道院(下院)
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デベド渓谷を一望する山の中腹にぽつりと建つホロマイリ修道院(Horomayri Monastery / Հոռոմայր)の下院は、徒歩でのアクセスしかできないこともあり「知る人ぞ知る穴場」といった雰囲気。
かつて修道僧たちが生活スペースとした洞窟がいくつも掘られており、中世の鐘楼や食堂の建物などが残っています。
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人の手が加えられなくなった聖地は、自然に吞み込まれていくのをただ待っているだけのよう。
すぐ真下に大きく口を開ける谷底を眺めていると、どうして昔の人がこの場所に聖地を築こうと考えたのか何となく理解できるような気がします。
⑬山羊の谷トレイル
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コバイル修道院とホロマイリ修道院(下院)にアクセスするなら、山羊の谷トレイルと呼ばれるトレッキングコースを歩く必要があります。
デベド渓谷の谷底から崖の上に向かって歩いて行くコースで、距離8.0km/3時間半~4時間ほど。
ずっと絶景の渓谷美を眺めながらのトレッキングコースは、アルメニアの中でも髄一の美しさです。
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コース名の由来となった野生の山羊の群れに出会える可能性も十分。
中世の修道院も大自然も一度に楽しむことができ、デベド渓谷エリア観光の真のハイライトだと思います。
ステパナヴァン周辺エリア
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目が眩みそうなほどの断崖絶壁の上に築かれた町・ステパナヴァン(Stepanavan / Ստեփանավան)の周辺は、ジョラゲット川が形成する深い渓谷に沿った風光明媚なエリア。
ロリ地方が独立国であった時代の首都・ロリ要塞や、アルメニアがソ連支配に入るきっかけとなった洞窟など、中世から近代にかけてこの国の歴史を大きく動かしたスポットが点在しています。
⑭ロリ要塞
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ステパナヴァン周辺エリアで最大の見どころの一つが、ロリ要塞(Lori Berd / Լոռի բերդ)。
およそ900年前、ロリ地方が「タシル=ジョラゲット王国」として独立国だった時代に、首都とされた要塞都市の跡地です。
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当時の浴場跡や教会跡などが残されており、断崖絶壁の渓谷美も必見!
かつて繁栄を極めた都市も、今や一面の野原…
「栄枯盛衰」を具現化したような雰囲気に、どっぷりと浸ることができる場所です。
⑮800年前の石橋
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ロリ要塞の北側、ウルット川が形成する渓谷には、およそ800年前に建設された石橋が残っています。
要塞内外を移動する人々の往来を簡単なものとするために、当時はいくつもの石橋が築かれたそう。
現在残るのはこの一本だけとなっています。
長さ3.8m/幅2.8mのアーチ型の石橋は、なんと800年前のオリジナルのもの。
近年に入っての修復等はされていない点も驚きです。
ロリ要塞が町としての機能を失った結果、この石橋もその役割を失い、いつしか人々に忘れ去られた存在となり果てました。
時が経とうとも変わらぬ川の流れる音と、鳥の鳴き声だけが時折響く谷底で、当時の繁栄を静かに伝えている場所です。
⑯聖ニコライ教会
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ロリ要塞から深い谷間を挟んだ対岸に位置するアムラキッツ村に建つのが、180年前に建てられた聖ニコライ教会(Church of St. Nicholas Wonder-worker)。
アルメニアがロシア帝国支配下にあった1840年代の建造で、かつてはロシア正教の教会として利用されていたもの。
1988年のスピタク大地震で半壊してしまい、以後放置された状態となっています。
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まるでお化け屋敷のような外観が話題を呼び、アルメニアでは結構な有名スポットなのだとか。
教会が位置するアムラキッツ村の住人は大半がロシア系。
民家の造り一つを見ても、アルメニアの他の地域と異なっていて興味深いです。
⑰共産党員の洞窟
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ステパナヴァンの町はずれ。ジョラゲット川の深い谷間を望む場所に、ひっそりと口を開けるのが共産党員の洞窟(Communist’s Cave / Mayori Dzor)と呼ばれる場所。
1910年代にロシア帝国支配下にあったアルメニアでは、政権転覆を狙ったソビエト共産党の活動家が革命の準備を着々と行っていました。
その活動家の一人が仲間を集めて潜伏し、革命の計画を立てていたのがこの天然の洞窟だったのです。
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結果として1922年にアルメニアはソ連の統治下に入ることとなり、革命家たちの思惑通りに。
その意味では、70年近く続いたアルメニアのソ連時代のはじまりは、この小さな洞窟だったと言えるのかもしれません。
アルメニアの近代史を動かした小さな洞窟は、人々に忘れ去られたまま、深い谷間にぽっかりと口を開き続けています。
ヴァナゾル周辺エリア
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アルメニア第三の都市・ヴァナゾルの周辺は、ロリ地方の中でも最も標高が高い場所に位置するエリア。
美しい山々に囲まれた町の風景や、ソ連時代から何も変わらないレトロな町並みが魅力的です。
ヴァナゾルはアルメニアの交通のハブとしての機能を持つ町。
他エリアとの移動の便が良いので、ロリ地方の滞在拠点としてもおすすめです。
⑱ヴァナゾル
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アルメニア第三の都市・ヴァナゾル(Vanadzor / Վանաձոր)は、ロリ地方への玄関口となる小都市。
パッとした見どころに欠けるためか、多くの旅行者には素通りされてしまいがちな町です。
ヴァナゾルの面白いところは、町全体を包み込むようなソ連レトロな風景。
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こじんまりとした中心街を持つヴァナゾルには、良い感じのローカル食堂やレトロなカフェ、昔ながらの市場もあり、とにかく居心地抜群。
ロリ地方南部の滞在拠点にはピッタリな町です。
⑲アルテック子供キャンプ
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ヴァナゾル中心街から南へ2kmほど。小高い丘の中腹にあるのが、ソ連時代に造成されたアルテック子供キャンプ(Artek Children’s Camp / Արտեկ մանկական ճամբար)。
アルテック子供キャンプは、ソ連時代の青少年たちが学びとレクリエーションを兼ねたサマーキャンプのために訪れるための場所でした。(日本で言うと、ボーイスカウトとか子供会みたいな)
アルメニアにはこうした子供キャンプがいくつもあったのですが、ソ連崩壊とともにすべて放置されることとなり、どこも廃墟と化してしまいました
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ソ連崩壊から30年余り。
たったそれだけの期間人の手が入らないだけで、ここまで一つの建物が荒れ果ててしまうことに驚きますし、わずかに残された面影や残骸を通して当時ここがどんな場所だったのかイメージするのも(のぶよは)面白いです。
⑳フィオレトヴォ
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ヴァナゾルの東15kmほど。ロリ地方らしく緑でいっぱいの田舎風景が広がるエリアにあるのが、フィオレトヴォ村(Fioletovo / Ֆիոլետովո)。
フィオレトヴォの村人は、200年ほど前にこの地に移住してきたロシア系の人々。
彼らは「マロカン(牛乳を飲む人)」と呼ばれ、独自の信仰や生活スタイルをつらぬいています。
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村人の外見もアルメニア人とは全く異なり、自給自足が中心のライフスタイルが21世紀になっても守られているフィオレトヴォ。
カラフルで可愛らしい民家が草木で彩られた風景は、まるでこの世の楽園のように見えました。
ロリ地方の名物グルメ
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アルメニアは面積が小さい国ではあるものの、地域ごとに異なる食文化が根付いています。
ここロリ地方では豆や穀物など保存がきく食材を多用した伝統料理がいくつも存在し、どれも見た目は茶色くて地味ではあるものの、素朴な温かみにあふれたものばかり。
せっかく滞在するなら、この地域伝統の味にも挑戦してみるのがおすすめです。
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デベド渓谷エリアの中心的な町であるアラヴェルデイ近郊には、ロリ地方名物をたくさん取り扱う名物レストランも。
リーズナブルに郷土料理が食べられることで、地元の人からも根強く支持されています。
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