こんにちは!アルメニア南部をのんびりと開拓中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
個人的に、今回のアルメニア南部旅で最も楽しみにしていたことがあります。
それが、深い山々に囲まれたヴォロタン渓谷を歩いてまわること。
しかしながら4月ということで、春の天気はとても不安点。
なかなかまとまった晴れの日が続くことがなく、拠点としていたゴリスの町で待ちぼうけていました。
そしてようやく…待ち望んでいたプランを実現することができました。
それが、タテヴ修道院~ゴリス間をむすぶ3日間のトレッキングです。

このトレッキングコースは、近年アルメニア南部のシュニク地方の観光局が旅行者にPRしている「レジェンド・トレイル=伝説の道」と呼ばれるルートの一部です。
レジェンド・トレイル自体はゴリス~タテヴ~カパンまでの超ロングトレイルで、1週間~10日間の行程。
いくらなんでもそんなに歩けないので、その中でも最も見どころが豊富で風景が美しいとされる3日間分の区間に絞って挑戦してきました。
その道のりは、まさに感動の風景の連続。
ヴォロタン渓谷が見せる大自然の美しさはもちろん、この地域の歴史を現在に伝える珠玉のスポットが点在しており、アルメニア南部エリアの隠れたハイライトとなる風景を150%満喫することができました。


「3日間のトレッキング」と聞くと、多くの日本人は敬遠してしまいがち。
いやほんとに、日本人は歩くの嫌いすぎてびっくりします…のぶよ的に日本人=世界で最も歩くことを忌避する民族のような気も…
しかし。今回紹介する3日間トレッキングは、みなさんが想像しているようなハードなものではありません。
各日に宿泊する村にはゲストハウスがあり食事も提供してくれるため、キャンプ用品も食料の準備も必要なく最低限の荷物だけで歩くことができるのですから。
それに加えて、トレッキング自体の難易度もそこまで高くありません。
初心者でも問題なく歩けますし、危険を感じる箇所もほぼないです。

というわけで今回の記事は、タテヴ修道院~ゴリス間の3日間トレッキングの詳細な情報を解説するもの。
コース上の見どころをサクッと知りたい人にはもちろん、実際にトレックに挑戦する人向けのコース情報も徹底的に網羅しています。
もはや日本語でも英語でも情報がないエリアですが、とにかく本当に感動の連続の3日間でした。
本記事のように3日間の日程で歩くことも、どこか1日分だけ歩くことも可能なので、ぜひとも参考にして挑戦してみてほしいです!
タテヴ~ゴリス間3日間トレック(伝説の道)とは?

タテヴ~ゴリス間の3日間トレックに関する情報は、日本語はおろか英語でもネット上にはほとんど出ていません。
のぶよ自身も実際にトレックの準備や計画の際に、あまりの情報の少なさに愕然としましたから…
というわけで、まずは3日間トレックの基本的な情報をざっと解説していきます。
タテヴ~ゴリス3日間トレックマップ
オレンジ:2日目のコース&ポイント
青:3日目のコース&ポイント
紫:ゲストハウス
赤:レストラン
茶色:商店
黄色:ゴリス~カパン間マルシュルートカ停車ポイント
黒:注意すべき地点
コース概要

すでに触れた通り、本記事で紹介しているタテヴ~ゴリス間の3日間トレックは、ゴリス~タテヴ~カパン間に敷かれた「レジェンド・トレイル」と呼ばれるルートの一部区間です。
3日間のコース全体の基本情報はこんな感じ。▼
・距離:40.8km
・所要時間:3日間
・高低差:▲1260m ▼1310m
・難易度:★★★☆☆
40kmを3日間に分けて歩くという行程で、難易度自体はそこまで高くありません。
危険な箇所も少なく、初心者でも時間をかければ問題なく歩くことができます。
トレイルの難易度

3日間トレッキングの難易度は、各日によって大きく異なります。
最も難易度が高いのは初日。
高低差500m以上あるヴォロタン渓谷の谷底まで一度下り、再び同じ高低差を登っていかなければなりません。
2日目に関しては距離も短く、高低差も控えめなので楽勝。
3日目は距離こそ最長ですが、大半は舗装道路に沿って歩いていくだけの道のりなので、体力的にはそこまできつくありません。
歩く方向

3日間トレックは、ゴリス→タテヴ方向/タテヴ→ゴリス方向のいずれでも歩くことができます。
しかしながら、個人的には本記事で紹介している通りのタテヴ→ゴリス方向に歩くのが断然おすすめ。
その理由はいくつかありますが、3日間の行程のうち最も難易度が高いタテヴ~ハリゾール間の道のりを、体力が100%ある初日に歩くことができるため。
反対方向で歩くと、この区間が最終日になってしまうため、かなり疲れた状態で最難関の道のりを歩くことになってしまいます。
また、全体的にタテヴ→ゴリス方向で歩く方が下り坂が多くなる点も嬉しいです。
伝説の道トレック1日目:タテヴ村~ハリゾール村

3日間トレックの初日は、タテヴ修道院があるタテヴ村からヴォロタン渓谷を越え、ハリゾール村まで歩くコース。
歩く距離が長め&高低差も大きいため、3日間の中で最も難易度が高い日となります。
・距離:12km
・所要時間:6時間~7時間
・高低差:▲337m ▼617m
・難易度:★★★★☆


1日目のコース上には、3日間トレッキング全体を通してのハイライトとなる見どころがいくつも点在しているのもポイント。
各スポットを十分に満喫するためにも、できるだけ早い時間に歩きはじめるのがおすすめです。

まずは、タテヴ修道院を有するタテヴ村【マップ 緑①】を出発。
深い谷底にひっそりとたたずむタテヴの大エルミタージュまで、ひたすら下っていきましょう。
・距離:4.3km
・所要時間:1時間半
・高低差:▼594m
・難易度:★★☆☆☆
タテヴ村~タテヴの大エルミタージュ間は、ヴォロタン渓谷の谷底に向かってひたすら下っていくルート。
まずはタテヴ村を出発し、谷底方面へと走る幹線道路を目指しましょう。

幹線道路に合流して100mほど道なりに下ると、徒歩コースの入口となる分岐点1【マップ 緑②】に差し掛かります。▼


分岐点1からは、とにかくずっと下り坂。
勾配はそこまできつくないですが、歩きにくい箇所もいくつかあるので気を付けながら進みましょう。
しばらく道沿いに下っていくと、タテヴ村から流れ出した水が小さな滝を形成しているポイントに到着します。▼

ここが分岐点2。【マップ 緑③】
マップアプリを頼りに、さらに谷底へと下る山道を進みます。


進行方向右手には、ヴォロタン渓谷の美しい風景と、うねうねと蛇行しながら連なる幹線道路が。
1日目の後半ではこの幹線道路に沿って登っていくことになります(一度下ってまた登るのはなんだかくやしいけど)。

しばらく下っていくと、最初の目的地であるタテヴの大エルミタージュが目に入ってきます。▼

タテヴの大エルミタージュ

切り立った崖に両側を挟まれた深い谷底にひっそりと残るのが、タテヴの大エルミタージュ(The Great Hermitage of Tatev/Տաթևի մեծ անապատ)。【マップ 緑④】
長方形の形をした敷地は石壁に囲まれ、石造りの大きな教会が遠くからでも見えます。
まるで自然に呑み込まれそうなたたずまいのこの建造物は、17世紀に建設された聖地。
現在は完全に打ち捨てられて無人となっていますが、かつては数百人の層がこの地で生活をしていたのだそうです。


もともとこの場所には、現在の大エルミタージュよりも小さな修道院が建っていました。
しかし、1658年の大地震によって修道院は大きな被害を受けてしまい、その後少し場所を移して再建されたのがこの大エルミタージュです。
「エルミタージュ」とはフランス語由来の単語で「隠れ家」の意味。
その名の通り、深い谷底に位置するタテヴのエルミタージュは、僧たちにとって隠れ家そのものの場所だったのでしょう。

敷地内には大きな教会とそれに付随するチャペルがあり、どちらも自由に見学することができます。
およそ350年前の建物というわけで、意外にもしっかりとしたままの造りで残されています。


大エルミタージュの敷地内には、かつてこの地で生活をしていた僧たちの住居や生活スペースがそのままに残されています。
いずれも敷地を取り囲む城壁に掘られた穴のような空間となっており、内部で迷路のように繋がっているのが特徴的です。▼

かつて祈りの場として機能していた時代がイメージできないほどに、人っ子ひとりいない大エルミタージュは静寂そのもの。
春の緑に覆われたかつての聖地は、なんとも言えないミステリアスな美しさを放っていました。
・距離:1.5km
・所要時間:45分
・高低差:▲54m
・難易度:★★★★☆
タテヴの大エルミタージュからデビルズ・ブリッジまでは、ヴォロタン川に沿った道をゆくだけ。
大エルミタージュを出てすぐの場所に標識があるので分かりやすいです。▼

はじめは平坦な山道が続き、周囲の渓谷美を楽しみながら快適に歩くことができます。▼


大エルミタージュを出ておよそ800mほどの場所で、ヴォロタン川の川岸に到着します。▼

地図アプリを見ると、この川岸で対岸に渡るルートと、対岸に渡らずにそのまま進むルートに分かれています(標識なし)。
対岸に渡れそうな場所がなかったため、のぶよは後者のルートを選んだのですが、これがかなりの険しい道でした。【マップ 黒】▼


かなりの急斜面を登らなければならず、道なき道となっているので、ここが相当な難所。
川を渡って対岸に出るルートの方が良いかもしれません(まあそっちは行ってないのでちゃんと道があるのかは謎)。
ようやく登り切ってから少し歩くと、山道が幹線道路に合流します。▼

ここまで来れば、次のポイントであるデビルズ・ブリッジは目と鼻の先。
幹線道路に沿って下っていくと、谷の最低部にちょっとした駐車場があるのですぐにわかります。▼

デビルズ・ブリッジ

トレック1日目のハイライトとなる見どころが、デビルズ・ブリッジ(Devil’s Bridge/Սատանի կամուրջ)。【マップ 緑⑤】
これまで歩いてきたヴォロタン渓谷の源流となる場所で、深い谷の谷底部分を天然の洞窟が繋ぐという、なんとも不思議な自然の造形が見られる場所です。


デビルズ・ブリッジはちょっとした遊歩道のようなものが整備されており、両側を高い崖に囲まれた渓谷美がすでに圧巻。
しかし、この場所の魅力はまだまだこの先にあります。

デビルズ・ブリッジのハイライトとなるのが、渓流の先に広がる洞窟。
洞窟内には天然の温泉が湧き出しており、温泉のミネラル成分が凝固して形成された石灰棚や鍾乳石の風景がまるで悪魔が作り出したように見えることが、「デビルズ・ブリッジ=悪魔の橋」の由来なのです。
しかし、この洞窟へのアクセスには大きな問題が。
洞窟までは遊歩道は敷かれておらず、ロープを伝って渓谷沿いに下りなければならないのです。


この断崖絶壁に垂らされた一本のロープだけが、洞窟へとアクセスする方法。
そのため、高所恐怖症の人や足腰に自信がない人はまずこれより先へは進めません。
ほぼ直角の恐怖の崖をどうにか下り、渓谷沿いを少し進んだ先には、デビルズ・ブリッジ観光のハイライトとなる洞窟がぽっかりと口を開けています。▼

デビルズ・ブリッジの洞窟は、外から眺めるだけでなく中に入ることも可能。
洞窟は入口部分で二手に分かれており、右手すぐの場所には温かい水が溜まった温水プールがあります。▼


温水の温度はかなりぬるめで、30℃代前半といったところ。
夏場ならかなり快適に入浴できますが、4月の入浴は正直かなり寒かったです。
鉄っぽい匂いはそこまで感じず、微炭酸のお湯は滑らかな肌触り。
ここの温泉は肌にとても良いことが知られており、飲めば「万病に効く」と言われているのだそうです。
冒険者気分を抱かせる洞窟風呂を満喫したあとは、引き続き洞窟探検へ。
入口で二手に分かれていた洞窟の左手方向へと進んでいきます。▼

洞窟の左手は、温水ではなく冷たい水が形成する水たまりに沿って広がる空間。
鍾乳石から絶え間なく垂れ落ちる水のせいで洞窟内は常に湿っているので、注意しながら進みます。
狭い洞窟内で体をどうにかくねらせながら進んだ先には、小さな石灰棚が鎮座する空間が。▼


優雅なたたずまいの白い石灰棚にはライトブルーに輝く水が溜まって、とても幻想的な風景。
ごつごつした鍾乳石の姿も相まって、地底世界さながらのミステリアスな空間が広がっています。
・距離:4.0km
・所要時間:1時間15分
・高低差:▲315m
・難易度:★★★☆☆
デビルズ・ブリッジの異世界感あふれる風景を満喫したら、再び歩き出すとき。
ハリゾール村方面へと続く幹線道路沿いにずっと歩いていくだけのコースです。

デビルズ・ブリッジを出発してすぐの場所にはツァクット教会【マップ 緑⑥】という廃教会がぽつりとたたずんでいます。
眺めも良いですし、ちょうどお昼ご飯の時間になっていると思うので、ここでひと休みしていくのが良いでしょう。▼


ツァクット教会でひと休みしたら、あとはずっと幹線道路沿いに歩くだけ。
交通量は比較的多いですが、見通しが良い道なので危険は少ないです。

一つ注意したいのが、幹線道路沿いをしばらく歩いた場所にある未舗装道路への分岐点。【マップ 黒】
微妙にショートカットになっており、マップアプリではこの道を行くように言われますが、絶対にやめておきましょう。▼


未舗装道路の大部分は普通の山道で、ショートカットできて得した気分になりますが、最後の数百メートルはひたすらに茨が生えまくりあげた、文字通りの「茨の道」となります。
茨を避けようにも、右側は断崖絶壁/左側は急斜面となっているため、迂回するのも至難の技。
のぶよは一度来た道を絶対に戻りたくない主義なので崖をスパイダーマンのごとく這って進みましたが、正直まじで危ないので絶対にやめましょう。大人しくはじめから幹線道路沿いをずーっと歩くのが正解です。

延々と続くゆるやかな上り坂が平坦になると、右手に見えてくるのがハリゾールビューポイント。
山々を背景にぽつりとたたずむ建造物を目指してもうひと踏ん張りです!
ハリゾールビューポイント

ヴォロタン渓谷の深い谷間を一望する崖の上に立つのが、ハリゾールビューポイント。【マップ 緑⑦】
谷の反対側に聳える山々を背景に鐘楼のような建造物がぽつりとたたずむ姿は、どこまでも絵になります。
現在ビューポイントに立つ建造物は近年設置されたものですが、この場所にはもともと鐘楼が設置されていました。
渓谷を一望できるロケーションが注目され、万が一敵が侵入して来た際には鐘を鳴らして知らせたのだそうです。
その鐘の音は谷の反対側にある村に届き、その村でもまた鐘を鳴らす→さらに先の村に鐘の音が届く→…といったようなリレー形式の防衛システムが構築されていたのだそう。
最終的に鐘の音はタテヴ修道院に届き、修道僧たちに敵の襲来を知らせたのだそうです。


現在ではそうした防衛的な役割を失ったハリゾールビューポイント。
ヴォロタン渓谷を一望するパノラマと、神秘的な鐘楼の姿が、観光客に人気の写真スポットとなっています。
・距離:3.4km
・所要時間:50分
・高低差:▲84m
・難易度:★☆☆☆☆
ハリゾールビューポイントから本日の宿泊地となるハリゾール村までは、引き続き幹線道路沿いを歩いていくだけ。
ゆるやかな坂道が続くだけの簡単な道のりです。

しばらく歩くと、進行方向に村のようなものが。
あれが本日のゴールであるハリゾール村です。▼


1日目の宿泊:ハリゾール村

3日間トレック1日目の宿泊地となるのがハリゾール村(Halidzor/Հալիձոր)。【マップ 緑⑧】
ヴォロタン渓谷を望む小さな平野を利用して造成された集落で、人口数百人ほどの小さな集落といった風情です。
ハリゾールは、2016年に開業したケーブルカー「ウイングス・オブ・タテヴ」の発着ポイントとなる村。
ケーブルカーを利用する場合は、タテヴ修道院観光の拠点としても便利な村です。

ケーブルカーマネーでさぞ栄えているのかと思いきや、ハリゾール村自体はとても素朴な寒村といった雰囲気。
ケーブルカー乗り場が村からやや離れた場所に位置していることもあってか、村自体にはあまり観光客マネーが落ちないのかもしれません…
ハリゾール村には数軒の小さな商店があるだけで、飲食店はゼロ。
夕食や朝食は宿泊先のゲストハウスで用意してもらうのが基本となります。

もうすでにかなり歩いてきたので疲れているかもしれませんが、せっかくならあと少し歩いてハリゾール村の全景を望めるポイントまで行くのがおすすめ。【マップ 緑⑨】
小さな民家がずらりと並ぶ村の全景はもちろん、その上空を飛び交うケーブルカーの姿も間近に見ることができます。
ハリゾール村の宿情報

ハリゾール村には数軒のゲストハウスがあり、どこも一般の民家の一部を旅行者向けに開放しているスタイル。
どの宿でも食事をつけてもらうことができ、アルメニア地方部らしい伝統的な料理を味わうことができます。
のぶよが宿泊したのは、ハリゾール村でも最安値に近い宿。
ここがとにかく最高でした。


地方部らしい伝統的な民家の一部を改装したゲストハウスなのですが、宿泊者用の空間は完全にリノベーションされておりピッカピカ。
家族のホスピタリティーも素晴らしく、アルメニア地方部の伝統的な暮らしにお邪魔しているような気分での滞在ができます。
【Arman Bed and Breakfast】

・部屋タイプ:4人部屋1人利用 ※バス・トイレ・専用リビング付き
・料金:8000AMD(=¥3200)
・立地:10/10
ハリゾール村中心部ど真ん中にある宿。近くに商店がいくつかあり、ちょっとした買い物にも便利です。
ハリゾール村はアップダウンがかなり激しい場所にひらけているため、中心部から離れてしまうといちいち坂を上り下りする羽目に。
その点、この宿は中心部にあるので、坂の上り下りがほぼないのが素敵です。
・宿へのアクセス:9/10
表には大きく「B&B」の看板が出ているので、簡単に見つけることができます。
宿には常にオーナー家族がいるので、問題なくチェックインできるはず。
・スタッフ:10/10

この宿の素晴らしい点が、オーナー家族のホスピタリティーにあります。
到着してすぐに家族が住む居間部分に通され、薪ストーブが温める空間でコーヒーやドライフルーツなどを食べながらお喋り…アルメニア地方部らしいのんびりとした、温かなおもてなしが感じられます。
「お金のためにやっている」といった感じではなく、あくまでも「せっかく来たから快適に過ごしてほしい」という気持ちでやっている感じも好印象。
英語はあまり通じませんが、それが問題にならないほどに明るい家族の人柄も◎
・清潔さ:9/10
驚いたのが、宿泊客用スペースがとてもモダンで巨大である点。
リノベーションされたばかりのようで、ベッド3台の寝室に加えて宿泊客専用のリビングまであるのですから…


清掃も行き届いており、タオルやシャンプーなどアメニティー類もしっかりしていて、ここだけ見るとまるでホテルのよう。
一人旅でリビングルームなどもはや必要ないのですが、とにかく広々とした空間に大満足でした。
・設備:8/10

部屋には専用のシャワー&トイレがついており、こちらも清潔感抜群。
お湯は問題なく出ますが、水圧がやや弱めだったのがマイナスな人にはマイナスかもしれません。
キッチンは母屋にしかないため、家族に許可を得て使う必要があります。
嬉しかったのが、エアコンが設置されていた点。
暖房/冷房ともに自由に使うことができます。
・wi-fi:10/10
Wi-Fiは問題なく動作しますし、宿泊者用スペースでも電波はかなり強く入っていました。
・雰囲気:10/10

雰囲気はとにかくもう最高のひとこと。
大きなテラスがあり、ハリゾール村の素朴な風景と山々の絶景を眺めながらのんびりと滞在することができます。
宿泊料金に込みの朝食もアルメニア地方部らしい伝統が感じられる素晴らしいもの。
素材のほとんどは自家製のものを使用しているというのも嬉しいです。

夕方には、宿のおばさんの得意料理だというジェンギャロフ・ハツ作りに参加(というか食べただけだが)。
自分たちで採ってきたハーブを小麦粉生地で包み、年季の入ったストーブの上で焼くという、アルメニア地方部限定の「村スタイル」の調理法です。


こうした伝統的な調理というのは、なかなか旅行者が直に体験する機会がないもの。
特にお金を取るわけではなく、出来上がった絶品のジェンギャロフ・ハツを食べさせてくれますし、もうとにかく最高でした。
・総合:9.4/10
アルメニアで色々なゲストハウスに泊まってきましたが、トップレベルの良宿だと思います。
設備も、快適さも、家族の温かな雰囲気も、とにかく非の打ちどころがありません。
アルメニア地方部の小さな村ならではの素朴な雰囲気や、伝統的な生活にお邪魔できるのはもちろんのこと。
部屋や設備絵面はかなりモダンなので、その辺でのストレスが少ない点も魅力だと思います!
【ハリゾールの宿の予約はこちらから!】
伝説の道トレック2日目:ハリゾール~シヌハユル

3日間トレックの2日目は、3日間の中で最も短く、難易度も低めのコース。
ハリゾール村~シヌハユル村間を、幹線道路沿いではなくあえて谷に下って歩くものです。
・距離:8.8km
・所要時間:3時間半~4時間
・高低差:▲399m ▼276m
・難易度:★★☆☆☆
どうしてわざわざ谷間に一度下ってまた登るという面倒なことをするかと言うと、ヒン・ハリゾールとヒン・シヌハユルの二つの見どころがこの谷間にあるため。
いずれもアクセスは基本的に徒歩のみとなるので、自分の足で歩いた人だけが見られる異世界の光景が楽しめます。


2日目は距離が短いため、比較的短い時間で歩けるのがポイント。
宿泊地となるシヌハユル村到着後に、極上のグルメが味わえる村のレストランへ訪問する余裕も十分にあるはずです!
・距離:2.1km
・所要時間:45分
・高低差:▼234m
・難易度:★☆☆☆☆
ハリゾール村~最初の目的地であるヒン・ハリゾールまでは、谷間を縫うように敷かれた未舗装の山道を延々と下っていくだけの簡単なコースです。

ハリゾール中心部から幹線道路を西向きに歩いていくと、分岐点1【マップ オレンジ①】に差し掛かります。▼


この分岐点からが、ヒン・ハリゾールに至る未舗装道路のはじまり。
あとは道沿いにずっと下っていくだけです。

しばらく下ると、眼下に石の建造物が点在する集落のような風景が目に入ります。
あれがヒン・ハリゾール。最初の目的地です。


さらに道を下っていくと、案内板がある分岐点に差し掛かります。
これを右に行くとすぐにヒン・ハリゾールが、左に行くとヒン・ハリゾール見学の後に歩くコースとなります。▼

ヒン・ハリゾール

2日目の最初の見どころとなるのが、ヒン・ハリゾール(Hin Halidzor)。【マップ オレンジ②】
「ヒン(hin/հին)」とはアルメニア語で「古い」の意味で、「オールド・ハリゾール」という呼び方もされます。
その名の通り、この場所にはかつて住人がおり、「ハリゾール村」として機能していました。
13世紀には、当時黄金時代にあったタテヴ修道院の管轄下の村として公式に認められ、修道院の繁栄の影響を強く受けてきました。


そんなヒン・ハリゾールの歴史が終焉したのは、アルメニアがソ連支配下にあった1966年のこと。
インフラやアクセスが難しいこの集落から崖の上の新集落(=現在のハリゾール村)へと住民を移住させる政策がなされ、ヒン・ハリゾールはその長い歴史に幕を下ろしたのです。

つい60年前まで住人がいて村として機能していたこともあり、ヒン・ハリゾールにはどことなく人の営みの名残が感じられます。
村の中心に位置する聖ミナス教会は廃墟となってはいるものの、しばしば手入れされているよう。
いちおう現役の祈りの場として機能しているようでした。


教会内部は、美しい曲線を描いたアーチに支えられた広めの空間。
剥き出しの石壁や天井が歴史を感じさせます。

ヒン・ハリゾールのかつての集落は、この聖ミナス教会を中心に東西に広がっています。
平地はほとんどなく、傾斜がある場所に器用に石を積み上げて建てられたかつての民家たち。
どの建物にもこの地で採れる黒っぽい石が使用されていることもあり、周囲の緑の風景と黒い石の建造物跡とのコントラストがとてもミステリアスです。


ヒン・ハリゾールはぐるりと回っても30分~40分ほどの規模。
ヴォロタン渓谷の緑の風景と、主を失った建造物たちが織り成す異世界の風景を、心ゆくまで堪能しましょう。
・距離:4.5km
・所要時間:1時間半
・高低差:▲195m
・難易度:★★☆☆☆
ヒン・ハリゾールから次の目的地であるヒン・シヌハユルまでは、谷間の斜面を縫うように敷かれた山道を歩いていくコース。
全体的に緩やかな上り坂となっていますが、体力的にはかなり楽に歩けます。

ヒン・ハリゾール村から東方面へ進むと、どうにか車が通れそうな未舗装道路が延々と続きます。
途中にいくつか分岐点がありますが、マーキングがしっかりされているのでそれに従って進みましょう。▼


コース途中には、ヴォロタン渓谷の全景とタテヴ方面の山々を一望できるポイントもあるのでお見逃しなく。▼

コースの半分ほど歩いたあたりで、それまでの未舗装道路は終わり、本格的な山道に入っていきます。
山道とはいえ普通に歩けるレベル&坂もきつくないのでご安心を。▼


山道は数百メートル続き、最終的に再び未舗装道路と合流することに。


この未舗装道路合流ポイント【マップ オレンジ②】から、あとは未舗装道路に沿って歩いていくだけ。
しばらく行くと、進行方向右手に小さな集落が見えてきます。▼

▲あれが、次の目的地であるヒン・シヌハユル。
ヒン・シヌハユルの手前300mほどの場所にはヒン・シヌハユル方面分岐点【マップ オレンジ④】があり、ここを右に下ればヒン・シヌハユル/左に登っていけば2日目の宿泊地であるシヌハユル村に至ります。▼


分岐ポイントから坂を300mほど下ると、大きな石造りの教会が姿を現します。
これが、ヒン・シヌハユルの入口です。
ヒン・シヌハユル

ヴォロタン渓谷に突き出したかのような崖の上に広がるのが、ヒン・シヌハユル(Hin Shinuhayr)。【マップ オレンジ⑤】
村の成り立ちや背景、廃村となった経緯はすでに訪れたヒン・ハリゾールと同様で、こちらも長い間タテヴ修道院の管轄下として黄金時代を謳歌した村です。


ヒン・シヌハユルはかつてこの地域で最も大きな人口を抱える村だったそう。
現在は二つの教会が残っており、村の入口に立つ聖ステパノス教会は住民たちの祈りの場として機能していたものだそうです。

ヒン・ハリゾールに比べると、ヒン・シヌハユルは平地がさらに小さく、こぢんまりとした印象。
現在立ち入ることができる部分は限られていますが、それ以外の山の斜面にもかつての民家の跡が広がっています。


ヒン・シヌハユル入口にあたる聖ステパノス教会から、かつての民家の間を抜けて村の最も南へと足を運ぶと、そこにはかつて修道院として機能していた建物が。
三方を石壁に囲まれており、残る一方は断崖絶壁の崖となっています。

このかつての修道院の敷地内に残るのが、聖母教会。
やや小さめの作りながら、ハチュカル(石の十字架)などがかなり良好な状態で残っています。


ヒン・シヌハユルで現在見られるのは、だいたいこれくらい。
時間にして30分もみておけば余裕で周れてしまう規模です。
・距離:2.2km
・所要時間:50分
・高低差:▲252m
・難易度:★★☆☆☆
ヒン・シヌハユルからは、先ほど歩いてきた道を少し戻ることになります。
300mほど坂を上った先にヒン・シヌハユル方面分岐点【マップ オレンジ④】があるので、ここをシヌハユル村方面へとさらに登っていきます。

シヌハユル村までは、車も通れる未舗装の山道がずっと続くだけ。
一本道ですし、簡単に歩けてしまいます。


坂を上りきると、本日の宿泊地であるシヌハユル村が崖の上に広がる風景が見えてくるはず。
ここまで来たら、村の中心部はもうすぐです!
2日目の宿泊:シヌハユル村

3日間トレック2日目の宿泊地となるのが、シヌハユル村(Shinuhayr/Շինուհայր)。【マップ オレンジ⑥】
人口3000人ほどを有する比較的大きな村で、このエリアでは最も栄えている印象です。
幹線道路沿いに広がるシヌハユル村の中心部には、いくつかの商店と数軒の飲食店があるので、滞在時に不便することはありません。


シヌハユル村に宿泊する際にぜひおすすめしたいのが、村はずれにぽつりとあるレストランで夕食をとること。
驚くことなかれ…のぶよがこれまでアルメニアで訪れた飲食店の中でもトップレベルの味の良さの店でした。
シヌハユル村の飲食店情報

シヌハユル村に来たならぜひとも足を運びたい、というか、この店に行くためにシヌハユル村に泊まるべきと言えるほどにおすすめしたいのが、Tavern Hndzan。【マップ 赤】
シヌハユルの中心部から徒歩15分ほどの村はずれに位置しており、立地はお世辞にも便利とは言えません。
しかし、想像を軽く凌駕してくるほどの素敵な雰囲気と絶品料理が味わえます。


総石造りの外観も可愛らしいですが、びっくりするのは内装。
こちらも100%石造りになっており、まるで映画のセットのような美しい空間に感動します。
Taverne Hndzanのメニューはこちら。▼

価格帯的には激安!というわけではなく、アルメニア地方部的にはやや高め。
しかしエレバンのレストランに比べるとどれも3分の2ほどの価格で、かなり良心的だと思います。
このお店の素晴らしい点が、使用される食材のほとんどがシヌハユル周辺エリアのものであること。
肉や野菜、乳製品に至るまで、地産の食材を使用することにこだわっているのだそうです。

とても柔らかな物腰で英語が上手なお店のお兄さんに注文して待つこと10分ほど。
美しく盛られた料理たちが到着しました。
今回注文したのは、アヴェルークのソテー、牛肉のカバブ、じゃがいもの炭火焼の三つ。
正直、こんな田舎の村でこんなに美しく盛られた料理に出会えるとは思っていませんでした…

…もうね、びっくりしました。味のレベルの高さに。
「アヴェルーク」は、日本では「ギシギシ」と呼ばれる植物のことで、雑草とされるもの。
アルメニアではポピュラーな食材なのですが、独特のエグみがあるので調理がやや難しいのです。
その点、Taverne Hndzanのアヴェルークソテーは完璧。
ローストした玉ねぎやニンニクと合わせてあるため、エグみを抑えながらもアヴェルーク独特の風味がしっかりと活かされているのです。
アヴェルークの上にのせられた自家製サワークリームとの相性も抜群。
味のバランスがとにかくパーフェクトすぎてびっくりしました。

そして、店のお兄さんおすすめのBBQ系も完璧。
塩加減もきつくなく、火の通りかたもこれ以上ないほどに絶妙。炭火焼きならではの香ばしい風味が存分に感じられます。
BBQについてくる自家製のピリ辛ソースも極上の美味しさ。
アルメニアではあまりソースをつけて肉や野菜を食す文化がないのですが、あっさりした肉の風味を引き立ててくれる絶妙な味わいでした。
まさかこんな地方部の村でこんなにレベルの高い料理に出会えるとは、想像だにしていなかったもの。
舌で感じられるほどの素材の良さと、それを引き立てる絶妙な味付け具合がとにかくもう完璧でした。
アルメニア全国を見渡しても、この価格帯でこのレベルの料理を出す店はかなりレア。
シヌハユル村滞在のハイライトとなること間違いなしの、極上の食体験をぜひ…!
シヌハユル村の宿情報
【Tatev Shinuhayr Hotel】

・部屋タイプ:ダブルルーム1人利用 ※バス・トイレ付き
・料金:10000AMD(=¥4000)
・立地:9/10
シヌハユル村の中心部ど真ん中に位置している宿。
一階には村で最も大きなマーケットが併設されており、何かと便利です。
・宿へのアクセス:10/10
表に看板が出ていますし、宿への入口の扉は常に開いているため、問題なくチェックインできます。
・スタッフ:8/10
ゲストハウスというよりもホテルに近い宿なので、そこまで温かくアットホームな感じではありません。
しかし物腰柔らかに対応してくれますし、必要最低限のコミュニケーションではあるものの特に問題ありません。
・清潔さ:9/10
部屋はやや古いですが、清潔に保たれています。ワードローブやベッドなどをもう少し新しいものに変えればもう少し見栄えが良くなるような…


部屋以外の部分も毎日掃除しているようでとても清潔。
中庭の開放的な雰囲気も素敵でした。
・設備:8/10

シャワーのお湯は問題なく出ますが、水圧が微妙に弱かったのがマイナス。
また部屋には暖房がいっさいないため、冬の滞在だとかなり厳しいんじゃないかと思います(電気ヒーターなどおそらくあるのだろうけど)。
個人的に大きなプラスだったのが、宿泊客専用のキッチンがある点。

アルメニア地方部のゲストハウスでは「宿泊客用のキッチン」という概念自体がないことも多く、お湯一つ沸かすためにいちいち宿の人にお願いしなければならないのが普通。
その点、お湯はもちろんちょっとした自炊も自由にできるキッチンの存在は、滞在の快適さを大きく増してくれます。7
・wi-fi:4/10
Wi-Fiは問題なく動作しますし速度も良いのですが、のぶよが宿泊した二回一番奥の部屋では電波がまったく入りませんでした。
キッチンや中庭では問題なくつながったので、おそらく部屋の場所によって電波の強さが大きく変わるはず。
チェックインの際に部屋を選ばせてくれるので、できるだけ電波が強い部屋を選ぶのが◎
・雰囲気:8/10

「ホテル」の名を冠していることもあってか、アットホームな感じではなく、あくまでも宿泊スペースで全て完結するタイプの滞在でした。
せっかく地方部に来たので、もう少しアットホーム感があっても良いかなと思いましたが、これはこれで羽をのばせるので悪くないかも。
宿の家族との絡みこそほとんどありませんが、プライベート空間を重視して滞在したい人には逆にぴったりだと思います。
・総合:8.0/10
シヌハユルにいくつかある宿のうちの一つですが、まあこんなもんかなといった感じ。
宿代がもう少し安ければパーフェクトですが、どうやら一人泊でも二人泊でも値段は10000AMDで一緒なのだそう。
二人で10000AMDであれば、かなりお得感があると思います。
一泊するだけであれば、全く問題なく快適な滞在ができるはず。
キッチンもあるので、かなり自由に気の向くままの滞在が可能です。
【シヌハユルの宿の予約はこちらから!】
伝説の道トレック3日目:シヌハユル~ゴリス

3日間トレックの最終日は、シヌハユル村~ゴリスの町までを踏破するコース。
距離は3日間のうち最も長く、高低差もやや多めですが、難易度自体はそれほど高くありません。
・距離:20.0km
・所要時間:8時間
・高低差:▲500m ▼417m
・難易度:★★★☆☆
3日目のハイライトとなるのが、「アルメニアのマチュピチュ」と言われるヒン・ホット。
すでにいくつか谷間にあるかつての集落を訪れてきましたが、それらの中でも最も規模が大きなものです。


ヒン・ホットへの道のりのみ山道を上り下りすることになりますが、それ以外のコース後半はひたすら道路沿いを歩くだけなので、距離の割に意外と簡単に歩けるのがポイント。
タテヴ~ゴリストレックのフィナーレとなる1日を存分に楽しみましょう!
・距離:3.3km
・所要時間:1時間
・高低差:▼417m
・難易度:★★☆☆☆
シヌハユル村からは、2日目に歩いたコースと同じものをしばらく歩きます。
まずはシヌハユル村中心部から未舗装道路に入り、ヒン・シヌハユル方面へと下っていきましょう。

ヒン・シヌハユルを通り過ぎて道なりに進むと、地図アプリ上ではショートカットできそうな道が表示されます。
しかしこの先は道なしの断崖絶壁。【マップ 黒】
かなり危険なのでここは通らず、ぐるっと南に迂回するルートを進むのが絶対です。▼


迂回ルートは結構がっつりと下り坂。
下り坂が終わり再び上り坂となった後に、名もなき滝が現れます。
名もなき滝

コース上に轟轟と流れ落ちる名もなき滝は、もはや地図アプリにさえ載っていない存在。【マップ 青①】
しかしその姿はとても美しく優雅で、ちょっとした名所のような貫禄です。

滝を流れ落ちた水は小さな小川となってコース上に流れ出しており、靴を脱いで渡る必要があります。
ちょうど休憩にぴったりな位置にあるので、涼しげな滝を背景にひと休みしていきましょう。
・距離:330m
・所要時間:20分
・高低差:▲104m
・難易度:★★★☆☆
名もなき滝からは、数百メートル緩やかな下り坂を歩いていきます。

しばらく行くと、先ほどの名もなき滝よりもかなり小さい別の滝が。
この滝のすぐ先にあるのが、道が二手に分かれる分岐点1です。【マップ 青②】


分岐点1からは左側の山を登る道を進みます。
距離にして300mほどですがかなりがっつりと上り坂が続くので、結構体力を使うはず。

山の急斜面を登りきると、大きな奇岩沿いにトレッキングコースが。
数十メートル進んだ先で眺望が開け、奇岩ビューポイントとなります。
奇岩ビューポイント

奇岩地帯の先にあるちょっとした絶景ポイントが奇岩ビューポイント。【マップ 青③】
その名の通り、地面から生えたかのような不思議な形の岩々と、周囲の山々の風景を一望することができます。


奇岩ビューポイントから、トレック3日目のアイライトとなるヒン・ホットまでは目と鼻の先。
パワーをチャージしたら、ふたたび歩いていきます!
・距離:620m
・所要時間:15分
・高低差:▲33m
・難易度:★☆☆☆☆
奇岩ビューポイントからヒン・ホットまでは、ほぼ平坦な道のり。
しかし、地図アプリに表示される道にはなぜか門が設置されており、通れないように茨がしつらえられています。▼

この茨の門【マップ 黒】はこの先へ続く唯一の道。
門自体は茨のせいで開けるのは難しいですが、少し手前の岩を越えて迂回することで通行できます。
その先は、ヒン・ホットに向けて道なりに歩いていくだけ。

▲正面にヒン・ホットの民家跡を見据えながら歩いていきましょう。
ヒン・ホット

トレック3日目のハイライトとなる見どころが、ヒン・ホット。【マップ 青④】
こちらもかつての集落の跡で、ヒン・ハリゾールやヒン・シヌハユルと成り立ちや歴史は同じです。
1970年代まで住民がいたそうですが、当時のソ連政府の政策によって住民の完全移住が完了。
現在のホット村が、当時新しく造成されヒン・ホットの住民の移住先となった場所です。


ヒン・ホットは、現地では「アルメニアのマチュピチュ」として観光PRの準備が進められている場所。
のぶよは本物のマチュピチュに行ったことがないので、本当にこの場所がマチュピチュなのかどうかに関してはノーコメントとしておきますが、確かにマチュピチュっぽさはあるような気がします。
緑に包まれた深い谷間に浮かび上がるような、黒い石造りの建造物たち。
「住人を完全に失ってしまったかつて栄えた集落」という点も、確かに共通しているような…

ヒン・ホット村に現在残るのは、集落の中でも最も低い場所に位置する小さな教会のみ。
保存状態はあまり良好とは言えず、祈りの場としての機能は完全に失われているようでした。▼


ヒン・ホットは、これまで訪れてきた他の旧集落に比べてかなり規模が大きい印象。
自由に立ち入れる部分がとても多く、様々な角度から「アルメニアのマチュピチュ」を眺めることができます。


ヒン・ホットは、これまで歩いてきたヴォロタン渓谷全体を一望できる場所に位置しているのもポイント。
敷地からは渓谷の息を呑むような自然が一望でき、圧巻の絶景には感動間違いなしです。
・距離:3.0km
・所要時間:1時間10分
・高低差:▲298m
・難易度:★★★☆☆
ヒン・ホットからホット村までは、ひたすらに上り坂が続きます。
基本的に車が通る未舗装道路沿いに歩いていくだけなので、体力的にはなかなかきついですが歩きにくさはありません。

未舗装道路を登りきると、そこはもうホット村の村はずれ。
なんとも言えない退廃的な雰囲気が漂っていますが、とにかく中心部を目指して歩きます。


ホット村

ヒン・ホットのかつての住民が移住したことで形成されたホット村(Khot/Խոտ)は、伝統的な石造りの民家がずらりと並ぶ小さな集落。【マップ 青⑤】
村の民家に使用されている石は、遥か下方のヒン・ホット付近から運んで来たものなのだそうです。


ホット村の中心部には商店が2軒とホテルが1軒あるだけで、食事ができそうな店は見当たりません。
かつてはゴリス~ホット間のマルシュルートカもあったそうなのですが、乗客の減少のため廃止となってしまったのだそうです。
・距離:12.0km
・所要時間:3時間
・高低差:▲95m ▼243m
・難易度:★★★☆☆
ホット村からゴリスまでは、舗装道路を延々と歩いていくだけの道のり。
正直そこまで面白みがない道なので、ヒッチハイクやホット村からタクシー(2000AMD=¥800)でサクッと移動してしまう方が効率的かもしれません(のぶよはがち勢なのでもちろん全区間歩いた)。

ホット村内の未舗装の道をしばらく歩くと、幹線道路合流地点【マップ 青⑥】に至ります。
ここからはゴリス方面へのびる舗装道路をひたすらに歩いていくだけです。▼


幹線道路はほぼ平坦で、周囲に何一つない野原の風景がずっと続くだけの退屈なもの。
ホット村を出て2時間ほど歩くと、ゴリスの町を一望できるビューポイント【マップ 青⑦】に到着します。▼

ビューポイントからの幹線道路は、それまでの平坦な道のりからつづら折りの下り坂に。
あとは中心街まで40分ほど歩けば、ゴールです!
3日目の宿泊:ゴリス

3日間トレックのゴールとなるのが、ゴリスの町。【マップ 青⑧】
おそらく、3日間トレッキングに挑戦する人のほとんどはゴリスをすでに訪問していることでしょうが、散々歩いた後にようやく到達したゴリスの風景は心の底からの安寧を与えてくれるはずです。
ゴリスの宿にチェックインした後は、のんびりとトレッキングの疲れを癒すのが◎
中心街のレストランに足を運んで、このエリアならではの美味しいものを食べまくってエネルギーチャージするのもおすすめです!
3日間トレッキングの注意点・アドバイス
マーキング・電波

トレッキングをする際に重要なのが、コース上のマーキング。
3日間トレックに関してはトレイル全体を通して、マーキングは比較的しっかりされているので安心。
コースは全体的にかなり分かりやすいですが、一部分岐点などがある箇所もあるので、マーキングに助けられる場面も多いと思います。
インターネットの電波に関しては強弱があるものの、まったく電波が入らないという場面は3日間全体を通して一度もありませんでした。
食事&宿泊

複数日のトレックをする際に気になるのが、宿泊や食事をする場所の有無。
3日間トレックに関しては、各日の滞在先となる村にゲストハウスがあるので、宿泊面で困ることはありません。
テントや寝袋をかついで歩く必要がないのは、かなり嬉しいです。
各村のインフラはさまざまで、レストランがある村もあれば、小さな商店しかない村も。
食事に関しては宿泊するゲストハウスで付けてもらうことが可能なので、3日分の食料を持参する必要はいっさいありません。
持ち物・服装

宿泊や食事に関しての心配がないため、3日間トレックで必要な持ち物はそこまで多くありません。
スナック類や軽食くらいは持参しても良いですが、それらも各村の商店で揃うため、最悪何一つ準備しない状態でも挑戦できます。
飲料水に関しては、すべての村の水道水が飲用可能&コース上に湧き水が多くあるため、こちらも1Lのペットボトルくらいを準備しておけばOKです。
服装に関しては、長ズボン&長袖がおすすめ。
トゲのある植物が生えた山道を歩く場面も多いためです。
靴は最悪スニーカーでも歩けると思いますが、トレッキングシューズなどあった方が疲れにくくて良いです。
野生動物の遭遇リスク
3日間トレッキングで歩くのは、緑あふれるヴォロタン渓谷の谷間。
周辺には野生動物も多く生息しており、熊やヘビなど人間にとって危険となるものもいます。
しかしながら、全体を通して野生動物との遭遇リスクはかなり低め。
動物側もあえて人間に近づいてくることはないので、山での基本的な注意事項さえ守っていれば恐れることはありません。
マストな地図アプリ
Google Mapは、ハイキングコースを網羅しているとは言い難いです。
のぶよがハイキングの際に使うのが、Maps.Meというアプリ。
オフラインでも地図の表示や近くのスポットの検索ができるだけではなく、ハイキングコースや自転車コースも詳細に表示されます。

また、ハイキングコースの高低差を表示する機能もあってかなり便利。GPSの制度もかなり正確です。
徒歩以外での各見どころアクセス方法
「3日間トレックの見どころへ行ってみたい!…でも歩くのは嫌だ…」という人も多いのではないでしょうか。
本来はぜひとも自分の足で歩いてほしいところですが、徒歩以外にもいくつかの見どころを周る方法は存在します。
また、3日間トレックのスタート地点となるタテヴ村への移動についても事前に考えておくのが◎
ここでは、ゴリス~タテヴのアクセスはもちろん、3日間トレック上の各見どころや村へのアクセスにも使える移動手段を3つ季節します。
①ゴリスからタクシーチャーター
最も簡単に移動できるのは、タクシーチャーター。
以下、このエリアのタクシー料金の相場です。▼
・ゴリス→タテヴ片道:5000AMD(=¥2000)
・ゴリス~タテヴ往復:8000AMD(=¥3200)
・ゴリス~ハリゾール片道:3000AMD(=¥1200)
・ゴリス~ホット片道:3000AMD(=¥1200)
上の料金相場は単純に移動した場合のものなので、途中で見どころに立ち寄ってもらう場合はいくらか追加料金を払うと考えておきましょう。
②ゴリス~タテヴ~カパン間マルシュルートカ

ゴリス~タテヴ間の移動はもちろん、ハリゾールなどの村へのアクセスにも利用できるマルシュルートカ。
このエリアを走るのは、ゴリス~タテヴ~カパンを走る1日1往復の便(平日のみ運行)のみです。
ゴリス~カパン間マルシュルートカのスケジュールは平日のみの運行で、ゴリス発14:30/カパン発9:00と固定。
途中の各村で乗車/下車することも可能なので、スケジュールをうまく計算すれば利用価値が高いです。
・ゴリス→カパン方面
ゴリス14:30発→シヌハユル村14:50通過→ハリゾール村15:00通過→タテヴ村15:30通過→カパン16:30着
・カパン→ゴリス方面
カパン9:00発→タテヴ村10:00通過→ハリゾール村10:30通過→シヌハユル村10:40通過→ゴリス11:00着
③ケーブルカー

トレック1日目のスタート地点となるタテヴ村と、1日目の宿泊拠点となるハリゾール村の間には「ウイングス・オブ・タテヴ」と呼ばれるケーブルカーが敷かれています。
タテヴ~ハリゾール間の移動手段としても利用価値が高いですし、なによりケーブルカーからの景色は極上。
このケーブルカー自体も観光のハイライトとされるもので、興味がある人は乗車するのも良いでしょう。
上手にプランニングすれば、タテヴ修道院観光や3日間トレックと組み合わせてケーブルカーを利用することも可能です。
おわりに
アルメニア南部旅行の文句なしのハイライトとなる3日間トレッキングの情報を「これでもか!」と詳しく解説してきました。
正直、同じようなコースで歩く日本人旅行者などまず存在しないでしょう。
時間も体力も限られたアルメニア旅行で、3日間かけて定番ではない見どころを徒歩でまわるなんて、相当な物好きがやることかもしれません。
しかし!個人的には本当に本当に本当におすすめ。
ここまでピュアな自然や歴史を感じる見どころの数々が、手つかずのままに残っている場所もあまりないですから。
大自然の美しさや異世界の風景の廃村も素晴らしいのですが、途中の村での「THE・アルメニア地方部」といった滞在ができる点もおすすめポイントの一つ。
アルメニア広しといえども、ここまで古き良き地方部らしさが残っている地域にはなかなか出会えないのです。
「歩くのはちょっと…」という人でも、いくつかの見どころをタクシー等で周ることは可能。
トレッキング目的の人であれば、むしろ他のエリアを差し置いてでも歩いてほしいです!
コメント