こんにちは!元ポルトガル在住ののぶよ(@nobuyo5696)です。
かつては隣国スペインの影に隠れ、日陰の日々を送っていたヨーロッパ最西端の国・ポルトガル。
「通好みの穴場の旅行先」という性格が強かったのは今は昔。
ヨーロッパで発達している格安航空会社の就航によって、一躍人気の旅行先としての地位を駆け上がっています。
リスボンやポルトなど、観光客が増えてきている有名な場所での滞在もいいのですが、ポルトガル在住者的にイチ押しの穴場のエリアが、今回紹介するアレンテージョ地方(Alentejo)。
リスボンを流れるテージョ川の名を冠し、「テージョ川の向こう」という意味の広大なエリアを指します。
しかしながら、その曖昧すぎるネーミング&田舎っぽいイメージが災いしてか、観光客がほとんどやってこないのが現状。
ポルトガルで最も面積が大きいアレンテージョ地方は、そのほとんどが肥沃な丘陵地帯。
古くから農業・牧畜業が盛んで、ポルトガル人の胃袋を支え続けている「美食の地」と称されるエリアでもあります。
素材を活かしたポルトガル料理には欠かすことのできない新鮮な野菜や肉・チーズなどの食材の宝庫としても、観光地化されていない中世ポルトガルの雰囲気がそのまま残った村々が点在している貴重な場所としても、近年ポルトガル人の間でも再注目されているアレンテージョ地方。
今回の記事では、日本人にはほとんど知られていないこの素晴らしいエリアの魅力を、「アレンテージョ地方観光でしたい10のこと」と題して紹介していくものです。
中世の趣を残す城塞や真っ白な村、名物料理に世界遺産まで。
知られざる魅力がたっぷり詰まったアレンテージョ地方は、何を隠そう、のぶよがポルトガルで一番好きなエリア。
各項には、アクセス方法や観光スポットなど詳細記事へのリンクを貼っているので、気になったものは要チェックです!
1.素朴な村で「古き良きポルトガル」を感じる:アライオロシュ/エシュトレモシュ
アレンテージョ地方を特徴づけるのが、広大な大地に点在する小高い丘の上に広がる小さな村の風景。
白を基調とした民家がずらりと並びますが、村によって装飾のディテールが異なるのも興味深いです。
古城を中心とした人口3000人ほどのアライオロシュ(Arraioloz)は、典型的なアレンテージョ地方らしい町並みが魅力的。
静まり返った路地には、伝統の織物を織る音だけが響き渡ります。
アライオロシュよりも少々町の規模が大きいエシュトレモシュ(Estremoz)も見逃せません。
中世の雰囲気をそのままに残す、城壁の内側に築かれた素朴な町並みは、どこを切り取っても絵になります。
二つの村は地理的に近いので、セットで訪れることができるのもポイント。
ポルトガルの都市部では消えつつある素朴な風景を堪能することができます。
2.世界遺産の博物館都市で古代を感じる:エヴォラ
アレンテージョ地方の中心都市として、観光・交通の拠点となるエヴォラ(Évora)は、世界遺産に指定された歴史地区が美しい町。
リスボンからのアクセスも良く、周辺の小さな村へのアクセス拠点ともなるため、アレンテージョ地方の中では最も観光客が訪れる場所です。
エヴォラのシンボルが、ローマ帝国時代の神殿とファサードが素晴らしいエヴォラ大聖堂。
もちろんどちらも世界遺産に登録されており、古代から重要な交易拠点として栄えた町の悠久の歴史が感じられます。
穴場スポットとして人気の納骨堂(Capela dos ossos)も必見。
壁一面に人骨が埋め込まれた小さな礼拝堂は、この世のものとは思えないような仰々しい雰囲気です。
花々で飾られた石畳の歴史深い路地を歩いていると、素朴ながらもスタイリッシュなエヴォラの人々の町づくりのセンスが感じられるはず。
アレンテージョ地方の観光拠点としてのんびり滞在したくなる。そんな不思議な居心地の良さに包まれた町です。
3.丘の上の白い村に感動する:マルヴァン/モンサラシュ
「白い村」というと、お隣スペイン南部のフリヒリアナやミハスなどが有名ですが、地理的に近いアレンテージョ地方にも白い村が点在していることはあまり知られていません。
超絶観光地と化したスペインの白い村に比べると、観光客の数はとても少なく、ポルトガル地方部らしい素朴な村の雰囲気が残っているのが最大の魅力。
アレンテージョ地方全域に点在している「白い村」ですが、中でもその美しさで人気なのがマルヴァンとモンサラシュの二つでしょう。
スペイン国境にほど近いマルヴァン(Marvão)は、次の項で紹介する「絵画の世界」サン・マメーデ山脈自然公園内の岩山の上にある小さな村。
国境防衛用に築かれた城壁に囲まれた断崖絶壁の村は、気持ちの良いくらいに真っ白です。
ポルトガル地方部は、カトリックが強く根付いている地域でもあり、マルヴァンの女性たちは夏でも長袖の黒い服に身を包んだ人がほとんど。
観光地化された「白い村」では見られないような、村人の生活が至る所で見られるのです。
もう一つのおすすめの「白い村」であるモンサラシュ(Monsaraz)は、「ポルトガルの7つの奇跡」に選ばれた、中世の趣をそのままに残す場所。
まぶしいほどに真っ白な家々の間を散策していると、堂々と村を見下ろすように建つ城塞へとたどり着きます。
モンサラシュも高台に位置しているため、村中どこでも絶景が見られるのもポイント。
アレンテージョ地方の広大な大地の風景や、ヨーロッパ最大の人造湖であるアルケヴァ湖のパノラマを一望することができます。
4.絵画の世界に迷い込む:サン・マメーデ山脈自然公園
絵になる風景がどこでも見られるアレンテージョ地方ですが、北東部のサン・マメーデ山脈自然公園(Parque Natural da Serra de São Mamede)は、丘陵地帯に点在する小さな村々と美しい自然の風景が見事にマッチした場所。
どこの町にも絵画の世界のような風景が広がっており、春~秋にかけての自然の風景とのコントラストは言葉を失うほどの美しさです。
「ポルトガルで最も美しい道」として、ポルトガル人の若者に大人気の国道や、清流に架かるレトロな石橋があるポルタジェン(Portagem)村
ミニチュアのような町並みを一望する城塞があるカステロ・ドゥ・ヴィデ(Castelo de Vide)
など、観光客にはほとんど知られていない穴場の町や村がたくさん。
先述の「白い村」・マルヴァンも自然公園内にあるので、時間をかけてゆっくりとまわるのがおすすめです。
5.世界遺産の要塞都市で国境の地の歴史を学ぶ:エルヴァス
エヴォラと同様に、アレンテージョ地方の世界遺産の町として有名なのが、スペインとの国境付近に位置するエルヴァス(Elvas)。
古くからカステイーリャ王国(現在のスペイン)とポルトガル王国の間で領土争いが絶えなかった地域で、国境防衛に特化した完璧な要塞都市として、訪れる人を魅了させます。
360°を鉄壁の城塞に囲まれた町と、その町を防衛するために周辺の丘の上に築かれた要塞群が世界遺産に登録されており、いずれも見ごたえ抜群。
フランスのナポレオン軍でさえ侵攻することができなかったというエピソードまであるほどです。
スペインから物価の安いポルトガルに買い物ついでにやってくる人も多く、エルヴァスの町並みはどこかスペインの雰囲気漂うエキゾチックなもの。
昔も今も、国境の町として発展し続けるエルヴァス独自の文化を感じることができます。
6.美食の地を舌で感じる:アレンテージョ料理・ワイン
ポルトガル人が「アレンテージョ地方」と聞いて最初に思い浮かべるのは、広大な農地で育まれた食材の宝庫というイメージ。
日本人にとっての「北海道」といったところかもしれません。
ポルトガル料理=シーフードというイメージがありますが、海から遠い丘陵地帯のアレンテージョ地方では話が別。
古くから肥沃な大地を利用した農業や牧畜が盛んだったアレンテージョ地方は、新鮮な野菜や肉、乳製品を使った郷土料理が数多く存在する「ポルトガルで一番の美食の地」と言われています。
また、アレンテージョ地方はワインも名産。
赤、白いずれも芳醇な香りが特徴で、ポルトガル各地で愛されています。
ここでは、アレンテージョ地方の郷土料理の中から、のぶよのおすすめをいくつか紹介します。
コジード・ドゥ・グラン
アレンテージョ料理の特徴として、肉や野菜をふんだんに使用した具だくさんのスープ類がとても豊富なことが挙げられます。
コジード・ドゥ・グラン(Cozido de grão)はアレンテージョ地方名物のひよこ豆のシチュー。
前菜のスープとしてもメインとしても食される、アレンテージョ地方の代表的な料理の一つです。
余計な味付けはせず、たっぷりの野菜と地元産のソーセージの旨味がギュッと詰まった一品で、同じく名産のアレンテージョ風パンとの相性も抜群。
アレンテージョ地方に来たなら、コジード・ドゥ・グランに限らず、一度は名物のスープ料理を味わってみましょう。
ミーガス
ポルトガルはかなりの米文化の国なのですが、アレンテージョ地方に関しては、スープ&パン文化が強いのが特徴的。
そんなパン好きが多いアレンテージョ地方では、パンをニンニクや野菜とともに炒めたミーガス(Migas)という料理が名物です。
ミーガスはスペイン~ポルトガルにかけての広い地域で食べられている料理なのですが、リスボンやポルトなどポルトガル中部~北部にかけてはまず目にする機会がありません。
一方のアレンテージョ地方では、ミーガスはほぼ主食のような扱い。
肉料理の付け合わせで食べられたり、オムレツの具となったりととにかく多様な調理方法が存在します。
セリカイア
アレンテージョ地方に来たなら、とにかく食べてほしいスイーツが、セリカイア(Sericaia)。
シナモンを効かせたホットケーキといった感じなのですが、プラムを蜂蜜漬けにしたものが添えられるのがポイントです。
ポルトガルスイーツらしい素朴な風味の生地と、プラムと蜂蜜の甘味が絶妙にマッチしたセリカイア。
ポルトガルで色々なスイーツを食してきたのぶよですが、ここまで「美味しい!」と感動したのはセリカイアだけです。
ローカル食堂のデザートとして出されることが多く、どこも自家製なのがポイント。
リスボンでも売ってほしい、というか日本に上陸してほしいと思うほどの絶品スイーツです。
アレンテージョ地方のワイン
広大な農地を持つアレンテージョ地方では、ワイン用のブドウの生産も盛ん。
ポルトガルのワインというと、北部のドウロ川流域で生産されるポートワインが有名ですが、正直ポルトガルの一般の人は日常的にポートワインを飲みません。(いかんせん値段が高いので)
ポルトガル人にも手頃な値段&確かな質で人気なのが、アレンテージョ地方産のワイン。
温暖で、晴天の日が多いアレンテージョ地方は、ワインの生産に適した条件がそろった場所。
ポルトガルの中では比較的大規模なワイン農家も多く、質の良いワインを大量に生産することで価格を抑えることができているのです。
最近注目されているワインツーリズムにも力を入れ始めているアレンテージョ地方。
リスボンからのアレンテージョ地方日帰り観光ツアーではワイナリーを訪問&試飲できるプランも多くあるので、個人でも気軽に名産ワインを堪能することができます。
7.中世の城塞を持つ村にタイムスリップする:古城街道
そもそもが知名度低めなアレンテージョ地方ですが、その中でも人々に忘れ去られたようなエリアが、東部の古城街道(Rota dos Castelos)と呼ばれる地域。
その名の通り、中世に築かれた城塞を中心とした村々が点在するエリアで、観光地化が全くされていない本来のポルトガル地方部の風景が残ることで、ひそかに話題になっています。
人口数百人~数千人規模の小さな村々は、どれも中世ポルトガルの雰囲気を色濃く残したもの。
各村の城塞にはそれぞれ特徴があり、古くから国境地帯の防衛を担っていたこの地域の歴史を感じさせます。
観光客もほとんどやってこないため、アクセスは絶望的に不便な古城街道ですが、いくつかの村へは路線バスが走っているため、個人でのアクセスもできないことはありません。
手つかずの中世ポルトガルの雰囲気を味わいたい人にはとてもおすすめですよ。
8.ポルトガルの秘境で絶景を眺める:メルトラ
古城街道ですら相当不便だったのですが、さらなるアクセスの不便さを誇る「ポルトガルの秘境」たる村が、南部に位置するメルトラ(Mértola)。
グアディアナ川が形成した断崖絶壁の谷間に広がる人口3000人ほどの村は、まるで桃源郷のような神秘的な美しさを誇ります。
この地域がイスラム教徒であるムーア人に支配されていた12世紀頃までは、グアディアナ川を利用した交易の中継地点として栄えたメルトラ。
当時のモスクを改装した白亜の教会が、村人の誇りとなっています。
アレンテージョ地方の他の町と同様に、城塞を中心として発展したメルトラ。
その独特な立地のおかげで、村のどこからでも絶景が望める点も見逃せません。
アクセスは絶望的に不便なものの、それこそがこの村が秘境たるゆえん。
川と村の絶景を眺めながら、のんびりと滞在するにはぴったりの場所です。
9.アレンテージョの海の風景を歩く:漁師の道
アレンテージョ地方というと、内陸部の広大な農地のイメージが強いのですが、実は大西洋に面した海岸線エリアもあるのです。
リゾート地としては全く開発されていないアレンテージョ地方の海沿いは、知る人ぞ知るビーチエリアと言った感じ。
アレンテージョ地方~南部のアルガルヴェ地方にかけての100kmほどの海に沿ったトレイルは「漁師の道(Trilho dos pescadores)」と呼ばれ、海岸線の雄大な風景の中を歩くことができる絶景トレイルとして注目を浴びています。
大西洋の荒波に削られたダイナミックな海岸線と、真っ青な大西洋が最大の魅力ですが、漁師の道沿いの昔ながらの漁村の風景も人気の秘密。
レンタカーでまわるのが一番ですが、時間に余裕があるならバス+徒歩でまわることも可能なので、海の風景が好きな人なら楽しめること間違いありません。
10.中世そのままのポサーダに宿泊する
アレンテージョ地方最大の魅力である、中世ポルトガルの雰囲気をそのままに残した城塞や村々の風景。
せっかくここまで足をのばしたなら、宿泊も中世そのままの雰囲気が残る場所でしてみるのもいいかもしれません。
ポルトガルでは、中世に建てられた古城や邸宅、修道院などを改装したポサーダ(Pousada)と呼ばれる宿泊施設があり、私たち観光客にも開放されているのです。
なんとなく料金がお高めな気がしてしまいますが、ここはポルトガル。
中世の雰囲気をそのままに残したポサーダで豪華な宿泊をしても、宿泊費はとてもリーズナブルなのです。
アレンテージョ地方で有名なのが、
ヴィラ・ヴィソーザの修道院ポサーダ
マルヴァンの邸宅ポサーダ
エシュトレモシュの古城ポサーダ
など。
いずれも歴史ある建物を改装したもので、数百年前の趣を強く残しているのが特徴です。
ポサーダではレストランが併設されていることも多く、その地方の郷土料理を提供している場合がほとんど。
美食の地として有名なアレンテージョ地方の郷土料理と名産ワインを味わいながら、中世のポサーダでいただくディナーなんて、旅の思い出がよりいっそう彩られそうですね!
おわりに
日本人には、というか、海外からポルトガルにやってくる観光客には見過ごされがちなアレンテージョ地方の観光スポットや魅力などを紹介してきました。
リスボンから比較的近いこともあり、他の地域にあまり興味がない(リスボンが一番だと思っている)リジュボエッタ(リスボンの人)にも、「休日気軽に訪れられる田舎」として人気が高まっています。
初めてのポルトガル旅行では、アレンテージョ地方まで足をのばすのは、日程や交通手段の面からもなかなかハードルが高いでしょう。
反対に、ポルトガルの魅力に気付いてしまったリピーターの人には、足をのばしてみることを強くおすすめします。
素朴な風景と美味しい食べ物、気取らない地方部の人々との触れ合いが待っているアレンテージョ地方の旅。
「今まで知らなかったピュアなポルトガル」がきっと見つけられるはずです。
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