こんにちは!元ポルトガル在住ののぶよ(@nobuyo5696)です。
ポルトガルの中で観光客が少なめなエリアと言えば、南部に広がるアレンテージョ地方。
広大な農地がどこまでも広がる場所で、ポルトガル最大のワインの産地としても知られています。
そんな穴場のアレンテージョ地方の中でも一番の穴場観光エリアと言えるかもしれないのは、「古城街道(Rota dos Castelos)」でしょう。
アレンテージョ地方らしい農村風景と、中世の雰囲気をそのまま残す人口数百人ほどの村々が点在する古城街道は、近年のグリーンツーリズムの流行によって注目を浴びつつあるエリアです。
その名の通り、ほとんどの村が中世の城塞を持つのも特徴。
村の雰囲気も中世そのままの素朴なもので、数百年以上も変わらない風景が魅力的な、ポルトガル好きにはぜひおすすめしたい旅行先です。
今回の記事では、日本ではほとんど知られていない超穴場エリアの古城街道沿いの村々を紹介していきます。
上手なまわり方やアクセス方法も解説しているので、人とはちょっと違う中世ポルトガルの世界を旅したい人は参考にしてください!
ポルトガルの古城街道とは?
かつての国境防衛の最前線!古城街道の村々の歴史
ポルトガルで最大の面積を誇るアレンテージョ地方の東部。
スペインとの国境近くに点在する村々を指して「古城街道」と呼びます。
8世紀~12世紀にかけて、イスラム教徒であるムーア人の支配下にあったこの地方。
見晴らしがよく、敵が攻めて来づらい丘の上に、現在の城塞の基礎となる砦が建設されました。
12世紀のレコンキスタ時代には、「恐れ知らずのジラルド」と称される英雄の活躍によって、ポルトガル王国の支配下に入ったこの地方ですが、その後は隣のカスティーリャ王国(現在のスペイン)の侵略を恐れる時代が続きました。
当時は大航海時代の前で、独立してレコンキスタを完了したばかりの弱小国家であったポルトガル王国は、このエリアを国境防衛の重要地点と定めます。
当時のポルトガル国王たちが命じたのは、もともとムーア人が建設した砦を改装して城塞を造り、その城壁の内側に村を整備することでした。
中世から大航海時代、近代へと時代が移るにつれて、防衛地点としての役割が薄まった村の城塞は徐々に忘れ去られ、多くが廃墟と化します。
リスボンなどの都市部とは距離があったため、大航海時代の莫大な富の恩恵をあまり受けずに中世そのままの雰囲気で現在に姿を残すこれらの村々。
現在ではその歴史的価値や素朴な雰囲気が注目され、「古城街道」として観光PRがされつつあります。
古城街道観光マップ
ヴィラ・ヴィソーザ
古城街道の最も北に位置するヴィラ・ヴィソーザ(Vila Viçosa)は、中世ポルトガルの王家が住んだ邸宅と城塞を中心に広がる小さな町。
古城街道エリアでは最もアクセスが良い町で、エヴォラやエルヴァス、エシュトレモシュなど、アレンテージョ地方北部の観光エリアとセットでまわることも可能です。
ブラガンサ侯爵王宮
現在でこそ小さな田舎町といった雰囲気のヴィラ・ヴィソーザですが、ポルトガルの歴史において重要な役割を担っていました。
というのも、1640年~1910年に渡ってポルトガル王家の座にあったブラガンサ家の本拠地であるため。
つまり、歴代のポルトガル国王の実家がある町といったところです。
町の中心にあるブラガンサ侯爵王宮(Paço Ducal de Vila Viçosa)がその「実家」にあたる場所で、大航海時代真っ只中の1502年建造のもの。
パステルブルーの優雅な外観や、贅を尽くした内装が当時のブラガンサ家の権力を象徴しています。
ヴィラ・ヴィソーザ城
ブラガンサ侯爵宮殿と並ぶヴィラ・ヴィソーザの見どころが、ヴィラ・ヴィソーザ城(Castelo de Vila Viçosa)。
14世紀に当時の国王であるディニス1世により、国境防衛の目的で建設されたものです。
頑丈そうな城門をくぐると、城壁内にも民家が建ち並び、現在でも生活している人がいることに驚かされます。
ここが、ヴィラ・ヴィソーザの始まりの地。
城塞ではもともとはブラガンサ侯爵家が生活をしていたのですが、15世紀~16世紀頃にポルトガルが大航海時代で力をつけた後は、先述の宮殿が建設され、侯爵家はそちらに移ることとなりました。
ヴィラ・ヴィソーザのその他の見どころ
時間があるなら、ヴィラ・ヴィソーザの町をもう少し散策してみましょう。
人口1000人ほどの小さな町ですが、ブラガンサ侯爵家を輩出した地らしい優雅な雰囲気が漂う町並みが魅力的です。
町の規模の割には、多くの教会や礼拝堂が点在しているのもポイント。
アレンテージョ地方の田舎町ではなかなか見られない、アズレージョ(タイル装飾)で飾られた建物もあり、王家の町らしい品格が感じられます。
中世ポルトガルを感じられる宿泊施設があるのもヴィラ・ヴィソーザの魅力の一つ。
ブラガンサ侯爵宮殿脇には、かつての修道院を改装したポサーダ(Pousada)と呼ばれる宿泊施設があるのです。
中世の修道院そのままの外観も圧巻ですが、宿泊者だけが味わえる内部の中世の雰囲気も素晴らしいそうですよ。
古城街道の北端に位置するヴィラ・ヴィソーザは、南に点在する村へのバスが出る観光の拠点としても便利な町。
これから先の中世の村観光の下準備もかねて、中世の修道院に宿泊するのも素晴らしい体験となることでしょう。
アランドロアル
ヴィラ・ヴィソーザの南10kmほどの場所に位置するアランドロアル(Alandroal)は、5000人ほどの人々が生活する静かな町。
町の中心にあるアランドロアル城は圧巻で、古城街道に点在する数々の城塞の中でも一、二を争う見ごたえです。
アランドロアル城の敷地内には、14世紀建造の教会が残っており、屈強な城壁とのコントラストも見逃せません。
アランドロアル城
昔も今も、アランドロアルのシンボルであり続けるアランドロアル城(Castelo dos Alandroal)は、1298年完成のもの。
ゴシック様式の外観が特徴的で、楕円形の敷地を高い城壁が取り囲んでいます。
城壁と一体化したように建つ教会は、かつてアランドロアルの信仰の中心とされていた場所。
現在でも見学可能ですが、外観とは打って変わり内装はごく普通でした。
17世紀頃になると防衛地点としての重要性が失われたアランドロアル。
城塞内が廃墟となったのもこの時代のことでした。
テレナ
アランドロアルから古城街道を南に進むこと10kmほど。
丘の上の細長い地形に広がるテレナ(Terena)の村に到着します。
村の端に建つテレナ城の城壁からは、アレンテージョ地方らしい農村風景を一望することができます。
城塞ももちろん素晴らしいですが、テレナの一番の魅力は、時が止まったような村の風景にあるでしょう。
観光地化は全く進んでいない「白い村」は、中世そのままの雰囲気。
鶏の鳴き声や村人の話し声くらいしか聞こえない静けさも、存分に味わいたいものです。
テレナ城
1262年建造のテレナ城(Castelo de Terena)は、中世の趣をそのままに残す場所。
先述のアランドロアル城とともに、ポルトガルの国境防衛の拠点として建設されたものです。
城壁の上からは、アレンテージョ地方らしい荒涼とした大地に農地が広がる風景を一望することができます。
スペインとの国境にもほど近く、奥の方はもうスペイン領。
ここがいかに大切な防衛拠点だったのか実感させられました。
城壁の反対側からは、丘の上に縦長に広がるテレナの真っ白な町並みを一望することができます。
テレナの町並み
アレンテージョ地方には「白い村」がいくつも存在していて、後述するモンサラシュのように観光スポットとして有名になってきているものもあります。
一方のテレナも典型的な「アレンテージョ地方の白い村」なのですが、観光地としては全くもって無名なため、本来の素朴な村の雰囲気が色濃く残っているのが特徴的です。
人口百人ほどのとても小さな規模の村は、どこまでも静かで飾り気のないもの。
古城街道沿いの村の中でも、最も中世ポルトガルの雰囲気をそのままに残している感じがしました。
真っ白な村のどこからでもテレナ城の堂々たる佇まいを眺めることができるのもポイント。
どこを切り取っても絵になる、素敵な町でした。
モンサラシュ
古城街道観光のハイライトであり、観光客にも知名度が高いモンサラシュ(Monsaraz)。
テレナの南25kmほど、アルケヴァ湖というヨーロッパ最大の人造湖を望む丘の上に造られた真っ白な村です。
素晴らしい保存状態のモンサラシュ城は、敷地内に闘牛場がある珍しいもの。
真っ白な村の風景と、アルケヴァ湖のパノラマを一望できる絶景ポイントでもあります。
アクセスは古城街道沿いの村の中でも最も不便な部類ですが、苦労してでも足をのばす価値はアリ。
まるでタイムスリップしたかのように感じる白い町のポストカードのような風景は、感動すること間違いなしです。
モウラン
モンサラシュからアルケヴァ湖に架かる唯一の橋を渡った東側に位置するモウラン(Mourão)は、スペインとの国境までたった5kmほどしか離れていない小さな村。
アルケヴァ湖を見渡す丘の上に建つモウラン城が村のシンボルで、観光名所もここぐらいしかありませんが、ゴシック様式の城塞は見ごたえ抜群。
城塞は小高い丘の上にあるので、モウランの町やアルケヴァ湖の絶景を見ることもできます。
モウラン城
ムーア人によって建設されたことに起源を持つモウラン城(Castelo de Mourão)は、中世初期に改装され、ゴシック様式の傑作とも言える現在の姿となりました。
モウラン城は、古城街道の他の城塞とは少々異なった歴史を持ちます。
16世紀後半になると、大航海時代の終焉とともに国力がみるみる低下していったポルトガル。
そこに目を付けたのが、隣国スペインと同君連合(異なる国同士を同じ王の下の支配とする同盟)を組んでいたオーストリア帝国のハプスブルク家でした。
ポルトガルを隣国スペインの同君連合として組ませることで、その支配力をイベリア半島全域に拡大しようとしたのです。
同君連合とはいえ、ある程度の自治権は保たれていたポルトガルでしたが、スペイン国境からすぐそばのモウラン城では、スペイン・ハプスブルク家の影響がかなり大きかったのです。
モウラン城の入口にあたる門の塔は、13世紀後半のもの。
城壁はかなりの高さですが、自由に登ることができます。
城塞内はもはや荒れ地のような雰囲気で保存状態は良いとは言えないものの、ハプスブルク家支配下の17世紀に建設された教会は美しい状態で残されています。
城壁上は、アルケヴァ湖をすぐ近くに望む絶景ポイント。
対岸の丘の上には、モンサラシュの村をかすかに確認することができます。
モウラ
古城街道の南端に位置するのが、モウラ(Moura)の町。
人口1万人ほどの田舎町で、周辺には農地に囲まれたアレンテージョ地方らしい風景が広がります。
モウラ城塞
モウラの町を一望する高台の上に建つのが、1295年建造のモウラ城塞(Castelo de Moura)。
城壁こそ再建されてはいるものの、内部の保存状態はあまり良いとは言えません。
敷地内にはかつての修道院の跡がそのままに残されていました。
モーラ城塞の入口近くには、ゴシック様式の時計台が建っています。
この時計台周辺は、モウラの町を一望する絶景ポイント。
広大なアレンテージョ地方の大地に囲まれた町を眺めながら、ここまでの古城街道の旅を振り返るにはぴったりの場所です。
古城街道のまわり方(エリア内交通・アクセス)
公共交通手段が発展していない古城街道の村々へのアクセスに便利なのはレンタカー。
個人で公共交通手段を利用してアクセスする場合は、とにかくバスの本数が少ないので、事前の計画が重要となります。
ここでは、個人でバスを使って古城街道をまわる人のために、
古城街道エリア内の交通情報
リスボンから各町へのアクセス情報
を解説します。
絶望的に交通の便が不便なこのエリア。リスボンから日帰りで訪れるならツアー参加しか方法がありません。
モンサラシュ観光はもちろん、エヴォラ観光やワイナリー見学、6000年前のストーンサークルを訪れるものまで種類があります。
基本的にプライベートツアーとなりますが、グループごとの料金なので、大人数の場合はかなりお得になるのもメリット!
古城街道エリア内交通
その他:Rodalentejo社路線バス(平日のみ)
上の路線図を見れば、古城街道沿いの交通状況がわかってきます。
リスボンやエヴォラなど他都市とのアクセスが良いのは、
ヴィラ・ヴィソーザ
レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュ
の二つ。
このいずれかの町に宿泊をするのが、効率良いプランニングのポイントです。
古城街道観光の基本!8931番バス
古城街道最北端のヴィラ・ヴィソーザ~モンサラシュへバスが出ている唯一の町、レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュ(Reguengoz de Monsaraz)間を走るのが、Rodalentejo社の8931番バス。
ヴィラ・ヴィソーザ~アランドロアル~テレナ~レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュを結ぶもので、古城街道北部の観光には利用価値アリです。
とは言っても、1日3~5本と本数はとても少ないのでご注意を。(時刻表はこちら)
モンサラシュへ行くなら!8930番バス
古城観光のハイライトであるモンサラシュ~レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュを結ぶ唯一のバスが、Rodalentejo社の8930番バス。
1日4本の運行と本数は少ないですが、観光客にとって便利な時間帯にバスがあるのがポイントです。(時刻表はこちら)
モウランへ行くなら!8902番バス
古城街道南側のモウランへのアクセスは、レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュ~モウラン~アマレレジャ(Amareleja)間を結ぶRodalentejo社の8902番バスを利用します。
1日3~4本の運行と本数が少ないので、利用する際は綿密なプランニングを。(時刻表はこちら)
モウラン~モウラ間の直行バスはないため、アマレレジャという町で乗り換える必要があり、この地域の移動はとても不便です。
モウラへ行くなら!8607番バス
モウランからモウラへと移動したい場合は、先述の8902番バスでアマレレジャ(Amareleja)まで行き、8607番バスに乗り換えてアクセスする必要があります。
本数は1日3本&時間帯が微妙ということで、この区間の移動はかなり不便です。 (時刻表はこちら)
モウラ~ベジャ間の移動なら!8607pe番バス
モウラがある地域の中心都市であるベジャ(Beja)は、リスボンへの長距離バスが出ている地方都市。
リスボンから古城街道南側のモウラへアクセスする際には必ず経由することとなります。
Rodalentejo社の8607pe番バスが1日6本運行しています。(時刻表はこちら)
ポルトガル各都市~古城街道のアクセス・行き方
古城街道エリアで、リスボンやエヴォラなどポルトガル他都市とのアクセスができるのは、
ヴィラ・ヴィソーザ
レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュ
くらい。
どちらの町にもRede expressos社の長距離バスが停車します。
その他の小さな村へのアクセスは、いずれかの町で先述のRodalentejo社の路線バスに乗り換えてのアクセスとなります。
ヴィラ・ヴィソーザ~ポルトガル各都市
・ヴィラ・ヴィソーザ~リスボン
運行頻度:1日1本
所要時間:3時間
料金:€14.30(=¥1696)
・ヴィラ・ヴィソーザ~エヴォラ
運行頻度:1日1本
所要時間:1時間
料金:€9.10(=¥1079)
・ヴィラ・ヴィソーザ~エルヴァス
運行頻度:1日1本
所要時間:35分
料金:€6.70(=¥795)
レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュ~ポルトガル各都市
・レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュ~リスボン
運行頻度:1日2便
所要時間:2時間30分
料金:€14.30(=¥1683)
・レゲンゴシュ・ドゥ・モンサラシュ~~エヴォラ
運行頻度:1日2本
所要時間:45分
料金:€6.70(=¥788)
おわりに
個人ではなかなかアクセスしづらい古城街道ですが、苦労して訪れる価値は十分にあります。
観光地化された「中世の村」とは全く異なる、素朴な雰囲気に包まれていると、「わざわざ来てよかった」ときっと思うはず。
モンサラシュを除いて現地ツアーも出ていないので、できれば車を借りて周遊するのがベスト。
アレンテージョ地方の農村風景を眺めながらのドライブもなかなか気持ちの良いものですよ。
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