こんにちは!フランス語でどうにか食いつなごうともがいている、のぶよ(@nobuyo5696)です。
フランス語をある程度学習していると、誰もが突き当たる壁があります。
それは、「自分に合った学習素材が見当たらない!」というもの。
参考書やリスニング教材などが充実している英語に比べると、フランス語中級以上の学習教材はかなり限られているのが現状です。
特に、生きたフランス語に触れられる機会は、現地に居なければかなり少ないと思います。
Netflix等を利用して、フランス映画を字幕付きで見る
フランス語のニュースやラジオを視聴する
フランス語会話教室に通う
など、フランス語をブラッシュアップする方法は数多くあるものの、それが本当に「生きたフランス語に触れる」ということにつながるのかは疑問なところ。
映画ではストーリーに合わせた、普段は使わない独特な表現や気取った言い回しが多くありますし、ニュースで使われる単語は日常会話では用いられないようなものも多いです。
フランス語会話教室に通ってネイティブの発音や表現を学ぶのも良いですが、いかんせんお金がかかりますよね。
そこでのぶよがおすすめしたいのが、フランス語のクール・メトラージュ(court-métrage)を視聴すること。
ある程度フランス語の文法や単語を学んだ中級以上の人にとって、生きたフランス語を短いスキマ時間で学ぶことができ、フランス語圏の文化にも触れられるという素晴らしいものです。
しかも完全無料で。(これが一番大切)
クール・メトラージュとは「短編の映像作品」!
「クール・メトラージュ(court-métrage)」という言葉は日本ではあまり知られていませんが、フランス語圏ではかなりポピュラーな映像作品のジャンル。
英語で言う”Short film”にあたり、日本語にすると「短編映画」といったところでしょうか。
「何分以内の作品」といった明確な定義はなく、一般的な映画に比べて短い時間で一話完結の映像作品を指すことが多いです。
10分以内の短いものから、20分ほどのものまで作品によって長さはことなりますが、だいたい15分ほどの長さの作品が多いように感じます。
フランスをはじめ、お隣のベルギー、カナダのケベック州でもかなり盛んに制作されており、その多くがYoutube等の動画サイトで無料で公開されており、もちろん合法的に視聴することができます。
フランス中部のクレルモン・フェランという町や、ケベック州の中心都市であるモントリオールでは、毎年夏にクール・メトラージュのフェスティバルが開催されるほどポピュラーな文化となっています。
フランス語学習にも使える!クール・メトラージュの5つの魅力
ひとことで言うと、「フランス語圏の短編映画」であるクール・メトラージュ。
ここからは、クール・メトラージュが持つ5つの魅力を解説していきます。
生きたフランス語に触れられ、学習できるのはもちろんのこと。
映画好きにもきっと楽しんでもらえるはず!
1.短い時間にギュッと詰まった物語性
映画でフランス語を学ぶのはとても良いやり方だと思います。
Netflixを利用すれば字幕の有無を選択できますし、何よりも映画の世界にどっぷりと浸ることができます。
一方で、のぶよのように集中力があまり続かないタイプの人間にとって、1時間半や2時間の間、外国語で映画を鑑賞し続けるのは結構苦痛。
ストーリーに入り込めれば良いのですが、その映画がハズレだった場合は、なんだか時間を無駄にしてしまったような気分になることもあります。
一方のクール・メトラージュの作品の多くは、10分~20分ほどの短いもの。
しかも基本的に一話完結なので、起承転結の全てがこの短時間で繰り広げられるのです。
もしもその作品が自分の趣味に合わない「ハズレ」であっても、10分やそこらならフランス語学習のためと割り切って観続けることができますし、「ちょっと時間あいたし、勉強がてらクール・メトラージュでも見るか~」という軽いノリで見始めることができます。
また、クール・メトラージュを作成する側も、「限られた時間の中でいかにストーリーに幅を持たせて面白い作品を創るか」という点に焦点を当てるため、冗長なストーリーや無駄なシーン(フランス映画あるある)は極力減らされる傾向にあります。
したがって、必然的に登場人物の会話の場面が多くなり、短い時間でも「生きたフランス語」をたくさん吸収することができるのです。
「よし、映画観るぞ~」という決意めいたもの(と、ポップコーン)が必要となる長編映画に対して、肩肘張らずに軽い気持ちで流し見できるのはクール・メトラージュの魅力の一つでしょう。
2.その国のリアルな文化や生活感が味わえる
長編映画とクール・メトラージュの違いは、その作品の長さという物理的なものに限りません。
長編映画の世界感は、どちらかというと「非日常」を演出したものが多く、私たちもその非日常感を楽しむことが鑑賞の目的の一つと言えるでしょう。
(もちろんドキュメンタリー映画などリアリティーを追求したものもありますが)
一方のクール・メトラージュの世界観は、あくまでも私たちの「日常」に焦点が当てられたものが多いのが特徴です。
非日常の世界観を演出するためには時間が短すぎるため、視聴者が入り込みやすい「日常の風景」をベースに撮影されているのです。
つまり、クール・メトラージュの作品内の光景や人々の行動、発言などは、限りなくその国のリアルに近いということ。
誰も「エクスペクト・パトローナム…!」とか言いませんし、アメリカ映画によくありがちな「恋に仕事に忙しい私…!」なんて実際には存在しないような陽キャラ主人公が出てくることも稀です(笑)
フランスというとお洒落で優雅で洗練されていて…というイメージがありますが、クール・メトラージュの作品内で表現された「フランス」はあくまでも人間くささがあったり、ほど良く汚かったり(褒めてます)と、実際の国を忠実に表しています。
日常感あふれるシーンの数々に、その国の人々のリアルな生活や文化が感じられ、まるで自分もその一部を追体験しているように感じられるかもしれません。
3.多彩な表現方法に見られる若き才能
クール・メトラージュの作品を創り上げているのは、ほぼすべてが若手アマチュアの監督や役者ばかりなのも特徴的。
そのため制作予算も限られているのが普通で、「あるテーマをいかに他と違う切り口で表現するか」という点に重点がおかれます。
「金がないなら頭を使え」と言われるように、若き才能による創造性や独自性を直に感じることができるのも、クール・メトラージュの魅力の一つでしょう。
テレビドラマや映画など多くの人に見られる作品は、莫大な予算をかけて撮影することが可能でである一方、それだけ多くの制約や配慮、モラルが求められるもの。
冗談のつもりのセリフが一部の人に不快に捉えられてバッシングを受けたり、スポンサーに配慮しなければならなかったりするのは、日本の映像業界だけのことではありません。
その点、クール・メトラージュはどこまでも自由。
テレビや映画ではタブーとされる話題や言葉もよく使われますし、インパクトを与えるセリフや表現方法にハッとさせられることも多いです。
フランス語を学習している私たちが真似して汚い言葉を使う意味はありませんげ、それも含めて、その国の文化。
小奇麗にまとまった映画やドラマのように制限されることが少なく、若き才能が存分に発揮されたクール・メトラージュの作品では、監督・演者の個性が光る作品を目にする機会も多いです。
自分の好みのクリエイターを探すのも楽しいですよ。
4.会話で使われるリアルなフランス語を学べる
先述の通り、クール・メトラージュは人々の日常生活の一コマに焦点が当てられたもの。
ヒューマンドラマの性格が強い作品が多く、そのストーリーは登場人物間の会話をベースに進展していくことが多いです。
つまり、参考書で勉強するような凝り固まった表現や、映画で使われるような気取った表現などは見られず、その国の人々が日々の生活で使う単語や表現が用いられるのが特徴。
どこまでもリアリティーを追求した作品が多いので、日常で使われないようなぎこちない表現や難しすぎる単語は極力省かれるのです。
単語や表現の難易度こそ高くないものの、すべてを100%理解するのは至難の業。
スラングやその国の人だけがわかるネタも組み込まれており、何よりも会話のスピードが鬼のような速さです。
裏を返せば、それがネイティブにとっての「普通の会話」であり、フランス語教室やリスニング教材では触れることができないもの。
学習者向けの教材ではスピードがかなり抑えられていますし、もちろんスラングも使われません。
フランス語教室の先生も、ネイティブ同士で話すよりもゆっくりと話しているのは当たり前でしょう。
「生きたフランス語に触れたいなら、クール・メトラージュの作品内の会話くらいは理解できないといけない」という指標になるのは言わずもがな。
参考書では学べない会話表現や、シチュエーションによる単語の使い分けなどに直に触れることができるのです。
5.強いメッセージ性を持ったテーマについて考えることができる
クール・メトラージュの魅力の最後の一つが、作品内で表される強いメッセージ性でしょう。
作品のテーマの多くは、私たちの日常生活の中にある疑問点や社会問題に対しての切り込みであったり、クリエイターの主張であったりと様々。
監督によるメッセージの種類こそ異なれど、「この作品を通してこれは絶対に伝えたい!」という気持ちが伝わってくる点は共通しています。
(「退屈で盛り上がりに欠ける」と酷評されるフランス語圏映画においては画期的なことかも)
10分~20分という短い時間内で、しかも日常生活にスポットライトを当てながら、効率良くメッセージを視聴者に伝えるということは、簡単に見えて意外に難しいこと。
ここでも、先述の通り各クリエイターの才能が発揮されるわけです。
エンターテイメントとして楽しむというよりも、もはや一つの学習教材なのかもしれないクール・メトラージュ。
生きたフランス語に触れながら、その国の日常を垣間見ることができ、その国が抱える社会的な問題や人々の考え方に関しても理解を深めることができる、「総合的言語&文化学習・時短エンターテイメント」と言えるのかもしれません。
フランス語圏のクール・メトラージュおすすめ5作品
映画の専門家でもなんでもないのぶよが、「クール・メトラージュ × フランス語学習」というテーマで色々語ってきました。
映画に詳しい人からすると「この小童が!何語っとんねん!」といった感じでしょうが、そこはご容赦を(笑)
ここでは、のぶよが個人的におすすめするクール・メトラージュ作品を5つ紹介します!
どの作品も10分~20分ほどの短いものなので、気軽に視聴することができると思います。
1.La Grande Ourse / フランス
クレルモン・フェランで2017年に開催されたクール・メトラージュ・フェスティバルに出品されたLa Grande Ourse(=「おおくま座」)は、7分余りの短い時間にドラマと驚きが詰まった作品。
洗練された映像美と音楽がとてもフランスらしく、物語の世界にすぐに入り込むことができます。
最後の結末には驚きのひとこと。
よく考えるといくつもの伏線が張られていたことに気が付くでしょう。
のぶよ的には「うわ~フランスだわ~」と感じました。(褒めてます)
限られた時間でここまでの表現ができるという点に、クール・メトラージュの可能性を感じさせる作品です。
あらすじ
フランス地方部の美しい自然風景の中をドライブする男女二人。
「静かで広い場所」を探し求めて、花畑や草原などを訪れるものの、なかなか「理想の」場所が見つかりません。
作品後半で、ようやく探し求めていた場所を見つけた二人。
美しい風景の中でエンディングを迎えるのかと思いきや、驚きの事実が…。
2.Fred et Marie / ベルギー
ベルギーのクール・メトラージュであるFred et Marie(=「フレッドとマリー」)は、社会的問題に切り込んだ作品。
肉体的な暴力だけではなく、心理的に相手を傷つける「心理的DV」や「言葉の暴力」に対する啓発作品といったところで、妻に見えない圧力を与えて支配しようとする夫の姿が描かれています。
終わり方は何だか尻切れ感が漂いますが、実はこちらの作品は二部構成のうちの一つ。
もう一つの”Marie et Fred”(=「マリーとフレッド」)という作品も、合わせてチェックしていただきたいです。
あらすじ
マリーとフレッドは、子供のいない夫婦。
結婚5年目を迎え、友人を自宅に招いてのパーティーを計画しています。
一見幸せそうに見える二人ですが、マリーにはある悩みが。
夫のフレッドの心ない「言葉の暴力」に苦しめられ続けていたのです。
パーティーの場で、友人たちと盛り上がるフレッドとは裏腹に、マリーの表情は暗いまま。
無神経な夫の言葉から逃げるようにその場を後にした彼女がとった行動とは…?
3.Respire / フランス
続いても後味悪い系の作品を。
(のぶよの性格がおわかりいただけるのでは(笑))
フランス発のクール・メトラージュである“Respire”(=「息をする」)を紹介します。
ストーリー的にはまあ普通といったところなのですが、準主役のおばあちゃんのキャラが秀逸すぎるのでピックアップ。
2:45あたりののおばあちゃんの一言と表情は、強烈なインパクトを与えてくれます(笑)
「自由を奪われても生きることを選ぶのか、命を失っても自由を選ぶのか。」
そんな深いテーマについて考えさせられる作品でもあります。
あらすじ
喘息もちで病院暮らしのアントワーヌは、多感なティーンエイジャー。
健康な子と同じようにランニングをしたくてもできない自分の身体に苛立ちを抱えています。
そんなアントワーヌをさらに苛立たせるのが、同じ病院に入院しているマダム・オーギュスタンというおばあちゃん。
「死ぬことなんて何も怖くない!自由に生きさせろ!」と看護師につっかかるような人で、大音量でラジオを流して歌ったり、公共スペースでタバコを吸ったりするモンスター患者です。
ある日、病室の金魚鉢を見た二人はこう言い合います。
「この金魚たちは幸せなのか?自由もなく、ずっとこんな狭いところで泳がされているだけなのに。」
「自由になりたい。」
そう強く感じた二人は、夜中に病院を抜け出して…?
4.POURQUOI MON FILS ? /フランス
次に紹介するのは、「自分の子供が同性愛者だと知った父親」に焦点を当てたフランスの作品、“Pourquoi mon fils?”(=「どうして我が子が?」)。
現在でこそLGBTQが広く受け入れられつつあるものの、地方部ではまだまだ偏見が消えたとは言い切れないフランス。
「もしも自分の息子が同性愛者だったら…」という親心を反映したようなこのテーマについて、一種の回答を与えるような作品です。
映像はやや粗削りで、音楽も少々やり過ぎ感があるのは否めませんが、ストーリーがとにかく秀逸。
中盤の学校の哲学の授業のシーンでのプラトンの一説の引用が、この作品の核となっていることに気が付くでしょう。(すごくフランスっぽい)
感情に任せるがままの登場人物の会話が進む場面も多く、フランス語の難易度は少々高めかもしれません。
あらすじ
ティーンエイジャーのトマは、フランスの地方部で父親と二人暮らし。
自分が同性愛者であると自覚し、友人のニコラと少しずつ関係を深めていきます。
ある朝、父親にカミングアウトをする決意をしたトマでしたが、典型的な”Paysan”(=「農民」→地方部の保守的、信仰心深い人)である父親は、「それ以上言うな!」と息子がゲイであることを認めずに怒りをぶつけ、それに反抗したトマは号泣して一人学校へと去っていきます。
息子の学校の帰りに迎えに行く車の中で、むせび泣く父親。
どうにか落ち着いて、平然を装いながら息子を乗せた彼は、「死去した妻と自分の思い出の場所」だという荒涼とした丘の上に息子を連れて行き…?
5.RÉVEIL / ケベック
最後に紹介するのが、カナダのケベック州発のクール・メトラージュである“RÉVEIL”(=「目覚まし」)。
はじめから終わりまで安定のケベック感とケベックフレンチで繰り広げられるストーリーは、会話よりもビジュアルで理解できるようになっており、ケベックのフランス語が分からない人でも楽しめる内容になっています。
この作品のテーマは、「大切な人を守るために、勇気を出すこと」の大切さ。
ケベックで常態化している飲酒運転に対して警鐘を鳴らすような内容にもなっています。
フランスのクール・メトラージュは芸術的な側面が強いものも多いですが、ケベックのクール・メトラージュではメッセージ性が強いものも多いのが特徴的です。
途中まではかなりダークな内容に思えるものの、最後にハッピーエンドに(半ば無理やり)持ってくるのも、ケベックらしいなと感じます。
あらすじ
サラとソフィーは同じ高校に通う親友同士。
ある冬の日、友人の家でホームパーティーが開かれることになり、参加することに。
飲みまくって踊りまくるソフィーはもうベロベロ。
にもかかわらず、乗ってきた車で家に帰ってしまい、サラはそれをとめることができませんでした。
運転しながらサラにテレビ電話で連絡をしてきたソフィーの身に起こったこととは…?
おわりに
というわけで、フランス語圏の短編映画作品であるクール・メトラージュの魅力からおすすめ作品まで語りに語ってきました。
紹介した作品は全てYoutubeで無料で視聴できるので、フランス語学習にもエンターテイメントとしてもおすすめです。
同じフランス語圏でも、国によって作品の傾向にクセのようなものがあるのも面白い点。
その国の文化を近くで感じられる点も素晴らしいと思います。
もっと色々な作品を観たい場合は、Youtubeで”court métrage + 国名”でたくさん出てくるので、お気に入りのものを探してみるのもおすすめですよ!
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