こんにちは!元ポルトガル在住ののぶよ(@nobuyo5696)です。
リスボンの北100kmほどの場所に位置するアルコバサ(Alcobaça)は、世界遺産のアルコバサ修道院があることで知られている町。
リスボンから距離が近いこともあって、壮大な建築様式を一目見ようと多くの観光客が訪れます。
「ペドロとイネスの悲恋物語」の地としても有名なアルコバサ。
ポルトガル人で知らない人はいない、「桃太郎」のような立ち位置のこのお話は、中部のコインブラに始まり、ここアルコバサで終わる実話を元にしたものなのです。
美しくも哀しい愛の終着点が見られる世界遺産のアルコバサ修道院の見どころや、他都市からのアクセスを解説していきます。
アルコバサ修道院見学前に知っておきたい!「ペドロとイネスの悲恋物語」
アルコバサ修道院は、12世紀にポルトガル初代国王・アフォンソ1世の命により建設されたもの。
ポルトガルで最も古いゴシック様式の建造物の価値が認められ、世界遺産に登録されています。
そんなアルコバサ修道院を特徴づけるのが、ポルトガル人ならだれもが知っている「ペドロとイネスの悲恋物語」の存在。
14世紀に隣国のカスティーリャ王国(現在のスペイン)の王家のコンスタンサと婚姻関係にあったポルトガル王子のペドロが、この物語の主人公です。
コンスタンサという妻がありながら、イネス・デ・カステロという女官と禁断の恋に落ちてしまったペドロ。
それを知ったポルトガル国王である父・アフォンソ4世は、カスティーリャ王国との関係悪化を厭い、家臣にイネスを暗殺することを命じます。
コインブラの涙の泉という場所で殺害されたイネス。
それを知ったペドロ王子は激しい怒りに駆られ、復讐を決意します。
父アフォンソ4世が間もなく亡くなり、自身がペドロ1世としてポルトガル国王の座に就くや否や、イネスの殺害に加担した父の家臣を次々と残虐な方法で処刑していったのです。
正妻であるコンスタンサの没後は、「イネスとは正式な婚姻関係にあった」と主張したペドロ。
コインブラの教会サンタ・クララ修道院にあったイネスの墓から遺体を掘り出させ、自身の正妻としての位を与える戴冠式を行ったというのですから、常軌を逸しています。
1360年。
ペドロはイネスの遺体をここアルコバサの修道院に移し、精密なレリーフが描かれた二つの棺のうちの一つに納めさせます。
その七年後にペドロ1世も亡くなり、その遺体は遺言通り、アルコバサ修道院に残るもう一つの棺に納められました。
現在でもこの二つの棺は修道院内に残っており、二つが向かい合う形で置かれています。
これは「いつか最後の審判が下ってこの世に生まれ変わる際に、起き上がって最初に目にするのがお互いの姿であるように」とのペドロ1世の願いによるもの。
二つの棺で今も眠り続ける二人の男女は、この世でお互いに再会するための永遠の時を待ち続けているのです。
ポルトガル人は誰でも知っているこのお話、全て実話だという点もポイントです。
ポルトガル人の間では、コインブラのペドロとイネスゆかりの地を観光→アルコバサ修道院を観光という、二人の悲恋を追うコースが定番となっています。
アルコバサを訪れたなら、ぜひコインブラにも足をのばして、彼らの物語をたどってみてはいかがでしょうか。
世界遺産のアルコバサ修道院の見どころ
というわけで、アルコバサ修道院観光のハイライトとなるのは、ペドロとイネスが眠る二つの棺です。
それ以外にも、中世そのままの雰囲気の修道院の建築はとても美しく、興味深いです。
青い空に映える白壁の修道院部分と、18世紀になって再建されたバロック様式のファサードが不思議なコントラストを醸し出す修道院の正面はとにかく圧巻。
内部に入場すると、中世の修道院の暮らしを想像できるような厳かな世界が広がっています。
修道院部分
アルコバサ修道院は主に二つの部分に分けられます。
ペドロとイネスの棺がある聖堂部分
中庭を取り囲む回廊と修道院部分
ハイライトの聖堂部分は最後にとっておいて、まずは中世そのままに残された修道院部分を見学していきましょう。
回廊、中庭をはじめ、いくつかの部屋や通路、塔などが一般に開放されており、自由に見学することが可能です。
こちらは、修道院の台所部分。
中央の巨大な柱のようなものは、煙突です。
内部が空洞になっており、修道僧たちは煙突の下で火をおこして調理していました。
水回り部分も800年前のままに残されています。
周囲の壁がアズレージョ(ポルトガル伝統のタイルアート)で飾られてはいるものの、修道院らしい質素な装飾に留められています。
中庭&回廊
完璧な状態で残された二層構造の回廊に取り囲まれた中庭も見逃せません。
オレンジの木などが植えられており、温暖なポルトガルらしさが感じられます。
誰もいない回廊は、とても神秘的な雰囲気。
リスボンのベレン地区にあるジェロニモス修道院と似た雰囲気が感じられます。
観光客の姿は少なく、ゆっくりと見学できるのが嬉しい点。
ほとんどの観光客は団体ツアー客で、聖堂部分だけを見て帰ってしまうことも多いためです。
聖堂
中世の修道院の雰囲気を十分に感じたら、いよいよハイライトとなる聖堂部分を見学しましょう。
ゴシック様式の聖堂内は、白を基調としたモノトーンで厳かな雰囲気。
聖堂の奥の左右の翼廊部分に設置されているのが、ペドロとイネスの棺です。
こちらが、悲恋物語のヒロインであるイネス・デ・カステロの棺。
精巧に掘られたレリーフがとても美しく、言葉を失うほどです。
イネスの棺の反対側の翼廊には、ペドロ王子の棺が置かれています。
お互いの身体は足を向けあう形で安置されているそうで、いつかこの世に蘇った際には確かに相手の顔が一番最初に目に入ります。
こちらがペドロの棺。
棺のデザイン自体はイネスのものとは異なりますが、聖書内のシーンを表した精巧な装飾がされているのは同じです。
700年以上もの間、お互いに足を向けて眠り続ける二人。
いつか本当に目を覚まして棺から出てくるのでは?と信じたくなるような厳かな雰囲気に、聖堂中が包まれていました。
時間があるならアルコバサの町を散策!
アルコバサ修道院の周りには、小さなアルコバサの中心街があります。
時間が許すなら、ポルトガルらしいアズレージョで飾られたカラフルな町並みを散策してみるのもおすすめです。
ポルトガル地方部の田舎町という雰囲気でいっぱいのアルコバサ。
世界遺産の修道院がある割には、観光地化された雰囲気は感じられません。
ポルトガルらしいのんびりとしたリズムに、町中が支配されているような印象です。
もし時間と体力に余裕があるなら、アルコバサ修道院の入口から見える、丘の上に佇む廃城塞まで足をのばしてみるのもおすすめ。
こちらはアルコバサの町を一望できる絶景ポイントなのです。
緑が美しい大地にひらけたアルコバサの可愛らしい町並みと、存在感抜群の修道院を一望することができますよ。
リスボンから日帰りもOK!アルコバサのまわり方
アルコバサのまわり方&アルコバサ観光マップ
アルコバサはとても小さな町で、観光は全て徒歩で十分です。
他都市からのバスが発着するバス停は、修道院の東300mほどの中心街に位置しています。
青:見どころ
アルコバサ修道院観光は共通チケットがお得!
アルコバサ周辺には他にも見どころがたくさん。
トマールの中世修道院
バターリャ修道院
など、他にも「中世キリスト教建造物群」として世界遺産に指定されている教会や修道院が点在しています。
これら三つの修道院をまわるなら、全てに入場可能な共通入場チケット購入がおすすめ。
購入から7日間有効で、料金は€15(=¥1784)です。
インフォメーション
アルコバサ修道院
入場料:€6(=¥713)
営業時間:夏期 9:00~19:00/冬季 9:00~18:00
リスボンから日帰りor宿泊?
アルコバサ修道院と町の散策をしても、3時間もあれば十分に観光可能なアルコバサ。
リスボンから日帰り往復しても良いのですが、せっかくなら近郊の観光スポットや他の世界遺産の修道院をまわってみるのがおすすめです。
リスボンからの日帰りでアルコバサとセットでまわれるのは、オビドスとナザレ。
バターリャ修道院やトマールのキリスト教修道院、聖地ファティマなどエリア内全ての見どころをまわりたい場合は、このエリア内のどこかの町に宿泊するか、リスボン発の現地ツアーに参加するのが基本となります。
アルコバサには宿が少なく見どころが限られているので、宿泊先としては微妙。
大西洋沿いのナザレがおすすめです。
リスボンからの日帰りも可能なナザレですが、のんびりとした町の雰囲気を味わいながらのシーサイド・ステイもおすすめです。
夏場のハイシーズン以外はホテルもかなりリーズナブルで、ドミトリータイプのホステルもあるので節約派でも大丈夫!心ゆくまで素朴な白い町を堪能できます。
アルコバサへの行き方&近郊の見どころ
リスボン~アルコバサのアクセス
リスボン~アルコバサ間は、ポルトガルの長距離バス路線を独占するRede Expressos社のバスが運行しており、簡単にアクセス可能です。
ポルトガル北部・中部(ポルト/コインブラ)~アルコバサのアクセス
ポルトガル北部のポルトや中部のコインブラ~アルコバサ間も、Rede Expressos社のバスが運行していますが、本数は少なめ。
ポルト~アルコバサ間直通:1日1便
コインブラ~アルコバサ直通:1日2便
となっているので、北部からアルコバサ方面へ移動する場合は事前のプランニングが必須です。
アルコバサとセットでまわりたい!周辺の観光スポット
ナザレ
オビドスの西、大西洋に面したナザレ(Nazaré)は、素朴な漁村の雰囲気を残したリゾート地。
真っ白な路地が連なる町並みや大西洋の絶景はもちろん、名物シーフードも楽しめるおすすめの町です。
rodoviaria do oeste社が30分~1時間に1本の頻度(平日)でバスを運行しているものの、午後2時以降と土日は大幅に減便となるのでご注意を。
オビドス
村全体が城壁に囲まれたオビドスは、代々のポルトガル王妃の直轄の領土だったという独特の歴史を持つ小さな村。
白い壁に青と黄色が映える可愛らしい町並みが大人気の場所で、「谷間の真珠」と称されることもあるほどです。
リスボン近郊の中距離路線専門のrodoviaria do oesteというバス路線が1日6本、ナザレ~アルコバサ~オビドス間の直行バスを運行しています。
オビドス→アルコバサ・ナザレ方面は本数が少なくとにかく不便なので、反対方向でまわるか現地ツアーに参加してしまうのがおすすめです。
バターリャ
世界遺産の修道院を有するバターリャ(Batalha)は、アルコバサ、トマールの修道院とともにこのエリアの三大修道院を持つ町として有名な場所。
Rodotejo社のバスが、レイリア~バターリャ~アルコバサを結ぶバスを1日3本運行しています。
個人ではまわりにくいポルトガル中部地域。点在する世界遺産の修道院や「谷間の真珠」オビドス、大西洋岸の白い町ナザレなどを日帰りでまわりたいなら、リスボン発着の現地ツアーが最も便利な方法です。
・人気の都市を1日で!オビドス、ナザレ、世界遺産バターリャ、聖地ファティマ1日観光ツアー<昼食付/日本語ガイド/リスボン発>by[みゅう]
おわりに
ポルトガル人ならだれもが知っている悲恋物語の終着点であるアルコバサ修道院の魅力を解説してきました。
世界遺産に指定されている修道院の建物自体も美しく、ロマンティックな愛の物語に彩りを添えているようです。
近郊エリアには世界遺産の修道院や見どころが他にも点在しているのも嬉しい点。
日帰りでも、宿泊しながらののんびり観光でも楽しめるので、リスボン滞在中にぜひ足をのばしてみてはいかがでしょうか。
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