こんにちは!アルメニアに5ヶ月滞在した世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニア北部のロリ地方を東西に隔てるデベド渓谷(Debed Canyon)。
大自然の美しい風景はもちろん、歴史ある修道院が点在しているのも魅力的。
アルメニアの観光ハイライトとなるエリアの一つです。
今回紹介するのは、デベド渓谷をアクティブに楽しみたい人向けのトレッキングコース。
その名も「UNESCO世界遺産トレイル」です。
所要時間4時間/全長8.5kmのトレッキングコースは、初心者~中級者向けの歩きやすいもの。
どうして「世界遺産トレイル」と呼ばれているかと言うと、スタート地点/ゴール地点のいずれもUNESCO世界遺産の修道院であるためです ▼
世界遺産の歴史ある二つの修道院の観光と、デベド渓谷の大自然を一日で楽しむことができるのが、世界遺産トレイルを歩く最大のメリット。
コース上には絶景ポイントや廃教会などの見どころが他にも点在しており、アルメニア全体を見てもトップクラスに面白いトレッキングだと思います。
今回の記事は、ハフパット修道院~サナヒン修道院間の世界遺産トレッキングの情報を解説するもの。
ネット上にはほとんど情報がなく、実際に歩いたうえでのレポートはとても貴重。
同じ区間を旅する人の参考となれば嬉しいです!
世界遺産トレッキングとは?
2つの世界遺産の修道院を結ぶトレッキングコースがどうして無名なのか、不思議に思う人もいるのではないでしょうか。
その理由は、この「世界遺産トレイル」は2020年に整備&オープンされたばかりの新しいものであるため。
そもそもアルメニアを訪れる旅行者が少ないこともあり、まだあまりコースの存在自体が知られていない状況にあります。
実際に歩いてみて感じたのですが、コース上には見どころがたくさん。
それでいて全体を通して歩きやすいので、気軽に挑戦することができます。
今後、人気が出てくるのは間違いなし。
今のうちに歩いておいて、先駆者になるのも良いのかも!
世界遺産トレッキングマップ
青:見どころ
緑線:トレッキングコース
赤:分岐点
世界遺産トレッキングのアドバイス
基本情報
世界遺産トレッキングの概要はこんな感じ。
・所要時間:4時間
・距離:8.5km
・高低差:▲454m ▼429m
・難易度:★★★☆☆
最大の難所は、スタートしてすぐのハフパット修道院~最初のビューポイント間。
一度谷底に下りてまた登らなければならず、体力的に一番きつい場面です。
それ以外は基本的に平坦なコースが続くので、初心者でも問題なく歩くことができます。
世界遺産トレッキングのおすすめ時期
世界遺産トレッキングコースを歩くのにおすすめな時期は、ズバリ初夏(5月~6月)か秋(9月~10月)。
初夏は新緑で彩られた現実離れした風景が見られますし、10月初旬頃は一面の紅葉が見られます。
気温もそこまで高くならないので、快適なトレッキングが楽しめる点も◎
のぶよが訪れたのは11月半ばのことでしたが、一面まっ茶色の物寂しい風景がずっと続いていました。(これはこれで味があって好きだけど)
真夏(7月/8月)でもOKですが、気温がかなり上がるので暑さ対策はしっかりと。
冬場(12月~3月)はコース自体が雪に覆われてしまうため、特別な装備等がなければトレッキングは不可能です。
世界遺産トレッキングコースがあるロリ地方は、アルメニアの中でも降水量が多い地域。
雨に降られてしまうと、せっかくの絶景の美しさが半減&歩きにくいため、できる限り天気の良い日を狙って歩くのがおすすめです。
おすすめの方向・時間帯
今回の記事では、ハフパット修道院をスタート/サナヒン修道院をゴールとしていますが、反対方向に歩くことももちろん可能です。
のぶよ的には、本記事で解説している通りのハフパット修道院→サナヒン修道院の方向がおすすめ。
ほとんどの旅行者は、アラヴェルディ(Alaverdi)の町に宿をとって日帰りでトレッキングをすることになるのですが、アラヴェルディ~ハフパット間のバスは便数に限りがあるためです。
(ハフパット到着後に最終便を逃したら大変なことになる)
いっぽう、アラヴェルディ~サナヒン間は30分に1本の路線バスが走っているため、トレッキング終了後にサクッとアラヴェルディの中心街まで戻ることが可能です。
サナヒン→アラヴェルディ方面の路線バスの最終は、平日18:00/土日16:30と曜日によって変わる点にだけご注意を。
土日の最終バスの16:30に間に合わせて歩くのは結構タイトなので、できれば平日にトレッキングするのがおすすめです!
準備・持ち物
トレッキングコース上には、レストラン等の飲食店はいっさいありません。
(スタート/ゴール地点となるハフパット村とサナヒン村には数軒の飲食店アリ)
飲料水や昼食など、必要なものはすべてアラヴェルディ中心街から持参するのが◎
(途中のアクネル村(Akner)には小さな商店が一軒あり、軽食や飲み物くらいなら購入可能です。)
コース上には飲用可能な湧き水や小川が数か所あるので、あまり大量の飲料水は必要ないと感じました。
装備面では、トレッキングシューズを履いていくのがベスト。
岩場などを歩く場面はないので最悪スニーカーでも大丈夫ですが、夏場はヘビが多く出るそうなので、長ズボン&踵がある靴で歩くのが基本です。
難易度が高いコースではないので、本格的な登山装備は必要ないでしょう。
地図アプリ
今回紹介しているコースだけでなく、アルメニア全土のハイキングコースを徹底的にカバーしている“Hike Armenia”というアプリ(無料)は、アルメニアでハイキングをする人にはもはや必需品。
デザインも秀逸ながら、実用性も抜群なのが素晴らしいところです。
・リアルタイムでハイキングルート(&現在位置)が見られる
・高低差や所要時間など詳細な情報を掲載
・オフラインでも位置情報を取得可能(事前のダウンロードが必要)
・すでに歩いた人からのコメントを参考にできる
アルメニアでハイキングをするなら、ぜひともダウンロードしてフル活用しましょう!
世界遺産トレッキングを歩いてみた
トレッキングコースの基本知識はここまででOK。
ここからは、世界遺産トレッキングコースを実際に歩いた様子&コース上の見どころを詳細に解説していきます。
ハフパット修道院~ビューポイント
世界遺産トレッキングのスタート地点となるのが、ハフパット修道院(Haghpat Monastery/ Հաղպատավանք)。
デベド渓谷をのぞむ崖の上に広がるハフパット村の中央にそびえる修道院は、1000年の歴史を誇るもの。
建築の素晴らしさも、敷地内からの絶景も…文句なしのトレッキングのハイライトの一つです。
個人でアラヴェルディ~ハフパットを移動する場合、最も便利なのがマルシュルートカ(乗り合いミニバス)です。
アラヴェルディ中心街~ハフパットを結ぶのは63番のバス。
平日は1時間~1時間半に1本走っていますが、土日は1日3便と大幅に減便するので注意。
運賃は300AMD(=¥71)です。
ハフパット→アラヴェルディの最終バスは、平日17:00/土日16:00とやや早めなのでご注意を。
63番マルシュルートカの終点は、ハフパット修道院の目の前なのでとても便利。
乗客を降ろしてすぐに、マルシュルートカは再びアラヴェルディに向けて出発します。
ハフパット修道院の見学(所要時間1時間~1時間半)を終えたら、いよいよ世界遺産トレッキングのスタート。
のどかな風景が広がるハフパット村を眺めながら、南へとゆるやかに下る未舗装道路を歩いて行きます ▼
歩き始めて15分ほどで後ろを振り返ると、さきほどまで見学していたハフパット修道院が望めます ▼
だんだんと民家の数は少なくなっていき、徐々にトレッキングコースらしい道に。
ハフパット村の村はずれに到達したら、谷底へと続く急坂を下っていきましょう (標識アリ) ▼
急坂は距離にして400mほどですが、かなりの急こう配。
坂を下りきると、車両通行可能な道路に出るので、左(南)に曲がって50mほど進みます。
すると、谷底を流れる渓流に下りる小道が右手に見えるので、下っていきます ▼
渓流の水はとても清らかで、(のぶよは)普通に飲めます。
周囲に響きわたるのは川の流れる音と鳥のさえずりだけ。
少し休憩していくにはピッタリだと思います。
渓流にかかる橋を渡ったらすぐに、コースは急な上り坂に。
この斜面を登って、ハフパット村と谷を挟んだ対岸に位置するアクネル村へと向かっていきます ▼
上り坂の途中からは、正三角形の山の頂上に建つカヤン城塞が遠くに見えます。
ここまできたら、頂上はもう少しです!
ビューポイント~カヤン城塞
1kmほど続いた急坂を登りきったところには、ちょっとした休憩スペ-スが設置されたビューポイントがあります。
さきほどまで歩いてきた谷の向こうに見えるのは、スタート地点のハフパット村。
ものすごい断崖絶壁を越えてきたことに感動を覚えるかも。
ビューポイントから次のカヤン城塞ビューポイントまでは、完全に平坦な道のり。
断崖絶壁に沿って、北方向に1kmほど歩いて行くだけです。
歩くこと15分ほどで、デベド渓谷を一望する崖の北端に到着です。
カヤン城塞ビューポイント~アクネル村
断崖絶壁からは、ピラミッドの形をした山の頂上にたたずむカヤン城塞(Kayan fortress)を眺めることができます。
デベド渓谷を一望するロケーションに戦略的に建てられた中世の城塞で、聖地であるハフパット修道院とサナヒン修道院を外敵から防衛する役割を果たしていたそうです。
ビューポイントからカヤン城塞は、直線距離にして200mほどですが、断崖絶壁にはばまれているため、ここからのアクセスは不可能。
すぐ近くにあるのに遠くに感じる中世の城塞…なんだか浪漫を感じました。
ビューポイントから西方向を眺めると、デベド渓谷の切り立った崖の先にアラヴェルディの町が見えます ▼
崖の高さは、ザッと見ても200m以上。
こんなところに村を作った昔の人の苦労は、いったいどれほどのものだったのでしょうか…
カヤン城塞ビューポイントからの絶景を堪能したら、南西に1kmほど歩いたところにあるアクネル村(Akner / Ակներ)を目指しましょう。
アクネル村は、典型的なアルメニア地方部の雰囲気が漂う小さな集落。
こんなところまでやって来る外国人はほとんどいないようで、道行く人や畑仕事をしている人など全員に(大袈裟ではなく「全員」)話しかけられます。
「ハフパット村から歩いてきた!これからサナヒン修道院に歩いて行く!」と言うと、「こいつは頭がおかしいのでは?」といった感じで苦笑されることもしばしば。
裏を返せば、世界遺産トレイルの中継地点となる村なのに、これまでほとんどトレッキング客がやって来ていないということでしょう。
「トレッキングコースが有名になっても、こうした素朴な雰囲気の村がそのまま残っていてほしいな」と願いながら、次のポイントへと歩き出しました。
アクネル村~カラペット教会
アクネル村の中心に位置する教会広場からは、集落を南にのびる道を100mほど歩き、ふたたびトレッキングコースに戻ります。
アクネル村とサナヒン村の間はまたも深い谷間で隔てられていますが、谷底へ下りる必要はありません。
トレッキングコースは南に大きく迂回するルートをとり、崖の淵にそって続いていくので、ほとんど平坦(若干の上り坂)なルートが続くので楽勝です。
村を出て20分ほど歩いたところには、アクネル村とサナヒン村を隔てる谷間を望むビューポイントがあります ▼
▲ 注意したいのが、上の写真の分岐点(マップ赤)。
左側の道が正しいルートのように見えますが、ここは右の下り坂のルートが正解です。
何の標識もないのでご注意を。
分岐点を右に曲がっていったん下っていった先には渓流が流れているのでそれを越え(橋はないけど余裕で渡れる水量)、ゆるやかな上り坂を15分ほど登った先にあるのが聖カラペット教会です。
カラペット教会~サナヒン修道院
デベド渓谷をのぞむ丘の頂上にたたずむ聖カラペット教会(Surb Karapet)は、10世紀後半(1000年前)に造られたもの。
長い年月で石壁は風化し、屋根は一部を残して抜け落ちてしまっていますが、凛とした存在感は見る者を圧倒します。
実はこの聖カラペット教会、トレッキングのゴール地点・サナヒン修道院の近くにある聖サルギス礼拝堂と兄弟のような関係なのだとか ▼
聖カラペット教会と聖サルギス礼拝堂は、世界遺産のサナヒン修道院を挟むような場所にそれぞれ位置しています。
千年以上前から聖地として信仰の対象されてきたサナヒン修道院。
二つの教会は、聖地を守るための防衛拠点としての役割も兼ねていたのかもしれませんね。
のぶよが聖カラペット教会に到達したときには、なにやら人の話し声が聞こえていました。
「え?こんなところにトレッキング客?」とビックリ。
なにしろ、ここまで誰一人としてトレッキングしている人に出会わなかったのですから。
話し声の主は、トレッキング客ではありませんでした。
サナヒン村に住むというおじさん三人組がホロヴァツ(アルメニア風BBQ)をしていたのです。千年前の教会の目の前で。
聖カラペット教会へは車でのアクセスは不可能。
いったいどうやってここまで来たのかと尋ねると、すぐそばのサナヒン村から酒や食料を持って、えっちらおっちらこんな所まで登ってきたそう。
BBQをするためだけに丘を登り、寒そうにウォッカをクイッと飲み干すおじさんたち…アルメニア人のBBQにかける執念は、日本人的には信じられません。
お決まりの流れでお肉やチーズ、ウォッカをもらい、日が暮れる前にゴール地点を目指します。
聖カラペット教会からサナヒン修道院までは、本来南にぐるっと迂回するルートをとります。
しかしながらおじさん三人組いわく「教会から北に坂を下ると舗装道路に出るから、そっちの道の方が早い」とのこと。
アドバイスに従ってみたら、大変なことになりました ▼
待ち受けていたのはもはや獣道of獣道で、ものすごい急坂。
道もいくつも分岐しており、正規のルートではないので標識もありません。
おじさんたちは慣れた道なのでしょうが、のぶよ的には正直かなりハードだったので(転がり落ちるかと思った…)、ちゃんと正規のトレッキングルートを歩くのがおすすめです。
聖カラペット教会からゴール地点のサナヒン修道院までは、20分ほどのゆるやかな上り坂が続きます。
サナヒン村に入ると修道院の屋根が目に入ってくるので、そこに向かって歩いていくだけ。
のぶよの場合は、スタートしてから合計4時間半ほどでサナヒン修道院に到着しました。
日が長い夏場なら、サナヒン修道院の周辺を見学していくのもアリ。
サナヒン村には、先述のサルギス礼拝堂やミコヤン兄弟ミュージアムなどの見どころも点在しています。
逆に、日が短い春や秋だと、サナヒンに到着した時はもう夕方近くで薄暗くなっているかも。
サナヒンの観光は別の日にまわすのも一つの手です。(のぶよはサナヒン修道院&周辺は別の日にアラヴェルディから訪れました)
個人でアラヴェルディ~サナヒン中心街を移動する場合、最も便利なのが路線バス。
アラヴェルディ中心街~サナヒン間を結ぶのは3番のバス。
平日は30分に1本/土日は1時間に1本の割合で走っていて、運賃は100AMD(=¥23)です。
土日のサナヒン→アラヴェルディ方面のバスは、16:30が最終とやや早めなので、プランニングの際は気をつけましょう。
(のぶよは土曜日にこの区間の最終バスを利用しましたが、ちゃんと時間通りに来たのでご安心を。)
おわりに
アルメニアを代表する見どころである、ハフパット修道院~サナヒン修道院を結ぶトレッキングルートを詳細に解説しました。
こんなに素晴らしいコースがいまだ世界に知られていないのは、もはや奇跡のようなもの。
大自然の美しさも、断崖絶壁の絶景も、世界遺産の修道院も、アルメニア地方部らしい人情も…
どれも一生忘れることのないアルメニア旅の思い出となりました。
今回の世界遺産トレイルだけでなく、アルメニアはアクティブ派の旅人にはピッタリのハイキング天国。
いずれもどマイナーな穴場コースばかりなので、手つかずの自然の美しさを存分に堪能できます。
当ブログでもいくつか他のトレッキングコースを紹介しているので、ぜひチェックしてみてくださいね!
コメント
こちらの情報を参考にさせていただいてアルメニア旅行中のえーじです。早く情報を発信せねば!と思いながら日にちが経ってしまいました。本日このトレイルを歩いてきましたのでそこから書きたいと思います。
スタート地点ハフパット修道院まえにmarketと書かれた商店の横にトレイルの道標がありそれに従って坂道を下りました。これじゃない!と思ったときには登り直す気になれないくらい下がっておりそのまま幹線道路とハフパット修道院を結ぶ道に出て車道を下る羽目に。ただこのルートが正規のマーキングされたルートのようで下りきったところから本格的なトレイルが始まりカヤン城塞まで行けました。そこからアクネル村に入るあたりでこちらで紹介されているトレイルと合流したようです。その後、こちらで注意したい分岐点とされているところには白赤白のサインが2か所道標が一つ立っていました。おそらく間違える人続出だったのでは?と思います。所要時間3時間45分。アクネル村の手前の牧草地がとてもきれいで印象的でした。