こんにちは!実は元日本語講師だったのぶよ(@nobuyo5696)です。
私たち日本人の母語である日本語。
生まれた時から自然に触れているだけあって、日常の場面で文法構造や発音などを意識する機会は、ほぼありませんよね。
私たちは当たり前のように三種類の文字を使い分け、動詞や形容詞を活用させ、流行り言葉や略語を生み出していますが、これって実は結構すごいこと。
特に、外国語として日本語を勉強する人たちにとっては、「日本語…ヤバい…」と感じることもあるようです。
のぶよはカナダの語学学校で日本語を教えていました。(実は資格も持っています)
レベルも学習の目標も異なる様々なクラスで教えていたのですが、教える側として最も大変&面白かったのが、初級クラスの学習者たちを持ったとき。
彼らの母語とは全く異なる「日本語」という言語に初めて触れた学習者のキラキラとした目が、とても印象に残っています。
外国語として日本語を学習する彼らの視点は、当たり前のように日本語を使う日本人の視点とは全く異なっていて、新しい発見があることもしばしばありました。
というわけで今回の記事では、日本語を学習する外国人が感動した12のことを紹介していきます。
普段はあまり考えない日本語の面白さを再発見できるかもしれませんよ!
- 外国人学習者が感動した日本語1:ひらがなが可愛すぎる
- 外国人学習者が感動した日本語2:感情表現の豊かさ
- 外国人学習者が感動した日本語3:読点の付け方のアバウトさ
- 外国人学習者が感動した日本語4:全部くっつけて書く
- 外国人学習者が感動した日本語5:リアルな小さい「つ」
- 外国人学習者が感動した日本語6:「カタカタ・テケテケ問題」
- 外国人学習者が感動した日本語7:未来系がない
- 外国人学習者が感動した日本語8:書き順
- 外国人学習者が感動した日本語9:条件文の奥深さ
- 外国人学習者が感動した日本語10:「少なくないこともないんじゃない?」二重・三重否定
- 外国人学習者が感動した日本語11:下一段動詞のカオス具合
- 外国人学習者が感動した日本語12:比喩表現が可愛い
- おわりに
外国人学習者が感動した日本語1:ひらがなが可愛すぎる
日本語の学習者が一番初めに勉強するのが、ひらがなです。
私たちにとっては目をつぶっていてもスラスラと書ける文字ですが、外国人にとっては「何だかわけのわからない未知の文字」。
必至にひらがなをノートに書いて覚えようとする学習者たちの姿は、とても微笑ましいです。
のぶよは常に、「どのひらがなが一番好き?」と生徒に聞くのですが、圧倒的に人気なのが「ぬ」「ね」「る」の3文字。
最後にくるりと丸めるところが「カワイイ!」んだそう。
駄菓子の「ねるねるねるね」とか、カナダで売ったら結構流行るのではないでしょうか(笑)
これはきっと、私たちがタイ語やカンボジア語のコロコロした文字を見て、「カワイイ!」と思う感覚に似ているのかも。
ひらがなを、文字と言うよりも一つのアートとして捉えているのかもしれません。
ちなみに、ひらがなの後に学習するカタカナは、総じて不人気です。
似ている文字が多い:「シ」「ツ」など
カクカクしてる:「カ」「ロ」など
という意見が多く、のぶよの生徒はほぼ皆ひらがな派でした。
外国人学習者が感動した日本語2:感情表現の豊かさ
日本語を初めて耳にした外国人は、多かれ少なかれこんな感想を持ちます。
なんかカタカタしてる
抑揚がない
感情が読めない
確かに、日本語(特に共通語)はイントネーションの上がり下がりが少ないため、平べったく感情がないように聞こえるようです。
しかしながら、少しずつ文法を学び始めた学習者は、この理由に気づきます。
それは、日本語では終助詞で話し手の感情を表すことができるので、抑揚をつけて話す必要がないため。
英語で「雨が降っている」は”It’s raining.”となりますが、読んだだけでは話し手の感情や捉え方は全く伝わってきません。
いわば、「雨が降っている」という事実を表しているに過ぎないのです。
一方、日本語で「雨が降っている。」とだけ言うと、何となく違和感がないでしょうか。
「雨が降っているよ」
「雨が降っているね」
「雨が降っているなあ」
「雨が降っているんだ」
と、「雨が降っている」という事実を話し手がどう捉えているかを表す終助詞等を付けた方が自然ですよね。
この終助詞を用いることで、日本語ではわざわざ抑揚を付けなくても感情を表現することができるのです。
一方の英語(や欧米系言語)にはこの終助詞の概念がないため、話し手がどう感じていようと”It’s raining.”しか選択肢がありません。
そのため、”It’s raining!”、”It’s raining…”など抑揚をつけて表現するようになったのでしょう。
こう考えてみると、書き言葉でも話し手の感情を表現することができる日本語は、とても情緒豊かな言語。
わざわざ抑揚をつけなくても、文法事項で感情を表現できるという点に、多くの学習者は驚くようです。
外国人学習者が感動した日本語3:読点の付け方のアバウトさ
日本語学習者に聞かれてものすごく困るのが、「文の中で読点(、)を付けるルールは何ですか?」という質問。
これ、分からなくないですか?
英語やフランス語など欧米の言語では、文章の中でカンマ(,)を打つ場所がかなり厳格に定められています。
By the way, how’s it going?
I’m good, and you?
など。
打たなくても間違いではないものの、正しい文章とは言えなくなってしまいます。
一方の日本語においては、読点を打つ場所は完全なるフリーダム。
書き手の裁量で打たれることがほとんどです。
気になって調べてみたのですが、「日本語では読点をどこに打つかの規範は明確ではない」とのこと。
つまり、どこに読点を打っても間違いではなく、文章が正しく&読みやすく伝わればそれで良いというスタンスのようです。
しかし、「どこに読点を売ってもOK」と言うと、生徒から確実に怪訝な顔を向けられます(笑)
のぶよは小学校の作文の授業で、「かぎかっこ「」の後の「と」には読点を付けましょう」と習ったのですが、今考えてみるとこれも微妙に感じられます。
「明日行きます。」と、言いました。
「明日行きます。」と言いました。
完全に下の方が自然じゃないですか?
のぶよだけでしょうか。
とにかく、この読点の付け方は日本語学習者のみならず、日本語を教える身としてもブログを書いている身としても複雑な問題。
文部科学省の方、どうにかしてください(笑)
外国人学習者が感動した日本語4:全部くっつけて書く
読点の問題に関連しますが、初めて日本語の文章に触れた学習者が衝撃を受けるのが、日本語は単語と単語の間にスペースを空けずに書かれること。
だって、 こう し て 書い たら 変 です よ ね ?
日本人にとっては至極当たり前のことなのですが、一単語ごとにスペースを空けて書くことが普通の欧米系言語話者からすると、初めはとても不思議に感じられるそうです。
一方で、中国語や韓国語などアジア系の言語話者は、母語が日本語と同様にくっつけて書かれるため、全く違和感がないそうです。
実は中学校に入るまで英語なんて全く知らなかったのぶよ。(ローマ字の書き方は知っていました)
初めての英語のテストで“Hellohowareyou?”と日本語のように全部くっつけて書いて、散々な結果で返ってきたことを思い出しました(笑)
先生になんで離して書くのか尋ねても、「英語はそうなの!」と言われたときの衝撃を鮮明に覚えています。
だからこそ、日本語学習者の驚きもよく理解できます。
外国人学習者が感動した日本語5:リアルな小さい「つ」
比較的発音がシンプルと言われる日本語。
母音は「あいうえお」の五つのみですし、子音の発音でも特に難しいものはありません。
日本語学習者はひらがなを学びながら、順調に日本語の発音を学んでいくのですが、彼らの多くが苦戦するのが「小さいつ(っ)」。
初級クラスで促音便の話をしても仕方がないので、のぶよは「一拍分ミュート」と簡単に教えるのですが、やはり聞き慣れない音のためか、なかなかマスターするのが難しいようです。
しかしながら、ある程度日本語を学んでいくと、必ずこの「っ」が聞き分けられる&発音できる日が意外と早くやってきます。
学習者も自分で「っ」が聞けた/言えたことが分かるようで、皆かなり嬉しそうな顔になります(笑)
外国人学習者が感動した日本語6:「カタカタ・テケテケ問題」
初球の日本語学習者がつまずく(&面白がる)ポイントの一つが、形容詞の活用。
日本語教育界では、「~い」で終わる形容詞を「い形容詞」、「~な」でおわる形容動詞を「な形容詞」と呼ぶのですが、「い形容詞」の活用が面白すぎるとよく言われます。
高い
高くない
高かった
高くなかった
のように活用形も含めて覚えさせるのですが、学習者には「カタカタ」言っているように聞こえるそうです。
毎回必ず例に出して爆笑をさらうのが「あたたかい」という形容詞。
あたたかい (atatakai)
あたたかくない (atatakakunai)
あたたかかった (atatakakatta)
あたたかくなかった (atatakakunakatta)
文字にするとかなりのハードモードですよね(笑)
確かに「カタカタ」言っているように聞こえます。
もう一つ、動詞を覚えた学習者が面白がるのが「て形」を使って文章を作る場面。
動詞を覚えて、その「て形」の活用を確認するために色々な文を作る練習をするのですが、学習者がここで遭遇するのが「てけてけ問題」。
上で紹介した「カタカタ」と同様に、「テケテケ」ばかりが聞こえるそうです。
のぶよがよく使う例が
「待っていてって言っていたっけ?」
「(店の人が)買っていって!って言っていても、買っていってくれない。」
など。確かにテケテケしています(笑)
口語では「~ている」の「い」は省略されることが多いため、
「待っててって言ってたっけ?」
「買ってってって言ってても、買ってってくれない」
のようになり、さらにテケテケ感が増します。
外国人学習者にとっては、この「てってけてってけ」言っているのは結構ツボのようで、毎回爆笑となっていました。
外国人学習者が感動した日本語7:未来系がない
英語を学習する日本人がつまずくポイントの一つが、日本語にはない時制の使い方ではないでしょうか。
現在形、現在完了形、未来形、過去形、大過去…
日本語にはない概念の時制も多いため、かなり多くの人が苦労することでしょう。
日本語の文法は、世界的に見てもかなりシンプルな部類。
中でも学習者が驚くのが、日本語には動詞の未来形がない点です。
「明日学校へ行く。」
「一年後、仕事を始める。」
など、未来形がちゃんとある言語の話者からすると、「なんで未来のことを話しているのに、動詞は現在形のままなの?」とびっくりするようです。
そんな質問にのぶよは「日本には未来がないからね」と答えるようにしています(笑)
初めこそ「未来を表す副詞 + 動詞の現在形」という矛盾に困るようですが、慣れてくると「こんなに簡単なことはない」と思ってくれるのもポイントです。
外国人学習者が感動した日本語8:書き順
日本語を学習する外国人が楽しみにしているのが、漢字を学ぶこと。
いわば英語のアルファベットのような表音文字(音だけを表し、文字自体に意味はない)であるひらがな・カタカナをマスターして、自分たちの文字の概念とは大きく異なる表意文字(文字自体に意味がある)である漢字を学ぶことは、初級日本語学習者が目指す最初のポイントかもしれません。
漢字を勉強し始めた学習者が驚くのが、一つ一つの漢字に書き順が定められているという点。
のぶよが働いていた語学学校では、ヘッドティーチャーが書道の先生だったこともあり、比較的書き順を重視しての漢字の授業が行われていました。
「田」「女」「上」など簡単な漢字でも、ちゃんと書き順が定められているという点に、「やっぱり日本人ってきっちりしているんだ…!」という感動を覚えるという話もあります。
のぶよ個人的には、「書いてわかれば別に書き順なんてどうでも良い、そんな順番覚えるなら単語の一つでも覚えろ!」というスタンスです。
きっちりしていない日本人の代表のような意見ですね(笑)
外国人学習者が感動した日本語9:条件文の奥深さ
日本語の初級~初中級あたりで学ぶ文法の一つが条件文です。
日本では「たら・れば」として知られていますが、他にも「~と」「~なら」など複数があります。
条件文自体は、動詞を活用させて「~たら、~ば」などを付けるだけなのであまり難しくはないよう。
しかし、条件文を使った表現を学ぶ際に、学習者は「日本語、すごい…!」となるようです。
それは、私たちが日常的に使う「~なければならない」「~ないといけない」などの義務を表す表現において。
英語では”must”や”have to”と一語~数語で表されるシンプルな表現ですが、実は日本語では文法事項をフル活用している表現なのです。
食べ なけれ ば なり ませ ん
→もし食べないと(状況が良く)ならない→「食べなければなりません」
ヤバくないですか?(笑)
量子コンピューターもびっくりなほどにぎっしりと詰め込まれた文法事項を、日本人は平然と何も考えずに言ってのけているのです。
もちろん、日本語教育においてこんなにかみ砕いた説明をすることはなく、「動詞のない形(=未然形)+ければならない」で一つのフレーズとして学習させますが、その文法構造を知った学習者は絶対に驚きます。
だいたいクラスに一人くらい「なんで”must”の一つにこんなに長い文を使うの?」という「なんでなんで学習者」がいるものなのですが、そんなときはこれを説明して黙らせましょう(笑)
外国人学習者が感動した日本語10:「少なくないこともないんじゃない?」二重・三重否定
のぶよが働いていた学校では、日本語の口語に焦点を当てた課外学習のようなものがあり、数少ない日本人(カナダと言えどモントリオールだったので)と学習者が触れ合う機会となっていました。
その中で学習者が言っていたのが、「日本人、会話で否定形使い過ぎ!」とのこと。
これは「否定形でネガティブなことばかり言っている」という意味ではなく、二重否定や三重否定を用いながら、言いたいことを極限に曖昧にして表現する日本人の得意技を指します。
「そんなことなくない?」
「できないわけないんじゃない?」
「好きじゃないわけじゃない」
「少なくないこともないんじゃない?」
など、私たち日本人は二重否定や三重否定を使った表現を日常会話内で普通に用いますし、考えることなく理解できます。
しかし日本語学習者にとっては「”not ~ not ~ ,not?”結局何が言いたいねん!」と、訳の分からない文章に聞こえてしまうようです。
外国人学習者が感動した日本語11:下一段動詞のカオス具合
すでに「カタカタ問題」(形容詞の活用)や「テケテケ問題」(て形の活用)などについて語りましたが、もう一つ、日本語学習者が面白がることがあります。
それは、グループ2動詞(=上一段・下一段活用)の可能形の活用において。
泳ぐ→泳げる
食べる→食べられる
など、能力や可能を表す活用形で、「れる・られる」と呼ばれることもあります。
そんな可能形のうち最大のカオスとなる下一段活用の強敵さは、日本語学習者なら誰もが知っていることです。
寝る→寝られる (nerareru)
入れる→入れられる (irerareru)
いかがでしょう、この「ラリルレロ感」(笑)
可能形+条件形「ば」とくっつくと、さらなるカオスとなります。
寝られる→寝られれば(nerarereba)
入れられる→入れられれば(irerarereba)
ローマ字で書くと、何でこんなに「ラ行」が並ぶのか、日本人でもわからなくなってしまうほどですね。
外国人学習者が感動した日本語12:比喩表現が可愛い
最後に紹介したいのが、初級から中級になった学習者が学ぶ比喩表現について。
日本語の比喩表現は「~のような」で表すこともあれば、一つの表現として決まり文句となっているものも多く見られます。
日本語学習者いわく、「日本語の比喩表現には可愛いものが多い!」とのこと。
特に、動物を使った表現が人気でした。
猫の額
雀の涙
蚊の鳴くような
猫舌
たぬき寝入り
「蚊は鳴かないでしょ!」や「先生はスズメの涙を見たことがあるんですか?」、「たぬきは巣で寝るのでは?」というツッコミが入ること必須です(笑)
おわりに
日本語を学習する外国人が、「日本語、すごい…!」と感じたり驚いたりすることを12個紹介しました。
いずれも実際にのぶよが日本語講師として働いている際に、学習者たちから聞いたものばかりです。
普段は全く意識することなく日本語を使っている私たち日本人ですが、こうして外国人の視点から自分たちの言葉を見てみると、今まで気にも留めなかった日本語の奥深さやユニークさに気づかされることもあります。
外国語を学ぶのももちろん素晴らしいですが、自分の母語をより深く知るのも面白いかもしれませんね。
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