こんにちは!アルメニア南部のヴァヨツ・ゾール地方をのんびりと旅行中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ヴァヨツ・ゾール地方の中心的な町であるイェゲグナゾールに滞在しながら、周辺の見どころを一つ一つ訪問している今日この頃。
ついに、「イェゲグナゾール近郊で絶対に行っておくべき」と地元民がおすすめしてくる率No,1の場所に行ってきました。
それが、町の10kmほど北の山の中にあるスピタカヴォル修道院(Spitakavor/Սպիտակավոր)です。▼

スピタカヴォル修道院は、およそ700年前に建設された聖地。
その建築様式や装飾はとにかく素晴らしいの一言で、「中世アルメニアの宗教建築の傑作」と評価されるほどです。
「花の修道院」との異名も持つスピタカヴォル修道院は、季節ごとの花々に彩られ、まるで天国のような雰囲気。
孤高のロケーションの素晴らしさも含め、かなりの見ごたえがあります。


また、スピタカヴォル修道院の東1kmほどにあるプロシャベルド城塞(Proshaberd/Սպիտակավոր)にも足をのばしたいもの。
こちらも中世に建設された城塞の跡で、当時アルメニア中部地域を支配していたプロシアン一族の王子の居住地とされていた由緒正しき場所です。
プロシャベルド城塞には「プロシアン一族の財宝伝説」が根付いており、もしかしたらお宝発掘して一攫千金も…?
そんな歴史のミステリーや浪漫も含めて、五感で魅力を堪能したいスポットです。

というわけで今回の記事は、イェゲグナゾール滞在中にぜひ足をのばしたいスピタカヴォル修道院&プロシャベルド城塞の観光情報を解説するもの。
各見どころの歴史背景や訪問レポートはもちろん、イェゲグナゾールからのアクセスやハイキング情報についてもしっかりとまとめています。
このエリアは自然風景がとても美しいので、できれば自分の足でハイキングしての訪問が理想的。
まるで天国のような美しい山々の風景は、きっと忘れられない思い出となるはずです!
スピタカヴォル修道院&プロシャベルド城塞観光マップ
緑:ハイキングコース
黄色:ヴェルナシェン村のマルシュ終点
中世アルメニア建築の傑作!スピタカヴォル修道院

イェゲグナゾールから北に10kmほど。標高2000mを超す山の中にぽつりとたたずむ聖地がスピタカヴォル修道院(Spitakavor/Սպիտակավոր)です。【マップ 青】
「スピタカヴォル」とはアルメニア語で「白い修道院」の意味。
その名の通り、白っぽい石造りで統一された外観が最大の特徴です。


スピタカヴォル修道院の建物を初めて見た人は、その独特な造りに驚くはず。
メインの聖堂である聖母教会の入口部分を取り囲むように高い石壁が設置されており、その端にこれまた独特の造りの鐘楼が設置されているのですから。
アルメニアに点在する修道院の中でも、スピタカヴォル修道院のように石壁で半分閉鎖されたような造りはとても珍しいもの。
その独特な造りや建物に施された彫刻の数々から、スピタカヴォル修道院は中世アルメニア建築の傑作とされています。

スピタカヴォル修道院の歴史のはじまりは14世紀前半のこと。
当時このエリアは、アルメニア中部地域の支配権を握っていたプロシアン一族の影響下にありました。
プロシアン一族の絶大な権力を誇示する目的で、1321年に完成したのがスピタカヴォル修道院のメイン建造物である聖母教会。
その後十年ほどの間に、現在石壁に囲まれた屋外空間となっているガヴィト(拝廊)や鐘楼が増築され、1330年には現在の姿となりました。


スピタカヴォル修道院が完成した14世紀前半~半ばにかけては、この人里離れた場所の聖地も多くの人々で賑わったのだそう。
ここヴァヨツ・ゾール地方の信仰の中心地として、短いながらも黄金時代を迎えます。
しかし、14世紀末に中央アジアからティムール朝が襲来して破壊の限りが尽くされたことをきっかけに、スピタカヴォル修道院のかりそめの黄金時代はあっけなく終焉。
続いて現在のトルクメニスタン周辺地域から襲来した黒羊朝やペルシア帝国の侵攻時にも大きな被害を受け、歴史の表舞台から完全に姿を消すこととなります。

黄金時代こそ短かったスピタカヴォル修道院ですが、当時の建築技術の素晴らしさは現在でも強く感じられるもの。
特に素晴らしいのが、メイン建造物である聖母教会の入口上部のレリーフです。
イエス・キリストを抱く聖母マリアの姿が描かれたレリーフは、周囲のモチーフも含めて中世アルメニア美術の最高傑作。
実際に見てみると、そのあまりの緻密さに驚くはずです。


外壁には他にも興味深い装飾が見られ、聖母教会裏側の大きな十字架や、内部に施された石の彫刻の数々も見逃せません。
聖母教会の内部はこぢんまりとしていますが、異教徒でも感じられる圧倒的な聖地の威厳に身が引き締まる感覚になります。

聖母教会内部には、黒を基調とした石を削って作られた見事な彫刻が、壁や天井のドーム部分にまで施されています。
スピタカヴォル修道院を建造したプロシアン一族は、石の彫刻技術の高さに定評がありました。
アルメニアの世界遺産であるゲガルド修道院にある洞窟教会の石の装飾もプロシアン一族によるものですが、ここスピタカヴォル修道院内部の装飾のスタイルとの類似性も見られます。

そして、スピタカヴォル修道院見学のハイライトとなるのが、修道院敷地から眺める風景。
ヴァヨツ・ゾール地方の深い山々を一望する風景を眺めていると、どうしてこの人里離れた地に聖地を造ろうとしたのかなんとなく理解できるような気がします。▼


5月上旬のスピタカヴォル修道院周辺は、まだ高山植物の時期には早く、ようやく山桜が咲き誇り大地が緑になってきたような時期。
もう少し後の時期であれば、周囲の草原には色とりどりの高山植物が咲き乱れることでしょう。
実際、麓のイェゲグナゾールでは、スピタカヴォル修道院のことを「ツァフカヴァンク」(アルメニア語で「花の修道院」)という愛称で呼ぶことがもあるそう。
花々に彩られた聖地の美しい風景は、昔も今も周辺の人々に愛され、誇りに思われるものです。
財宝伝説が息づく神の視点の城!プロシャベルド城塞

スピタカヴォル修道院から東に1kmほどの山中にあるプロシャベルド城塞(Proshaberd/Սպիտակավոր)は、13世紀建造の巨大なお城の跡。【マップ 青】
「プロシャベルド」という名前から想像できる通り、中世にアルメニア中部地域で強大な権力の座についていたプロシアン一族の命によって建設されたものです。

1.5ヘクタールほどの広大な敷地を占めるプロシャベルド城塞は、その孤高のロケーションも相まって「天空の城」さながらの風情。
石を積み上げて築かれた城壁の屈強な姿が目を引きます。


プロシャベルド城塞は、13世紀の建造当初からプロシアン一族の王子の居住地となっていた場所。
当時のアルメニアはモンゴル軍の襲来をはじめ、異民族の侵攻をたびたび受けていた時期にあたります。
プロシャベルド城塞の建造を命じたプロシュ・ハグバキアン(Prosh Khaghbakian)という人物は、城塞の完成後にこの場所に居住するにあたって、再び外敵が襲来することを非常に恐れていたそう。
そのため、彼はプロシアン家の財宝を人里離れた場所に造ったプロシャベルド城塞のどこかに隠したという伝説が残っています。

プロシュ・ハグバキアンが隠した財宝は、その後の時代にアルメニアにペルシア軍が侵攻して来た際に徹底的に捜索されたものの、結局見つかることはありませんでした。
財宝の在り処は城塞内の石に刻まれた暗号として残されていると言われており、もしかしたら観光時にお宝発掘ができるかも…?(それは無理か)


人々に存在を忘れ去られたかのように、朽ちていくのを待つだけの700年前の城塞。
この場所からの雄大な風景は当時から何も変わっておらず、ヴァヨツ・ゾール地方の深い山々が連なる景色がどこまでも広がります。
ミステリアスな財宝伝説に彩られた、中世アルメニアの古城浪漫ただようプロシャベルド城塞。
スピタカヴォル修道院からすぐそばに位置しているので、ぜひセットで立ち寄ってみましょう。
スピタカヴォル修道院&プロシャヴェルド城塞へのアクセス・行き方
スピタカヴォル修道院&プロシャベルド城塞はそれぞれ1kmほど離れた場所に位置しているため、セットで訪れるのが基本。
果てしない山奥にあるため、直行の公共交通手段は存在しません。
アクセス拠点となるのは、10kmほど南に位置するイェゲグナゾール一択です。
サッと観光して周るならタクシー移動となりますが、とにかく悪路が続くため、運転手によっては行ってくれないこともあるので注意。
個人的にはイェゲグナゾールから途中の村までマルシュルートカで移動→渓流沿いをハイキングという行程が最もおすすめ。
時間と体力は消費しますが、ヴァヨツ・ゾール地方の美しい自然風景を堪能しながら歩くことができます。
①タクシー
最も簡単に移動できるのが、タクシーの利用。
イェゲグナゾール中心部には客待ちのタクシーが多く待機しているので、スピタカヴォル修道院への往復+観光待機時間を含めて料金交渉すればOK。
もしくは、Yandex等の配車アプリも対応エリア内なので、サクッと配車するのもアリです。
・イェゲグナゾール~スピタカヴォル修道院往復&観光時の待機時間:7000AMD(=¥2800)
・タナハト修道院&グラゾール大学ミュージアム&スピタカヴォール修道院周遊:10000AMD(=¥4000)~
スピタカヴォール修道院へタクシーで往復+観光しても、イェゲグナゾールからの移動を含めて所要時間は2時間~3時間ほど。
もし、タナハト修道院など同じエリアにある見どころもセットで周りたい場合は、交渉次第で一日かけて周遊することも可能です。
②マルシュルートカ+ハイキング

スピタカヴォル修道院&プロシャベルド城塞の玄関口であるヴェルナシェン(Vernashen/Վերնաշեն)の村までは、イェゲグナゾールから平日のみマルシュルートカが頻発しています。
イェゲグナゾール→ヴェルナシェンは、距離的には5kmほどと歩けないこともないのですが、結構な上り坂となっているのがネック。
体力と時間を節約するためにも、マルシュルートカ利用が断然おすすめです。

イェゲグナゾール側の発着ポイントは中心街のバスステーションから。【マップ 黄色】
20分ほどかけてヴェルナシェン村の中心部に至ったマルシュルートカは、折り返して再びイェゲグナゾールへ戻る単純なルートを取ります。

▲イェゲグナゾールを出発してゆるやかな坂道をガタゴトと登ったマルシュルートカが到着するのは、ヴェルナシェン村の中心部のちょっとした広場。【マップ 黄色】
ここがこの便の終点となり、マルシュルートカはイェゲグナゾール方面へと折り返します。
ヴェルナシェン村のマルシュ終点からスピタカヴォル修道院方面へのハイキングコース入口まではたったの300mほど。
そこから先には交通手段はいっさい存在しないため、その先は徒歩で移動することになります。

▲ヴェルナシェン村の最奥部には、スピタカヴォール修道院やプロシャンベルド城塞方面への分岐点が。
ちょうどグラゾール大学ミュージアムがある場所なので、時間に余裕があるなら立ち寄ってみるのも良いでしょう。
ここがスピタカヴォル修道院&プロシャベルド城塞方面のトレッキングのスタート地点。
もう一つの定番スポットであるタナハト修道院方面との分岐点となります。
ヴェルナシェン~スピタカヴォル修道院~プロシャベルド城塞間ハイキングコース

ヴェルナシェン村から先には交通手段は存在しないため、ここから先へは自分の足で歩くことになります。
ヴェルナシェン村の分岐点から800mほど未舗装道路を歩くと、ハイキングコース【マップ 緑線】の入口となるポイントに到達します。▼

ここからは、車両の通行は不可能(車はスピタカヴォル修道院まで別の未舗装道路で大回りするルート)。
渓流沿いに敷かれたハイキングコースを4.2km/2時間ほど歩くことになります。


コースの途中にはいくつか分岐点となるポイントがありますが、いずれも100%標識が設置されているので安心。
コース上のマーキングもとても分かりやすいので、安心して歩くことができます。

ヴェルナシェン村~スピタカヴォル修道院までは合計5kmほどの道のりですが、高低差は600mとかなりのもの。
ハイキングだと、前半はがっつり登り→中盤はゆるやかな道のり→後半にがっつり登りという感じで、地図で見るよりも時間と体力を消費する点に注意が必要です。
歩くペースにもよりますが、上りで2時間~2時間半/下りで1時間40分~2時間ほどはみておきましょう。

▲スピタカヴォル修道院~プロシャベルド城塞間は距離にして1.5kmほどですが高低差は200mほどあるため、かなりきつい坂となっています。
特に、プロシャベルド城塞手前の200mほどはえげつない急坂なので、プロシャベルド城塞まで足をのばす場合は覚悟の上で挑みましょう。
スピタカヴォル修道院~プロシャベルド城塞間の所要時間は片道30分×2=1時間。
城塞の観光時間を含めても、スピタカヴォル修道院観光に1時間半ほどプラスすればOKです。
おわりに

スピタカヴォル修道院とプロシャベルド城塞の観光情報を解説しました。
いずれも穴場感がただよう見どころではありますが、イェゲグナゾールに滞在するのであれば必訪。
特にスピタカヴォル修道院は、地元の人が強くおすすめしてくる理由も納得の、圧倒的な聖地感が感じられました。
個人でハイキングをして訪問する場合は、スピタカヴォル修道院&プロシャベルド城塞の観光だけでいっぱいいっぱいでしょうが、タクシーを利用するなら近郊のタナハト修道院をセットで訪れることも可能。
日程や体力などを考えながら上手にプランニングして、この知られざるエリアの魅力を全力で味わってください!
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