こんにちは!世界半周で東ヨーロッパを8か月間旅したのぶよ(@nobuyo5696)です。
この8か月という期間で、とても多くの出会いがありました。
世界中から集まる旅行者や現地の人々など、人との出会いは自分の価値観を大きく変えてくれるもので、旅をすることの醍醐味の一つかもしれません。
特に印象に残っているのが、バルカン半島で何回か出会った不法移民たちでした。
のぶよが宿泊するのは、基本的に最安値のホステル。(寝られればOKなタイプです)
予算に限りがある旅人はもちろん、西ヨーロッパの先進国に(不法で)移民しようと移動を続ける人々も多く集まるのです。
「不法移民」と聞くと、どうしてもネガティブなイメージが浮かんでしまいがち。
大多数の日本人は、「常識で考えて、よその国で違法に生活しようとするなんてけしからん!」と考えるでしょう。
のぶよも昔はそう思っていました。
しかし実際に自分がそうした人に出会うと、その「常識」は大きく揺らぐものなのです。
今回の記事では、不法移民たちとの出会いを通して、のぶよ自身が学んだことをシェアしていくもの。
国際化が進む日本でも決して他人事ではないこの問題について、少しでも考えるきっかけになれば嬉しいです。
どうしてバルカン半島に不法移民が集まるの?
そもそもバルカン半島にあるセルビアやボスニアなどの国は、ほとんどの移民にとっては最終目的地ではありません。
彼らが目指すのは、さらに北に位置するドイツであることがほとんどです。
ドイツの社会福祉政策や移民に対する補助政策は、多くの人々が知るところ。
どうせリスクを冒して移民するのなら、少しでも待遇が良い国を目指す人が多いのです。
それでは、なぜバルカン半島に多くの移民が集まるのでしょうか。
それは、政情が不安定で貧しい生活を送る人々が多い中東地域と、先進国としてまともな暮らしが保証されている西ヨーロッパ諸国との間に位置するという地理的な要因が一番でしょう。
古くから「文明の十字路」として、ヨーロッパとトルコ・ロシアなどの大国間の影響を受けてきたバルカン半島の国々。
陸路で西ヨーロッパを目指す移民たちの間では、目的地であるドイツに到達するためにはここを通るしかないのです。
(黒海を北周りで行くルートもありますが、そこはおそロシアですから。)
もう一つの理由が、EUの多くの国が加盟しているシェンゲン協定の存在。
シェンゲン協定加盟国間の国際移動に関しては、検問やパスポートチェックなどが廃止されているため、国内移動のような感覚で隣国へ行くことができるのです。
しかしながら、バルカン半島の国のほとんどは、シェンゲン協定どころかEUにも加盟していない国ばかり。
シェンゲン協定加盟国と非加盟国間の国境検査は厳しくなるため、多くの人々がバルカン半島の国々に留まりながらチャンスをうかがっているのです。
中東・北アフリカ地域からヨーロッパを目指す移民たちがとるルートは大きく分けて三つ。
北アフリカ→イタリア・スペインなどへ渡る地中海ルート
トルコ→ギリシャと船で移動するエーゲ海ルート
トルコ→バルカン半島諸国を陸路で移動し、ハンガリーやスロベニアへ入国するバルカン半島ルート
彼らの目的は、とにかくどこかしらのシェンゲン協定加盟国に入国すること。
それさえ成功すれば、後は国境審査なしでドイツまで向かうことができるのですから。
数年前にニュースで報じられたように、地中海を船で渡るルートや、トルコ~ギリシャ間を船で渡るルートはとてもリスクが高いです。
定員オーバーのゴムボートが転覆し、多くの人々が亡くなるという事故も何度も耳にしましたよね。
越えなければならない国境の数は多くても、少しでも自らの命を危険にさらさないために陸路を選択する移民が多く、その経由地としてバルカン半島諸国に多くの人が滞在しているというわけです。
私がヨーロッパ旅行中に出会った不法移民たち
実際にバルカン半島を旅行していると、中東諸国をはじめ、北アフリカや中央アジア、果ては南米の国からもドイツへの移民を目指す人々が多くいることに気が付くでしょう。
「移民」というと、「生活に困窮してその日食べるものにも困っている人」と考えてしまう人もいるようですが、それは大きな間違い。
彼らの多くは、ドイツまでの移動費を支払うことができる人で、経済的に困窮している層ではありません。
また、「移民=犯罪をする」と考えるのも禁物。
多くの人は祖国で犯罪とは無縁の生活を送ってきた人ですし、本当に普通の旅行者といった感じです。
(不法で移民しようとしていることを犯罪と呼ぶのなら話は別ですが)
周りを海に囲まれた島国・日本では、なかなか「不法移民」がどんな人々なのかイメージが湧きにくいもの。
ここでは、のぶよがバルカン半島で実際に会った、西ヨーロッパを目指す不法移民たちを数組紹介します。
エクアドル人の親子(モンテネグロ)
とても印象に残っているのが、モンテネグロの首都・ポドゴリツァで出会ったエクアドル人の親子。
キッチンでお母さん(スペイン語オンリー)が一人泣いていたので、「どうしたの?」と声をかけたことから会話が始まりました。
なんでも、エクアドルの不法移民斡旋業者のようなものに大金を払って、エクアドル→モンテネグロ→船でイタリアというルートで移民をしようとしていたそう。
しかしながら、モンテネグロにやってきたら待っているはずの船がなく、おそらく騙されてしまったとのことで泣いていたのです。
彼女曰く、エクアドル人がビザなしで滞在できるヨーロッパの国はモンテネグロのみで、周辺諸国に出ることもままならないそう。
リスクを負ってでも、イタリア行きの船を探して乗り込まないといけないとのことでした。
のぶよは何もすることができず、ただ話を聞いて「頑張って」としか言えませんでした。
ポドゴリツァにずるずると10日間ほど滞在しているうちに、ご飯を作ってくれて一緒に食べたりするようになりました。
向こうは親子どちらもスペイン語しかわからず、のぶよはポルトガル語しか話せないので100%のコミュニケーションはできませんでしたが、それでも彼らの温かい人柄は伝わってきます。
最終的にイタリア行きの船が出るバールという港町に行くことに決めたエクアドル人親子は、別れ際に再び涙を流して去っていきました。
連絡先を交換しておらず、彼らが今どこでどうしているのかは全くわかりませんが、無事イタリアに到着して新しい人生をスタートしていることを願います。
トルコ人のグループ(クロアチア)
クロアチアのリエカという港町のホステルで出会ったのが、トルコ人の若者グループ6人組。
年齢は皆20代前半といったところで、誰一人英語が話せませんでした。
言葉でのコミュニケーションこそ全くとれないものの、そこはトルコ人。
持ち前のコミュニケーション能力を発揮して、何かと話しかけてきます。(もちろんトルコ語で)
ホステルの受付の人曰く、数日前にお隣スロベニアへの国境を越えてシェンゲン協定圏内に入ろうとしたところ入国を拒否されたため、クロアチアに戻ってきたとのことでした。
当のトルコ人たちは、そんなことは気にも留めていないような雰囲気。
ホステルの目の前にあるビーチで楽しそうにはしゃいでいました。
夜は大鍋で作ったトルコ風の煮込み料理を宿泊者全員に振舞ってくれた彼ら。
トルコ人らしいホスピタリティーの表れだと感じました。
自分たちが苦しい状況にあるにも関わらず、あまり深刻に考えすぎずに過ごしている彼らを見ていると、「結局人生ってなるようになるものなのかも。あまり考えすぎても仕方がない。」と思わされました。
イラン人のゲイカップル(トルコ)
トルコのイスタンブールの安ホステルで出会ったのが、イランから来た40代くらいの男性二人組。
一人が英語を話せたので、色々と話を聞いていると、二人は同性カップルでドイツへの移民を目指しているとのことでした。
イスラムの戒律がとても厳しいイラン。
女性は肌を隠し、アルコールはもちろんご法度。そして同性愛は死刑に値するというエクストリームさです。
彼らは自分たちの権利が認められないばかりか、命さえも奪われかねない祖国を出て、同性愛者でも堂々と生きることができるドイツという国での生活を夢見ていたのです。
イランでは高給の仕事についていた二人。
「これまで築き上げてきたキャリアや家族・友人など全てを捨ててでも、自分達が幸せに暮らせる場所へ行きたい」との言葉がとても印象的でした。
旅人の間では、イラン人の優しさはとても有名で、「世界で一番、人が良かった」なんて話まで耳にするほど。
彼らも例外ではなく、会うたびになぜか満面の笑みでザクロや栗をくれたりしました(笑)
スマートフォンを持っていなかった二人なので連絡先の交換こそできませんでしたが、今頃きっとドイツで幸せに生活しているのではないでしょうか。
ベネズエラ人の兄弟(クロアチア)
クロアチアのコルチュラ島のホステルで働いていたのが、ベネズエラ出身の20代後半の兄弟二人。
ホステルや農地で働きながら(もちろん違法で)、バルカン半島を北上してシェンゲン圏を目指しているとのことでした。
この時のホステルがかなり独特で、オーナーはかなり変な人。
一日中酒を飲んでは、ベネズエラ人兄弟を怒鳴り散らしてこき使っているような「嫌な奴」でした。
そのオーナー(共通の敵)の悪口で盛り上がってからは、一緒に海に遊びに行ったり、他の宿泊客と一緒にバーベキューをしたり…
とても楽しい時間を過ごすことができました。
ご存じの通り、ベネズエラは経済が崩壊し無法地帯と化した国。
もはや日常生活が送れないほど深刻な物資不足・治安悪化に見舞われているそうです。
のぶよと同じ年齢くらいの兄弟が、友人や家族・祖国と離れてでもヨーロッパを目指しているのは、やはり経済的な理由が大きいとのこと。
仕事などほとんどなく、たとえ1時間働いてもパン一つ買えるかわからないベネズエラで働くよりも、違法労働で低賃金でもヨーロッパで働いて家族に送金したほうがだいぶましだと言っていました。
現在は無事シェンゲン圏入りをして、スロバキアの農地で働いている二人。
「家族をヨーロッパに呼び寄せて、再び皆で暮らすのが次の目標」と前を向いて生きているようです。
ヨーロッパの不法移民たちから学んだ3つのこと
もともと島国であり、閉鎖的・保守的な考え方が根強い日本では、「移民=治安を悪くする存在」というイメージがどうしてもついてくるもの。
もちろん、不法で移民をしようとする行為は褒められたものではありませんし、合法的に移住できる手段があるならそちらを選択するべきでしょう。
かつてはのぶよ自身も、「不法によその国に来て、我が物顔で自分の権利を主張し出す移民なんて、絶対にダメ!」と考えていた時期もありました。
しかしながら、移民で成り立っているカナダという国での生活や、今回の旅での不法でも移民しようとする人々との出会いを通して、「法を遵守するのも大切だが、それだけでは切り捨てられないこともある」と気づかされました。
「不法移民の権利を手放しで認めてあげよう!友愛精神!ウェルカム・トゥー・ジャパン!」なんてお花畑なことは言いませんが、彼らがそうしてまで移民しようとする/せざるをえない背景や覚悟には、私たちが学ぶべきこともあると思います。
1.より良い生活がしたいのは、人間みんな当たり前
本当に基本的なことなのですが、人間誰もが良い生活をしたいと考えるのは当たり前のことです。
のぶよだって、可能であれば今よりも良い生活をしたいです(笑)
「格差社会」なんて言われる現代の日本ですが、日本にある格差なんて甘っちょろいもの。
福祉制度や誰もが低料金で受けられる基礎医療、各種給付金や生活保護まで。
日本には、生まれながらにして「まとも」な生活を送ることができる基盤がちゃんと存在しており、いざという時のセーフティーネットまできちんと整備されているように思います。
もちろん日本にも格差は存在するでしょう。
しかし、「生きるか死ぬかといった切羽詰まったものか」という点では、海外の格差社会には到底かないません。
戦争や内戦などで自国が生活できる状態でない場合
自国の経済が崩壊して生活がまわらない場合
差別や迫害によって命の危険がある場合
このような状況に陥っている国や地域で生活する人は、世界にまだまだ存在しています。
たとえそこまでひっ迫した状況でなくとも、「自国よりも豊かな生活ができる先進国へ行きたい」と考えるのは普通のこと。
日本でも「良い会社に入って安定した生活を送りたい」と考えて、地方よりも生活水準が高い東京に出る人も多くいることと同じ考え方ではないでしょうか。
インターネットやスマートフォンの普及によって、手のひらの中の世界で自分とは全く異なるライフスタイルの人々を、誰もが簡単に疑似体験し、憧れることができる現代社会。
だからこそ、「より良い生活」を夢見て、「先進国に行けばそれができる」と考える人が多くなっているのかもしれません。
2.行動力と適度に楽天的であることの大切さ
のぶよが出会った不法移民を目指していた人達に共通していたのが、みんな行動力があり、同時に未来に対して楽天的だった点。
考えてもみましょう。
拘束されて本国に強制送還となるリスクを背負いながら、本当に行くことができるかどうかも定かではないドイツを目指す人々の精神力の強さを。
のぶよだったら、「ビザないし、捕まったら怖いし…」と絶対に二の足を踏んでしまうでしょうし、「もしダメだったら…」と悲観的に考えてしまうことでしょう。
のぶよが出会った人々は、「でも万が一ドイツに行けなかったらどうするの?」と尋ねると、満場一致で「なんとかなるよ~そんなの!」との答えを返してきました。
もちろん、不安がないわけではないでしょう。
それでも、明るい未来を信じている彼らの瞳は輝いていて、本当に「なんとかなる」と考えているのが伝わってきました。
慎重になって考えすぎてしまうことも多い日本人。(もちろんのぶよもそうです)
彼ら移民たちの「なんとかなる精神」と行動力は、見習うに値するものかもしれません。
3.「不法移民=悪人」ではない
今回の記事で最も声のボリュームを上げてお伝えしたいのがこちら。
「不法移民=悪い奴ら」ではありません。
もちろん、不法に国境を越えることは良くないことですし、移民した先や移動中に生活難から犯罪に走る人もいるのは事実。
しかしながら「不法移民」というラベルを外してみると、みんな本当に普通の人なのです。
実を言うと、セルビアのホステルでドイツを目指しているという移民に初めて会った時、
「荷物盗まれたらどうしよう…」
「お金ねだられたら嫌だな…」
なんてネガティブなイメージを頭によぎらせてしまう自分がいました。
今考えると、それがどれだけ短絡的だったことか。
話してみると普通に良い人でしたし、もちろん物を盗られたりお金をねだられたりもしていません。
むしろ、なぜかケバブを奢ってくれたぐらいですから(笑)
つまり「移民=不法行為=犯罪者」という偏見を持っていたわけです。
もちろん、中には悪いことを企てるような人もいるでしょうし、用心することが悪いと言うつもりはありません。
(ホステルで身の回りの物をちゃんと管理するのは基本ですし)
しかし、勝手なネガティブイメージだけでその人を100%判断してしまうのは良いことではありませんし、相手をちゃんと理解するのを初めから放棄してしまうことになりかねません。
自分の「既成概念フィルター」を外した状態で、コミュニケーションに臨むように心がけることも大切だと思います。
おわりに
一度身についた考え方や物の善し悪しの基準は、なかなか変えることが難しいもの。
バルカン半島を旅して、それぞれの理由や背景を抱えた不法移民たちに出会うまでは、「不法移民=悪い人」と心のどこかで信じて疑いませんでした。
自分の視野が広くなったという意味でも、とても素晴らしい出会いだったと感じます。
合法・違法は別にして、移民の問題は決してヨーロッパだけの話ではありません。
高齢化社会が叫ばれて久しい日本でも、そろそろ議論が進められなければいけない時期。
以前実習生制度を悪用した雇用主の話が問題となっていましたよね。
移民政策に関して、様々な意見があるのは当たり前のこと。
手放しで賛成するのも、慎重になりすぎて排他主義に陥るのも得策とは言えません。
そもそも、ずっと均一民族でなんとかやってきていた日本では、移民に関してあまりちゃんと向き合ってこなかったのは事実。
まずは、「移民しようとする人達」に対する私たちの理解を深めることから始めていかなければならないのかもしれませんね。
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