こんにちは!アルメニアに5ヶ月間滞在し、現在はジョージアでのんびり過ごしている世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
これまで訪れた国や地域で食した料理を再現&レシピをシェアする企画が「のぶよキッチン」。
今回は、アルメニア料理のホホップ(Khokhop / Խոխոպ)を特集します!
ホホップをひとことで表すなら「鶏肉のざくろ煮込み」。
アルメニアのお隣・ジョージアでは料理のデコレーションにざくろが数粒使用されるくらいですが、アルメニアのざくろ愛は本物。(なんと言っても、ざくろがナショナルフルーツに指定されているほど)
ざくろワインはアルメニアを代表する名産品ですし、ざくろを使用したスイーツやジャムもポピュラーです。
そんなざくろ王国・アルメニアを象徴する料理が、このホホップ。
主役は鶏肉とざくろの二つで、ざくろがメイン食材となる料理は、世界中でも珍しいように思います。(スイーツとかソースとかはたくさんあるだろうけど)
日本人的には「ざくろで鶏を煮る…?は…?頭だいじょぶそ?」と思うでしょう。(のぶよもそう思った)
しかしですね…鶏肉とざくろ、ものすんっごく相性が良いのです。
むしろ、これ以上ないほどの組み合わせと言えるかも。
鶏から出た油の香ばしさとざくろの繊細な甘酸っぱさが調和した煮汁は、濃厚な風味ながらもあっさりといただける唯一無二の味わい。
ざくろやワイン由来の成分のおかげなのか、鶏肉はほわっほわとろ~んな柔らかさ。仕上げに散らされるハーブのすっきりした風味が、各素材の個性的な味わいを見事にまとめ上げています。
各食材の美味しさが100%引き出されたホホップは、「余計なものは入れず、各食材の味のバランスを計算する」というTHE・理系なアルメニア料理の象徴そのものです。
これまで60か国ほどを訪れて色々な国の料理を食べてきましたが、ホホップの美味しさは間違いなくダントツNo.1。
「この味を知らないままに死ななくてよかった…」と心から思いました。(まじで)
日本人のみなさんにも、遠く離れたコーカサスの小国の絶品料理を食べてほしい…
というわけで今回の記事では、ホホップの作り方を詳細に解説します。(のぶよがたまたま出会ったアルメニア人シェフ直伝のレシピをそのままにお届け!)
「ナポリを見て死ね」とはよく言ったものですが、のぶよ的には「ホホップを食べて死ね」。
コーカサスの美食大国の底力を、とくとご覧あれ!
これまでの旅の中で食した絶品料理の数々を、地元の人に教えてもらったレシピで再現する企画が「のぶよキッチン」。
「本場の味をそのままに」をコンセプトに、できる限り現地のレシピそのままにお伝えしていますが、日本でも再現しやすいアレンジTipsもふんだんに盛り込んでいます!
アルメニア料理の「ホホップ」とは?基本情報&材料
高地ならではのアイディア料理?ホホップの起源
アルメニアのホホップは、キリスト教の祝日やファスティング(=キリスト教での肉食を断つ期間)が明けた際などに食される「ハレの日」の料理。
元々は、各家庭で飼われる七面鳥を捌いて祝いの席の主役料理として愛されてきました。
アルメニアは国土のほとんどが標高1000m以上の高地に位置し、農地面積や収穫できる野菜の種類が限られている国。
そんな不毛の高地でも育ち、寒さに強いざくろを野菜の代わりのビタミン源として使用し、七面鳥の肉と一緒に煮込んだ料理がホホップの原型なのだそうです。
現在ではより安価で手に入れやすい鶏肉が使用される場合が多く、丸鶏一羽分を切り分けたものを煮込んで家族みんなで食べるのが一般的なのだとか。
のぶよにレシピを教えてくれたアルメニア人はナゴルノ=カラバフ自治州の出身なのですが、彼いわく「アルメニア南部の料理」とのこと。
確かに、アルメニア北部しか旅したことがないのぶよにとっては初めて食べる料理でしたし、すぐ南のペルシア料理(現在のイラン)の影響もどことなく感じさせます。(この辺、詳しい人いたら教えてほしい)
ホホップ作り最大のポイント「余計なものを入れない」
・調理時間:45分
・材料費:約800円(2~3人分)
・お手軽度:★★★☆☆
・日本での再現しやすさ:★★★★☆
ホホップの材料はとてもシンプル。
特別なスパイスは必要なく、ざくろさえ手に入ればどこの家庭でも作れるはずです。
ホホップの作り方は、大きく分けて以下の3つのステップとなります。
①鶏肉を焼いて鶏油と風味を引き出す
②その油で玉ねぎと香辛料を炒めて風味づけ
③ざくろとワインを加えて煮込む
お願いなので、余計なものを入れずにレシピ通りの材料と手順で作ってみてください。
(日本人、やたら色々入れたり別の食材で代用したりと魔改造したがるのをのぶよは知ってる)
スパイスや野菜、ブイヨンなどいろいろ入れたくなるかもしれませんが、アルメニア料理は素材同士の相性がきちんと計算された繊細な味付けが、最大の特徴であり命なのです。
ニンニクを入れた方が美味しくなりそうな気もしないではないですが、ざくろの独特の風味を台無しにしてしまうので入れない方が良いです。
(というか、「とりあえずニンニク入れとけ!」なジョージア料理とは対照的に、アルメニア料理ではニンニクの強すぎる風味が厭われてあまり使われない気がする)
ホホップの材料
【基本の食材】
・鶏もも肉(皮付き):500g ※注①
・玉ねぎ:中サイズ1個
・ざくろ:大1個 ※注②
・白ワイン:200ml~250ml ※注③
【調味料・スパイス・ハーブ】
・塩:適量
・胡椒:適量
・クミンパウダー:小さじ1 ※注④
・サラダ油:適量 ※注⑤
・ディル:ひとつかみ
・パクチー:ひとつかみ ※注⑥
※注①:鶏肉は、もも肉でもむね肉でもお好きな部位でOKですが、絶対に皮付きの鶏肉を使用しましょう。鶏皮から染み出る油がホホップの濃厚な風味の決め手となるためです。皮付きでない鶏肉を使用すると、まったくの別料理になってしまうかも…。
※注②:ざくろはホホップの主役。ぜひ生のざくろを使用しましょう。ザクロ100%ジュースを使っても良いのですが、出来は大きく異なるものとなります。ザクロシロップやザクロ酢などは論外です。
※注③:アルメニアではざくろのワイン(赤)を使用する場合もあるそうですが、出来上がりの色合いがどうしてもくすんでしまうので、白ワインがベターとのこと。ワインがない場合は同量の水でもOKですが、煮汁はかなりあっさりとした仕上がりになります。
※注④:クミンパウダーは「なくてもOK」とのことですが、個人的には入れた方が美味しくなると思います。煮汁の香りが際立つだけでなく、奥深い風味が加わって鶏肉の芳醇さがアップするので。
※注⑤:こってりした味が好みなら、サラダ油をバターで代用(もしくはサラダ油とバターを半々)してもOKだそう。個人的にはバターなしの方が素材本来の味が際立つと思います。
※注⑥:パクチーが苦手な場合はイタリアンパセリでもOK。ハーブは濃厚な煮汁に清涼感を加えて料理全体をまとめる役割があるので、粉末のハーブ等はNG。必ずフレッシュなものを使用しましょう。
ホホップのレシピ・作り方
①鶏肉を油で両面焼く
まずは、深手のフライパンにサラダ油(適量)を敷いて火をつけ、中火で熱します。
油が十分に熱されたら、鶏皮が下になるように鶏肉(500g)を入れて焼きましょう。
このとき、油がちゃんと温まりきっていないとくっつきやすくなるのでご注意を。
焼きながら、塩(適量)と胡椒(適量)をまんべんなくまぶしておきます。
焼き時間は片面につき7分ほど。
鶏肉の表面が黄金色になったら裏返して、反対側にも塩と胡椒をまんべんなくふって7分ほどカリッと焼きます。
②ざくろの実を準備
鶏肉を焼いている間に、もう一つの主役であるざくろの実(大1個)を準備します。
日本ではなかなかざくろの実を自分で取り出す機会は少ない&馴染みの薄い食材かもしれませんが、ホホップには欠かせない存在。
頭の部分を切り取ったざくろを白いサクの部分にそって縦に5~6等分すると、手で実だけを取り出しやすいです。
ざくろの実を取り出す際は、白いサクの部分が付着していてもOK。
取り出した実を水にさらせば白いサクの部分が浮かび上がってくるので、取り除きやすいです。
ざくろの実は、冷凍庫で保存すれば1ヶ月ほどはもちますし、解凍しても食感や味はほとんど変わりません。
ホホップ作りではざくろを丸々1個使用するので余りませんが、多めに下処理して冷凍保存しておけば他の料理(特にジョージア料理)のデコレーションに大活躍します。
③玉ねぎとハーブをカット
鶏肉を焼きながらもうひと作業。玉ねぎ(中1個)を薄さ7mm~1cmほどにスライスしておきます。
あまり薄く切りすぎると煮込む際に溶けてなくなってしまうので、やや厚めの薄切りがおすすめ。
ついでに、仕上げに散らす用のディル(ひとつかみ)とパクチー(ひとつかみ)の太い茎の部分を取り除き、細い茎と葉の部分だけを適当な細かさに切っておきましょう。
④鶏肉を取り出し、玉ねぎとクミンパウダーを炒める
ステップ①で合計15分ほどじっくり焼いた鶏肉の両面がこんがりと黄金色になったら、フライパンは火にかけたままいったん別皿に取り出します。
鶏皮からじゅんわりと染み出た鶏油がたっぷりと溜まったフライパンは、絶対に洗わずにそのまま使用しましょう。
火は中火のまま、熱されたフライパンにステップ③でスライスしておいた玉ねぎ(中1個分)とクミンパウダー(小さじ1)を投入します。油はねしないように、そうっと入れるのが◎
クミンは、高温の油で炒めることで香りを最大限に引き出すことができます。
玉ねぎ全体に火が通るまで1~2分ほど炒めればOK。
鶏油とクミンと玉ねぎの香ばしい匂いが、すでに食欲をびしびし刺激するはず!
⑤鶏肉を戻し、ざくろとワインを入れて15分煮込む
玉ねぎに火が通ったら、火は中火のままでステップ④で別皿に取り出しておいた鶏肉をフライパンに戻し、炒め玉ねぎの上にのせます。
続いて、ステップ②で準備しておいたざくろの実(大1個分)を鶏肉を囲むように投入します。
このときざくろの実をすべて投入せず、最後のデコレーション用にひとつまみ~ふたつまみ分くらい残しておきましょう。
最後に白ワイン(200ml~250ml)をフライパン全体に均等に流し入れ、かき混ぜずにそのまま蓋をします。
煮汁が沸騰するまで中火のまま1~2分ほど放置し、ブクブクと沸騰しはじめたら火を弱火にして15分間煮込みましょう。
⑥鶏肉を裏返してさらに15分煮込む
煮込みはじめて15分後、蓋をあけるとあまりの変化に驚くはず。
鮮やかな赤色のざくろの果肉が鶏油とワインに溶け、少しとろみのある赤茶色の煮汁となっているのです。
この状態になったら、いったんフライパンの煮汁全体をかき混ぜます。
煮汁が均等に混ざったら鶏肉を裏返し、ふたたび蓋をして弱火のまま15分煮込みましょう。
⑦ハーブとざくろの実を散らして完成
鶏肉の両面を15分ずつ煮込み終えたら、水分が減ってとろみのある煮汁になっているはず。
ステップ③で刻んでおいたディルとパクチーを散らし、ステップ⑤で残しておいたざくろの実(ひとつかみ~ふたつかみ分)でデコレーションすればホホップの完成です。
煮汁に溶けたざくろの実には種が残っていますが、気になる場合はデコレーション前に濾して取り除いても◎
しかし、アルメニアでは種を濾さずにそのままソースとして食べるのが主流です。
火を通すことでざくろの種は柔らかくなり、食感のちょっとしたアクセントに。
ソースの味にほんのりとした苦みと旨味を加えてくれる天然のスパイスのような存在でもあるので、できれば濾さずにそのままいただきましょう!
おわりに:ホホップの美味しい食べ方
▲ 調理開始から45分ほど。完成したホホップがこちら!
もはや見た目からして色鮮やかで芸術的なのですが、とにかく素晴らしいのが香り。
鶏の香ばしい芳醇な香りが鼻腔を刺激しまくってきます。
鶏肉にナイフを通すと、やんわりほろりと切れてしまうほどの柔らかさ。
とろ~り質感の煮汁を絡めてフレッシュなざくろとハーブと一緒に、いただきます!
…いやあ、もう、いったい何なんでしょうねこれは?
じっくりと煮込まれた鶏肉の食感はとろっとろの極みで、味がちゃんと染みこんでいて天国。
鶏油のどうしようもなく芳醇な風味と、ざくろの甘味とほのかな酸味が感じられる煮汁は、「どうしてこの味を今まで知らなかったんだろう…」とこれまでの人生を悔やんでしまうほどの、旨味の塊でした。美味しすぎる…
塩と胡椒、そしてほんの少しのクミンだけで味付けしたとは信じられないほどに、複合的で濃厚な煮汁の味わいにびっくり。ざくろ、実はスーパー食材なのでは…?
一瞬でとろっとろ鶏肉を骨までしゃぶり尽くし、旨味お化けの煮汁を器からこそぎとり(というかごめん、皿なめた)、完食。
このソースがあれば無限に鶏肉が食べられそうです。
よく考えてみれば、唐揚げだって砂糖と醤油で下味をつけて調理し、レモンを絞って食べるのが定番なわけで、ざくろの甘味と酸味が加わったソースで鶏肉を食べるのは理にかなったもの。
日本から遠く離れたアルメニアの、一見すると奇妙に見える食材の組み合わせの料理も、ちゃんと味のバランスが計算され洗練されたものであることが分かります。
アルメニアでは、ホホップは「ラヴァシュ」と呼ばれる紙のように薄いパンと一緒に食べるのが定番だそう。
フライドポテトやマッシュドポテトなどの芋系はもちろん、普通のパンを付け合わせにしても抜群に美味しいでしょうし、炊きたて白ご飯にも絶対に合うはず!(鶏の甘酢あんかけ丼のコーカサス版みたいな感じでどうだろうか)
甘みと塩気が同居する「甘辛い」味を好む日本人にとっては、抵抗なく受け入れられる味付けの料理だと思います。
驚きの食材の組み合わせが見事なマリアージュを魅せるホホップは、特別なスパイスや材料が必要ない点も嬉しいポイント。
フレッシュなざくろが手に入ったらチャンス!
アルメニアの高地に思いを馳せながら、キッチンに立ってホホップ・ステップ・ジャンプ!してみては?(もはやあまりの感動の食体験の余韻が強すぎて支離滅裂な締め方でごめんぬ)
これまでの旅の中で食した絶品料理の数々を、地元の人に教えてもらったレシピで再現する企画が「のぶよキッチン」。
「本場の味をそのままに」をコンセプトに、できる限り現地のレシピそのままにお伝えしていますが、日本でも再現しやすいアレンジTipsもふんだんに盛り込んでいます!
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