こんにちは!フランスに1年、ケベック州に4年在住していたのぶよ(@nobuyo5696)です。
日本では知らない人も多いのですが、英語圏のイメージが強いカナダの人口の3分の1はフランス語が母国語の人々。
フランス語話者の多くが、カナダ東部のケベック州とニュー・ブランズウィック州に分布しています。
のぶよはケベック州に在住していたのですが、周囲を英語圏に取り囲まれていることもあり、フランス語への誇りやこだわりがとても強いのが特徴的。
フランス本国の人々にも「フランス語に誇りを持っている」というイメージがありますが、ケベックも負けていません。
むしろ、フランス以上だと感じることもしばしばあるほどです。
例えば、かたくなに英語由来の単語の使用を避けてフランス語で表現する点。
フランスでは、お隣のイギリスと地理的に近いということもあって、本来フランス語には存在しない英語由来の言葉や表現がかなり入ってきています。
対するケベックでは、南に位置する超大国の脅威からなのかは分かりませんが、外来語に対する人々の意識はかなり敏感。
もはや無理やりに英語の言葉をフランス語化して用いることも多く、フランス人からしても「なんでそんな言葉使うの?(笑)」と面白がられることもあるほどです。
今回の記事では、フランスでは英語由来の言葉が使われるのに、ケベックではフランス語が使われる表現を12個集めてみました。
フランスのフランス語を愛してやまない、おフランス贔屓の方々。
あなたの知っているフランス語、本当にanglissisme(英語化)されていないちゃんとしたフランス語ですか?(笑)
- ケベックのフランス語へのこだわり1:stationnement
- ケベックのフランス語へのこだわり2:fin de semaine
- ケベックのフランス語へのこだわり3:téléphone intélligent
- ケベックのフランス語へのこだわり4:chandail
- ケベックのフランス語へのこだわり5:thé glacé
- ケベックのフランス語へのこだわり6:faire du pouce
- ケベックのフランス語へのこだわり7:salle de bain
- ケベックのフランス語へのこだわり8:gare routière
- ケベックのフランス語へのこだわり9:Magasiner/faire du magasinage
- ケベックのフランス語へのこだわり10:épicerie
- ケベックのフランス語へのこだわり11:travailleur autonome
- ケベックのフランス語へのこだわり12:PFK
- おわりに
ケベックのフランス語へのこだわり1:stationnement
「(車を)停める」という意味の動詞”Stationner”から派生した“un stationnement”は、駐車場のこと。
フランスでは”un parking”と英語由来の単語が使われますが、ケベックで”parking”という言葉を聞くことはまずありません。
しかしながら、動詞としてはse parker qqchと英語を無理やりフランス語化したものが使われることもあります。
※文法的には誤り(二重目的語)ですが、かなり使われます。
(例) Je me parke mon char au stationnement:駐車場に車を停める
※”un char”=”une voiture”。
ケベックのフランス語へのこだわり2:fin de semaine
フランスではle week-endと言われる「週末」。
バリバリの英語由来の言葉がそのまま使われています。
ケベックでは「週の終わり」をそのままフランス語にした“Fin de semaine”が使われ、”le week-end”は絶対に使われません。
ケベックのフランス語へのこだわり3:téléphone intélligent
直訳すると「知能の高い電話」となり???ですが、téléphone intélligentはスマートフォンのこと。
フランスでは“un smartphone”と英語をそのまま用いますが、ケベックではあくまでも「スマートな電話」。
そう。英語をそのままフランス語にしただけの表現なのです(笑)
ケベックのフランス語へのこだわり4:chandail
もはやフランスでは死語となった“chandail”。
ケベックでは現役で用いられる言葉です。
Tシャツ、セーター、ベストなどの「上半身に着るもの」を総称して”chandail”が使われます。
フランスでは”T-shirt”(Tシャツ)や”Pull-over”(セーター)など、英語由来の言葉で表されるものばかりですね。
ケベックのフランス語へのこだわり5:thé glacé
直訳すると「冷えたお茶」。そう、アイスティーのことです!
フランスでは“Ice tea”(アイス チーと発音)されますが、ケベックの人々のジョークではよくネタになります。
「英語話せないくせに気取りやがって!何が「チィー」や!「ティー」やろ!」
というのは、フランス人に対する定番のジョークの一つです(笑)
ケベックのフランス語へのこだわり6:faire du pouce
直訳すると、「”pouce”(親指)をする」となるこの表現。
フランス人は絶対に理解できないケベックの表現の一つです。
親指ですることと言えばひとつ。ヒッチハイクです。
フランスでは“faire du stop”と英語の”stop”(止める)が使われます。
ケベックのフランス語へのこだわり7:salle de bain
「お手洗い」と言う時に、フランスでは“les toilettes”や”WC”が使われます。
(“toilettes”はもともとフランス語由来の単語がイギリスに入ったものなのですが、ここでは気にしないことにします)
ケベックでは”toilettes”、”WC”のいずれも使われず、“salle de bain”が使われます。
そう。アメリカ英語の”Bathroom”をそのままフランス語にしたという手抜き表現です(笑)
一方のフランス語では、”salle de bain”は文字通り「風呂場」を意味します。
のぶよのケベックの友人がフランス(パリ)のレストランで、
“C’est où la salle de bain?”
と尋ねた際に、
“On n’a pas de salle de bain ici”
と言われ、「パリにはトイレがないレストランもあるのか…」とカルチャーショックを受けて席に戻ろうとしたところ、
“…mais on a des toilettes.”(意地悪な微笑みで)
と返されたそう。
つまり、“Salle de bain”(ケベック風の「トイレ」)はないけど、”toilettes”(フランス風の「トイレ」)はある=うちでは”Toilettes”と言うのざますという、すごく嫌な感じの返し。
(フランス語上級者の方は、les toilettes ではなくdes toilettesと言うところにさらなる皮肉を感じてください)
いかにもおパリらしい、いやらしいエピソードだと思いませんか(笑)
あ~やだやだ。
ケベックのフランス語へのこだわり8:gare routière
直訳すると「道路の駅」となる“gare routière”は、長距離バスが発着するバスステーションのこと。
フランスでは、英語の”Bus station”を直訳した”Station de bus”が使われます。
ケベックのフランス語へのこだわり9:Magasiner/faire du magasinage
フランス語の”un magasin”(お店)に-erを付けて動詞化した“Magasiner”。
ご想像の通り、「ショッピングをする」という意味です。
フランスでは”faire du shopping”と言いますが、ケベックではMagasinerかFaire du magasinage(magasinerの再名詞化)と言います。
これは、洋服などを買うための「ショッピング」を表し、日常の買い物の際には次に紹介する表現が使われます。
ケベックのフランス語へのこだわり10:épicerie
「des épices(スパイス)を売る場所」が語源のune épicerieは、ケベックでは食料品を売る店の総称。
フランスでは”supermarché”という、英語のsupermarketを直訳した単語が使われますが、ケベックではまず使いません。
フランスで「(日常の)買い物をする」という意味の”faire les courses (aller au supermarché)”も、ケベックでは”faire des épiceries (aller à l’épicerie)”となります。
ケベックのフランス語へのこだわり11:travailleur autonome
現在かなり広がりを見せる、フリーランスという働き方。
フランスでは英語由来の”Freelancer”や”travailler en freelance”が使われますが、ケベックではれっきとしたフランス語の表現である“travailleur autonome”一択。
ちなみに、フランスでは「ビジネス、仕事」の意味で用いられる” le business”という英語由来の単語も、ケベックではフランス語本来の言葉である”des affaires”が用いられます。
ケベックのフランス語へのこだわり12:PFK
PFK。
いったい何のことでしょう。
Poulet frit à la Kentuckeyの略、と言えばもう分かりますね。
そうです。ケンタッキーフライドチキンのことです。
フランスでは英語のKentuckey Fried Chickenを略した“KFC”(カーエフセー)が使われますが、ケベックでは“PFK”(ペーエフケイ)。
何故か”K”の発音は英語風な人が多いのは謎ですが。
すごいのが、PFKは何も人々の間でのみ使われる俗称ではないという点。
フランス語保護運動が盛んなケベックでは、ケンタッキーの看板も”PFK”とフランス語で表記されるのが義務。
“KFC”などの英語表記は全くありません。
言語問題に敏感と言われるフランスですら普通に”KFC”と書いてありますから、これがどれだけエクストリームなことかお分かりりいただけるのではないでしょうか。
おわりに
というわけで、フランスよりもフランスらしい(?)ケベックのフランス語に対するこだわりが垣間見える表現を紹介してきました。
このコーナーを通して、フランスと大きく異なるケベックのフランス語を少しでも多くの人に知ってもらい、フランス一辺倒なフランス語学習に一石を投じられればと密かに画策しています(笑)
だからといって簡単に、「ケベックで昔ながらの綺麗なフランス語を学ぼう!」と思うのはちょっと待っていただきたい。
ケベックのフランス語には、フランスとは異なるアングリシズム(英語化)や独特の発音や表現などがとても多く、フランス人ですら字幕がないと理解できない場合もあるほどです。
綺麗かどうかは置いておき、そもそも二つの国のフランス語がどれほど&どう違うのか、なんとなく理解しておくのがいいのではないでしょうか。
そのうえでケベックフランス語を学ぼうというのなら、どうぞいってらっしゃいませ。
きっとのぶよの友達になれます(笑)
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