こんにちは!のぶよです。
世界を相手に活躍をする日本人や日本を拠点として活躍する外国人の素顔に迫る新企画。
「SAMURAI ログ」のコーナー。好評につき第二弾です!
のぶよとは大学時代からの付き合いで、大学卒業後もフランス語を使って生きている数少ない仲間であるMonsieur Aさんのインタビューの後編です。
インタビュー前編では、彼の知られざるバックグラウンドや、10年以上もフランス語を学習し続ける理由、日本でのサラリーマン時代のお話に焦点を当ててお話をうかがいました↓
今回はインタビューの後編。
Monsieur A さんの現在、つまりフランス語を使って日本の魅力を紹介する通訳ガイドとしての顔について詳しくお話を聞いていきます!
日本でフランス語ガイドとして働くことのメリットとデメリット
ー長年の夢を叶えて、京都を拠点に活躍するフランス語通訳ガイドとして働くMonsieur Aさん。
「通訳ガイドってどんな仕事?」って疑問を感じている人もいるだろうから、仕事内容を少し教えてもらってもいい?
ー「通訳ガイド」というと、一昔前の団体旅行のガイドさんや添乗員さんのように、数十人の大きいグループを旗を持って先導して、目的地から目的地へと移動して…と思われることも多いんだけど、実際はもっとシンプルでカジュアルな仕事だよ。
個人旅行のお客さんを一対一で相手することもあるし、家族旅行にお邪魔させていただいて一緒に街歩きをすることもある。基本的にはそこまで大人数のお客さんを相手することはないんだ。まあ所属する会社や契約にもよると思うけど。
ーMonsieur Aさんは、フランス人に対して京都の観光ガイドを提案する会社から依頼を受けて活動する、いわゆるフリーランスという形で働いているわけだけど、主にどんな内容のガイドをするの?
ー僕が受け持っているのは大きく分けて2種類の観光ガイド。
一つは京都・宇治が誇る名産のお茶の栽培地を見学して、お茶の試飲なんかもしていただけるお茶のツアー。京都からの日帰りアクティビティーとしてかなり人気があって、とくにお茶の季節には連日このガイドをさせてもらうことが多い。この場合はある程度の行程が予め決められているので、一般的にイメージされる「観光ガイド」に近いかもしれない。
もう一つは、お客さんの希望に合わせてパーソナライズした行程にご一緒する完全個人ガイドで、こちらの方が難易度は高いかもしれない。一応事前にお客さんの希望する行き先やしたいことなどのリストをもらって、こちらからおすすめの場所に案内するんだけど、やっぱり実際にお客さんに会ってみないとその人に本当に合った提案はしにくいし、満足してもらえるかどうかはすべて自分の提案力と案内の際の知識にかかっていると考えると、毎回緊張する(笑)
ーすごいな~。臨機応変さが大切ってわけね。通訳ガイドの仕事のいい点って何?
ーそんなのたくさんありすぎる(笑) ありきたりかもしれないけれど、自分が案内した場所で、お客さんが感動して嬉しそうな顔をしているのを見ると、心からやりがいを感じる。同じ場所を案内して同じレストランで食事をしても、お客さんによってそれぞれ捉え方は違うし、反応も様々。毎日ルーティーンワークに埋もれていたサラリーマン時代と比べると、毎日違う人と違う話ができて刺激が受けられるこの仕事に就けたことがとてもうれしい。
あとは、「フランス語を使って仕事ができている」ということを客観的に考えると、それだけで満足感があるかも。自分のフランス語はまだまだ完璧ではないけど、頑張って説明した時にお客さんが「ああなるほど!」って腑に落ちたような反応をしてくれる時なんかはやっぱり感動するよ。
ーいいね。なんだか日本の会社で働く時と違って、リラックスして仕事ができている感じがする。
ー本当にその通り。「仕事」というとなんだか堅苦しい感じがする。フランスから来た友達と遊んでいる感じ(笑)「自分が好きなことを仕事にする」ってやっぱり大切だよ。
ー名言いただきました(笑) ところで、日本で通訳ガイドをつけるお客さんってどんな人なの?フランス人のイメージって、なかなか満足しない、頑固者って感じがするんだけど。
ーそれは本当によく言われるんだけど、僕が担当させていただくフランス人のお客さんはいい人ばかりで。フランス人の訪日旅行者全体のうち約10%が日本でなんらかの現地ガイドをつけるという統計があるんだけど、やっぱりガイド料は安いものではないし、ある程度お金に余裕がある人たちが多いのは事実。そして日本の文化的な側面に興味を持たれている教養高い人が多いから、「現地人の観点から詳しく説明してほしい」と考えている人がほとんど。
したがってこちらもそれなりの知識を持っていなければいけないし、その知識をうまく伝えられるように正しいフランス語を話さなければいけない。自分で自分を磨ける環境に身を置いているという実感は常に持ってる。心の広いお客さんが多くて、自分はかなり恵まれているなと感じるよ。
ーそうだね。お客さんも決して安くはないガイド料金を払っているわけだから、こちらも生半可な対応はできないよね。
逆に、これまでのガイドの仕事で嫌な思いをしたことやデメリットを感じたことはある?
ーそれが、ガイドの仕事に関してはほとんど不満がないんだよね。むしろ仕事できることがうれしい。完全にワーカホリックみたいになってる(笑)
強いて言うなら、プライベートガイドは大変なこともある。予め提案しておいたプランにそって準備を進めたのにも関わらず、当日になって「やっぱりこっちに行きたい」と急にプランを変更されるのは結構きつい。自分が満足に説明できるか自信がないからね。そんな時は、「事前に予習していないのでちゃんと説明できるかわかりませんが、いいですか?」と確認するようにしている。そうでないと後で説明不足で満足していただけない場合も考えられるし。もちろん自分の知識の足りなさが露呈してしまうし、満足に案内できないことはとても悔しい。だからこそガイドの仕事は奥が深いし、一生勉強し続けなければなと思う。
ー本当にストイック!どんな場所でも臨機応変に案内できるほどの知識があるというのが理想かもしれないけど、なかなかそうもいかないよね。斜め上を行く質問なんかもされるかもしれないし。
ーそうそう。あとは「どこへ行きたいですか?」と聞いて「あなたが決めてよ。それがあなたの仕事でしょう。」と言うお客さんへの対応も難しい。出来る限り興味があることや行きたい場所の希望が具体的に分かった方が、満足していただけるようなガイドがしやすいからね。
お茶のスペシャリストとしての活躍
ー日本の伝統文化であるお茶のガイドについてもう少し聞いていきたいんだけど、もともとお茶に関しては詳しかったの?
ーいや全然(笑)この仕事を始めてから、死ぬ気で勉強した。知れば知るほどどんどん興味が出てきて、休みの日に一人で宇治の茶園を訪れてリサーチしたりもしたよ。それもあって、現地で茶葉を栽培している人やお茶を販売しているお店の人と知り合うこともできた。努力したことが全て今につながっているんだと強く感じる。
Le travail de guide est très difficile. Il faut réviser de temps en temps pour ne pas oublier tout ce que j’ai retenu en japonais 🇯🇵 et aussi en français🇫🇷. pic.twitter.com/elfI80zqhR
— MonsieurA 🇫🇷フランス語で生きよう! (@daisuke13_a) 2019年1月29日
ー日本人でありながら、お茶のことってあまり知らない人が多いよね。実はのぶよ、大学の時に京都の茶畑でアルバイトしたことがあってさ。いつも何気なく飲んでいるお茶だけど、こんなに多くの人が手間をかけて作ってくれてるんだなあって感じたことを覚えてる。
ーせっかく素晴らしいお茶文化が根付いている日本という国にいるのに、急須でお茶を入れたり茶葉を調合したりできる若い人は本当に少なくて、みんなコンビニでペットボトルのお茶を手軽に買って飲んでいるよね。個人的にはもったいないなって思う。ワインやコーヒーにも色々な種類や飲み方があるように、お茶にだってとても繊細な文化がある。フランス人相手にお茶の魅力を伝えているけど、彼らはお茶の繊細で、種類によって微妙に異なる風味にとても敏感。さすがワインと美食の国だなあ。なんてね(笑)
ーこれから日本人にももっとお茶の魅力を伝えていきたいと?
ーうん。日本人はもっと自分たちの文化のすばらしさを再認識するべきだよ。僕ももっともっとお茶について学んでいきたいし、スペシャリストとして胸を張れるようになりたい。幸いにも、何かを発信することは得意だから、SNSやブログを通してもっと多くの人にお茶について興味を持ってもらえるように頑張っていくつもり。
通訳ガイドとしての、これから
ーこれからも通訳ガイドとしての活躍を続けていくことだと思うけど、どんな通訳ガイドを目指しているの?
ー今考えているのは、「テーマガイド」という、いくつかのテーマに精通したガイドになること。僕の場合はお茶のガイドがそれにあたるわけだけど、他にも日本のウイスキーだったり京都のお寺だったり、自分が学びたいと思う分野についてもっと勉強して、ガイドとして働ける幅を広げていきたいと思う。
ーそれはいいアイディアだね。必然的にお客さんはその分野に興味を持った人が集まるだろうから、日本人であるという利点を活かして詳しく説明できれば満足度はかなり高くなりそう。
ー自分の中の引き出しを広げることは自分自身の勉強にもなるし、それを発信することで他の人にその魅力を伝えることができる。一石二鳥とはまさにこのことなんじゃないかな。
通訳ガイドとして働きたい人へ
ー訪日旅行者数が右肩上がりの日本。通訳ガイドの需要も増えてきているし、通訳ガイドとして働きたいと考えている人も増えてきているんじゃないかな。そんな人たちに、「どうすれば通訳ガイドとして働くことができるのか」、その秘密を教えてあげてほしい。
ーまず、語学は必要不可欠だよね。ある程度話せるようになるまではしっかりと勉強しなければならない。僕が実践したのは、自分がガイドとしてお客さんに説明したい内容をフランス語で書いてみること。話せるようになったと思っていても、案外知らない用語があったり上手に伝えられる表現が出てこないことに気づかされると思う。
語学と同様に大切なのが、自分の知識を増やすこと。いざガイドとして働き始めると、本当に様々な質問を受けることになるから。僕たち日本人が普通だと感じていることは、決して外国人にとっては普通じゃないということを知らなければならない。ガイドをされる人の目線に立って、いろいろなことに疑問を持ってその答えを知識として持つことはとても重要だと思う。
もう一つは「外国語で発信すること」。自分の得意分野や興味がある分野を見つけたら、外国語を使ってその魅力を発信してみることはとても大切。インターネットやSNSの普及によって、世界中の人に自分のことをアピールできるチャンスはゴロゴロ転がっているから、それを逃す手はないよ。
ーなるほど。ところでMonsieur Aさんが依頼を受ける通訳ガイド会社とのコネクションはどうやって築いたの?
ー福岡でサラリーマンをしていた時に、フランス人コミュニティー主催の飲み会なんかに積極的に参加していて。そこで知り合った友達が紹介してくれたのがきっかけ。どこでどんなチャンスに巡り合えるかわからないよね。
ーそうだね。通訳ガイドになるために、とりあえず通訳案内士試験への合格を目指す人もいるけど、それに関してはどう思う?
ー資格は取れるなら取っておくべきだよ。ガイドとしての単価も上がるし、なにより自分のスキルを客観的に証明してくれるものが資格だからね。アピールしやすくなると思う。
でも、とにかく通訳ガイドとして働いてみるというのも一つの手だと思う。ガイドの仕事って経験が全てだから。いくら知識を増やして完璧に勉強したところで、実際にやってみないと絶対に身につかない部分はあるよ。人を相手にする仕事だから、毎日が違う環境だし、満足していただくためには自分の話し方や態度などをセルフプロデュースすることも大切かな。
これからのMonsieur. A
ーサラリーマンという安定した地位を捨てて、フリーランスの通訳ガイドの世界へと飛び込んだMonsieur Aさん。これからの抱負をお願いします。
ー2020年の東京オリンピックが一つの区切りとなると思ってる。世界中から日本が注目される大チャンスだし、それまでに自分ができることは全てしていきたい。フランス語をもっと磨くことはもちろん、お茶などのテーマガイドとしてもっと上を目指すための勉強も続けていくよ。その中でチャンスを逃さずに、飛躍できたらいいなと思ってる。
SNSやブログを通して、自分の仕事や日本の文化について発信していくことにももっと力を入れていきたいな。今はフリーランスとしてガイドの依頼を受けて働いているけど、最終的には「自分で観光プランを提供して、お客さんから直接依頼を受けて、実際にガイドをする」という一連の流れを全て一人で管理できるようになりたいと思う。その一環として、プログラミングの勉強も始めてみたいなって考えてるところ。Monsieur Aのプラットフォームを作って、そこから情報発信や仕事の管理ができるようになることが理想かな。
ーありがとう。最後に、Monsieur Aを応援してくれているたくさんの人たちに向けて、ひとことください!
ーいつもMonsieur Aをフォロー、応援してくれて本当にありがとうございます。みなさんのおかげで、自分自身のモチベーションを保つことができていますし、もっといろいろなことに挑戦していきたいなという気持ちにさせられます。これからも、Monsieur Aにご注文していただければ。後悔はさせませんので(笑)応援よろしくお願いします!
おわりに
のぶよとは10年来の友達でありながらも、フランス語やガイドの仕事に対しての熱い想いに、改めて尊敬の念を抱かせてくれたくれたMonsieur Aさん。
何事もあきらめずに継続していくことの大切さを再認識させてくれました。
長々とインタビューに応えてくれて、感謝感謝です。
これからの活躍も期待して応援させていただきます!
Monsieur. Aさんのインフォメーション
大阪府出身。大学2年時に初めて訪れたフランスの文化、美しさに衝撃を受け、1年間のフランス留学へ。大学卒業後は貿易会社で6年間の会社員生活の後、念願のフランス語通訳ガイドへと転身。SNSやブログを通して、フランス語を使った働き方やフランス語学習法などの情報を発信中。
ブログ:Monsieur A ~KYOTO~
twitter:@daisuke13_a
Instagram:monseiur_a
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