ポルトガル風・狂気のロマンス?ペドロとイネスの悲恋物語の舞台をたどる旅のすすめ

ポルトガル風・狂気のロマンス?ペドロとイネスの悲恋物語の舞台をたどる旅のすすめ

こんにちは!のぶよです。

ポルトガルに伝わる、実際にあったロマンティックなお話「ペドロ王子とイネスの悲恋物語」を知っていますか?

悲しくも美しい、狂気をはらんだロマンティックな愛の実話の舞台を訪ねて、コインブラアルコバサというポルトガル中部の二つの町を旅行しました。

歴史と文化、ロマンスを感じられるこの旅程。
ポルトガル通のあなたにはかなりおすすめです!

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「ペドロ王子とイネスの悲恋物語」あらすじ

時は1339年。当時のポルトガル王国の王子であったペドロは、父であり国王であったアルフォンソ4世によって、隣国のカスティーリャ王国 (現在のスペイン) の王女・コンスタンサと結婚させられます。

ところが、コンスタンサがポルトガルに嫁いだ際、使いとして同行してきたイネス・デ・カステロと恋に落ちてしまったペドロ王子。コンスタンサという正式な妻がいるにもかかわらず、コンスタンサを妾(めかけ)として寵愛するようになりました。
彼らが逢瀬を重ねたのが、コインブラにある涙の館 (Quinta das Lágrimas) の庭園です。

1345年にコンスタンサが病に臥し、亡くなった後は、イネスはペドロの「後妻」のようになります。
彼らはコインブラのサンタ・クララ修道院で3人の子供とともに暮らし始めます。

しかし、隣国カスティーリャ王国の強大な圧力を恐れた、ペドロの父である国王・アルフォンソ4世。
1355年の1月、国王が送った家臣たちによってイネスはコインブラの涙の館 (Quinta das Lágrimas) の敷地内で喉をかき切られて殺害されてしまいます。

悲しみに暮れるペドロ王子。愛した人を死に至らしめた国王に対して反旗を翻します。
幸か不幸か、イネス暗殺から2年後の1357年に、父のアルフォンソ4世がなくなり、ペドロは正式にペドロ1世としてポルトガル国王の座に就きます。

消えることのない憎しみの炎。ペドロはイネスの殺害に加担した者を把握するため、古くからの家臣たちにイネスの亡骸にキスをさせるという踏み絵のような行為を課し、イネスの殺害に関わった3人の家臣を「生きたまま心臓をえぐり取る」という残酷な方法で殺害しました。


↑コインブラ大学内のジョアニア図書館での展示。イネスの亡骸の手の甲にキスをさせて、忠誠を確かめるペドロ1世
その後、イネスとは生前に正式な婚約を交わしていたと宣言し、亡き彼女をポルトガル王国の王妃であると認めさせます。その際に彼女の遺体を掘り起こし、戴冠式まで行ったというのだから狂気をはらんでいます。

1360年、サンタ・クララ修道院に安置されていたイネスの遺体をアルコバサの修道院に移し、精巧に装飾された二つの棺のうちの一つに納めさせました。

1367年、ペドロ1世も亡くなり、彼の遺体は遺言の通り、アルコバサ修道院の残されたもう一つの棺に納められました。

それから700年近い時が経った現在でも、彼らの棺はアルコバサ修道院に安置されています。

お互いに足を向ける形で向かい合わせて置かれた二つの美しい棺。最後の審判が下り死者が生き返る時に、起き上がって一番初めに目にするのがお互いの姿であるようにとのペドロの想いは、色褪せることなくこれからも永遠の時を刻み続けていきます。

ペドロ王子とイネスのロマンスの舞台・コインブラを訪ねる

この不倫から始まる悲劇のロマンスは、ポルトガル人ならみんな知っている話です。

舞台となるポルトガル第三の都市・コインブラには、実際にペドロとイネスが日々を過ごしたサンタ・クララ修道院や逢瀬を重ねた涙の館など、物語にまつわる場所が点在しています。

今回は、彼らが愛を育んだ場所であり、イネスが殺害された悲劇の地でもある「涙の館 (Quinta das Lágrimas)」の庭園をご紹介します。

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ペドロとイネスが語らった「涙の館」


現在はホテルになっている、涙の館。

すぐ近くにあるサンタ・クララ修道院で暮らしていた二人ですが、周りの人の目を逃れて二人で密会できる場所として選んだのがこの館でした。

広大な庭園にはペドロとイネスにまつわるスポットがたくさんあります。
緑が溢れ、いたるところに水が流れる静かな庭園をゆっくりと散策していきましょう。

ペドロとイネスが散策した庭園


涙の館のすぐ近くには、「中世式庭園」が残っています。

ここはペドロとイネスが二人の愛を語り合いながら散策した場所。
650年前のロマンスに思いを馳せながら散策しましょう。

ペドロとイネスの愛の逢瀬の場所「恋人たちの泉」


現在は廃墟となってしまっているものの、ペドロとイネスが逢瀬を重ねた「恋人たちの泉 (Fonte do Amores)」がこちら。
1326年に当時の王妃であったサンタ・イザベルによって、この泉からサンタ・クララ修道院まで水を引く工事が行われました。

現在、泉自体は見ることができませんが、流れ出る清らかな水を見ることはできます。

建物があったと思われる場所には、ペドロとイネスの物語に感動した来訪者や恋人たちが赤いリボンを飾っていきます。

いわば、ポルトガル版恋人の聖地というやつでしょうか。
そういえば、外国では南京錠などが定番ですが、ポルトガルではあまり見かけません。

いずれにしても、この悲恋物語の地にリボンを飾った恋人たちは幸せになれるのだろうか。(笑)

イネス・デ・カステロが殺害された「涙の泉」

こちらが、イネス・デ・カステロが、アフォンソ4世に命じられた家臣によって実際に殺害されるとされる場所、「涙の泉 (Fonte das Lágrimas)」。

清らかな水がこんこんと湧きだしています。

泉の底には、一部分だけ赤く染まった石があります。

言い伝えによると、喉をかき切られたイネスの血で赤く染まったもので、650年経った現在でもその色は色褪せることなく残っているとのこと。

これに関してのぶよは、後付けで物語化されたものだと考えます。
しかしポルトガル人の間では結構これが本物の血だと信じている人が多いのも事実。


泉の横には、ポルトガルが誇る詩人・カモインス (Luís de Camões) がペドロとイネスの悲恋物語の舞台であるこの地を訪れた際に残した詩が刻まれた石碑があります。

モンテゴの妖精はイネスの暗い死に
長きにわたって涙を流し続ける
清らかな泉の永遠の記憶に
流れた涙は形を変える
この場所で死んだイネスの困難な愛に
名が与えられる
見よ、清らかな泉が花に水をやり
愛という名の水の流れとなった涙を

※のぶよの意訳です

つまり、この場所で亡くなったイネスの涙が水となって湧きだし、涙の泉となったということ。
かなりの量の水が湧き出していましたよ。イネス、大号泣です。

 

この伝説はポルトガルではかなり有名で、この涙の泉はポルトガル人にとって「ペドロとイネスの物語」の聖地のようなものなのです。

観光化されすぎておらず、木々に囲まれた小さな泉から流れ出る水の音につつまれた場所に佇んでいると、この場所で本当にあった悲しき愛の物語のロマンティックさを感じずにはいられません。


↑涙の泉から流れ出た水は、貯水池に溜められている。650年分の涙がここに。

インフォメーション

涙の館と庭園

入場料:€2.5
営業時間:夏期 10:00~19:00/冬季 10:00~17:00 (月曜は休園)
ポイント:入口がかなりわかりにくい。ホテルの敷地内にあるゴルフ場の横にある。

 

死後も続く二人の永遠の愛の物語。アルコバサの修道院を訪ねる

こうしてペドロとイネスの愛の聖地であるコインブラを訪れた後は、彼らの死後の世界が続くもう一つの舞台、ポルトガル中部にあるアルコバサという町を訪れてみるのはいかがでしょうか。

世界遺産であるアルコバサ修道院の内部には、安らかに眠る彼らの遺体が安置された美しい棺を見ることができます。


青空に映える白い壁と荘厳なファサードが印象的なアルコバサ修道院。

内部は修道院らしくかなり質素な造りで、豪華な装飾やステンドグラスなども見受けられません。

いろいろと見どころがある世界遺産のアルコバサ修道院ですが、一番のハイライトはペドロとイネスの棺が置かれたTranseptoという空間です。

悲劇のヒロイン、イネス・デ・カステロの遺体が納められた棺。
質素な修道院の中でペドロとイネスの棺だけが精巧に装飾されているのが印象的です。

棺に描かれているのは、キリストの誕生から死、復活までを描いたもので、当時の人の信心深さがわかると同時に、ペドロが信じ、願った復活の日への想いを感じ取ることができます。

ペドロ王子の棺がこちら。

奥に見えるのはイネスの棺で、お互いに足を向けて置かれています。

いつか訪れるかもしれない復活の日に、初めて目にするのが愛する人であることを願いながら、二つの棺に眠る愛する二人の想いは永遠の時を刻み続けています。

インフォメーション

アルコバサ修道院

入場料:€6
営業時間:夏期 9:00~19:00/冬季 9:00~18:00
アルコバサへのアクセス:リスボン、コインブラから共にバスで1時間半。いずれも€11ほど。
ポイント:アルコバサを訪れるなら、周辺のトマールの修道院・バターリャ修道院を含めて中部の三大修道院 (いずれも世界遺産) を巡るのがおすすめ。3か所の共通入場チケットも€15で販売されている。

 

おわりに

650年前にあった実話の舞台を巡る旅、いかがでしたか。
不倫から始まり、イネスの殺害という悲劇によってより強まったペドロ王子の狂気じみた純愛はポルトガル人の心を捉えて離しません。

彼らが幸せな時を過ごし、悲劇の舞台ともなったコインブラの涙の館。

死してなおも愛する人に再び会いたいと願うペドロの永遠の愛を感じるアルコバサの修道院。

観光で通り過ぎるだけではなく、背景にある物語を知ることで、あなたの旅にテーマが生まれ、より深いものとなるはず!

映画化された、「ペドロとイネスの悲恋物語」

この「ペドロとイネスの悲恋物語」をベースにしたポルトガル映画、”Pedro e Inês”は傑作です。

650年前の物語の世界を忠実に再現した「過去」、それが「現在」にリンクして、「未来」へとつながっていくという稀有な設定の映画です。
António Ferreira監督により、2018年10月に公開されたばかりの、ポルトガルの大ヒット映画。
日本語の翻訳版が出ることを願うばかりです。

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